リーシュマニア症

流行地

リーシュマニア症は、サシチョウバエにより媒介される寄生虫疾患です。皮膚リーシュマニア症、内臓リーシュマニア症、粘膜皮膚リーシュマニア症の3つの病型があります。リーシュマニア症は、熱帯雨林~乾燥地帯の田舎で多く、都市部で少ない傾向にあります。しかしイラクのバクダットやアフガニスタンのカブール、ブラジルの東北部では都市部周辺や都市部でもみられています。
サシチョウバエが活動する夕暮れ時から夜明けまでの時間帯は感染のリスクが高く、日中の暑い時間帯には刺されることは少ないです。サシチョウバエは蚊の約1/3の大きさと小さく羽音もしないので見つけることは困難です。刺されると痛みを伴うことがあります。リーシュマニア症のリスクが高い旅行者は、冒険旅行者、野鳥観察家、途上国でのボランティア隊員、建築作業員、夜間にアウトドアをする人などです。

皮膚リーシュマニア症の90%以上を以下の8つの国が占めています。
アフガニスタン、アルジェリア、イラン、イラク、サウジアラビア、シリア、ブラジル、ペルー

内臓リーシュマニア症の90%以上を以下の5つの国が占めています。
インド、バングラデシュ、ネパール、スーダン、ブラジル

感染経路

リーシュマニア原虫に感染したメスのサシチョウバエに吸血されることにより感染します。

潜伏期

皮膚リーシュマニア症は、数週間から数ヶ月、粘膜皮膚リーシュマニア症は、数ヶ月から数年、内臓リーシュマニア症は、数週間から数ヶ月で突然発症することがあります。時には、数年から数十年経ってから発症することもあります。

症状

皮膚リーシュマニア症:典型的には刺されてから数週間もしくは数ヶ月のうちに発症します。刺された皮膚に小さな丘疹ができ、徐々に傷が大きくなっていき潰瘍になります。通常、傷に痛みはありませんが、細菌感染を起こすと痛みを生じます。傷は治療しなくてもやがて治りますが、数ヶ月もしくは数年続き、傷跡が残ります。

粘膜皮膚リーシュマニア症:皮膚から鼻や口の粘膜表面に傷が拡がるものをいい、南アメリカや中央アメリカでみられます。最初に鼻の症状(例えば鼻閉まりや鼻血)があらわれ、進行すると鼻や口の潰瘍が自壊します。稀な病型ですが、治療を必要とします。

内臓リーシュマニア症:潜伏期間は数週間から数ヶ月で突然発症することがありますが、時には数年~数十年経ってから発症することもあります。典型な症状は発熱、体重減少、肝脾腫(特に脾腫)、汎血球減少(貧血、白血球減少症、血小板減少症)です。重症例では治療しないと死に至ることがあります。

治療法

専門家による治療が必要です。現在アンチモン剤(薬剤名:ペントスタム、グルカンタイム)やアンフォテリシンB、ペンタミジンが治療薬として用いられています。

予防等

ワクチンや予防薬はありません。予防はサシチョウバエとの接触を減らすことです。サシチョウバエが最も活動する時間帯である夕方から夜明けまでの時間帯に屋外で活動することは避けましょう。外出時は肌が露出しないような服装をし、DEET配合の防虫剤を使いましょう。サシチョウバエはとても小さく一般的な蚊帳は通り抜けてしまいますので、目の細かい蚊帳に殺虫剤をかけて使いましょう。窓の網戸や室内のカーテン、ベットシーツなどにも殺虫剤を使用すると効果的です。また、サンショウバエは自ら飛べず風に乗って移動しますので、2階以上の所では口刺され難いです。