ラッサ熱
病原体
ラッサウイルス(アレナウイルス科)です。
流行地
1969年ナイジェリア北東部ラッサ村で出血熱疾患患者が発生し、担当医療従事者も死亡したのが初めての報告です。ギニア、シエラレオネ、コートジボアールからガーナ、ベナン、ナイジェリアにいたる西アフリカ一帯および中央アフリカ共和国などで局地的流行がみられ、年間20~30万人程度の感染者があると推計されています。ラッサ熱の非流行地への輸入感染例が欧米諸国では数十例みられており、最近では2006年、シエラレオネからドイツ、2010年にはリベリアから米国への輸入例が報告されました。わが国でも1987年シエラレオネからの帰国者がラッサ熱を発症しましたがが、幸い回復しました。
感染経路
流行地域に生息するマストミスというネズミがウイルスを保有しており、尿や唾液に多量のウイルスが含まれています。ヒトへの感染はマストミスとの接触や咬まれることにより成立します。患者の血液、体液、排泄物、唾液なども感染源になり、これらとの直接接触および医療機関や家族内での濃厚接触が感染経路で、空気感染はありません。
潜伏期
5~21日です。
症状
発症は突発的ですが、病状は徐々に進行します。発熱、筋肉痛、関節痛にはじまり、頭痛、咳、咽頭痛が見られます。下痢、おう吐、腹痛もみられ、浮腫、腹水、消化管出血によるショックもみられます。妊婦では流早産や子宮内胎児死亡もあります。
治療法
発症6日以内の抗ウイルス剤(リバビリン)投与が有効といわれています。
予防等
現地では、ウイルス保有動物であるマストミスとの密な接触は避けましょう。患者の血液、体液、分泌物にウイルスが含まれていますので、医師や看護師など医療従事者は、ガウン、マスク、手袋、ゴーグル、長靴着用などによる接触感染防止策を講ずる必要があります。ワクチンはありません。