海外感染症情報 (NO.47)
平成22年5月19日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(9)

514日現在、世界中214以上の国や地域から18,036例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。

現在、新型インフルエンザが最も流行している地域はカリブ海地域・中米で、アフリカ西部・南アジア・東南アジアはある程度の流行が見られています。北・南半球温帯地域では、全体的な新型インフルエンザの流行は散発的なままです。季節性B型インフルエンザはアジア・アフリカ・ヨーロッパに渡って低レベルですが検出され続けています。

アメリカの熱帯地域では、新型インフルエンザはカリブ海地域で最も流行が見られており、中米でもある程度の流行があります。キューバでは、新型インフルエンザの流行は20102月下旬に始まった大流行期以降減少を続けており、20104月後半にピークを迎えていたと思われます。地理的には新型インフルエンザの流行はジャマイカ(20102月〜3月)・ドミニカ(4月下旬以降)で報告されていましたが、他の呼吸器疾患ウイルスがその地域でともに流行しており、この期間における全体的な呼吸器疾患の活動性は低〜中等度に留まっていると報告されていました。カリブ地域で選択した国(ドミニカとジャマイカ)における重症急性呼吸器感染症の割合は20104月中旬以降増加していましたが、このことが新型インフルエンザの流行によるものか他の呼吸器疾患ウイルスによるものかは分かりません。中米と南米の熱帯地域(ニカラグア・ホンジュラス・グアテマラ・コロンビア・ボリビア・ペルー)における20104月後半以降の局所的な流行は、その地域において低いレベルですが新型インフルエンザの流行が持続していることを示唆しています。さらに、この地域のいくつかの国々からはインフルエンザと他の呼吸器疾患ウイルス(RSウイルスやアデノウイルス)の共流行が続いているということがわかっています。

アジアでは、現在最も新型インフルエンザが流行している地域は南アジア・東南アジア、とくにバングラデシュ・マレーシア・シンガポールです。バングラデシュでは、新型インフルエンザと季節性B型インフルエンザの共流行による呼吸器疾患の一貫した増加傾向が20104月中旬以降報告されていますが、全体的な呼吸器疾患の活動性は低〜中等度に留まっています。マレーシアでは、20104月初旬に始まった新型インフルエンザの流行は、中旬以降、着実に増加してきているとのことです。シンガポールでは、20104月初旬以降、全体的な急性呼吸器感染症の流行が基準以上に増加を続けており、最新報告では呼吸器検体の38%が新型インフルエンザ陽性でした。タイでは、20101月から4月初旬まで続いた新型インフルエンザの流行は、最近かなり治まってきたようです。インドでは、西部・南部のいくつかの州で新型インフルエンザが低レベルで検出され続けていますが、全体的な呼吸器疾患数は少ないままです。インドネシアでは20102月初旬に始まった季節性H3N2インフルエンザの低レベルでの流行は、現在治まってきているようです。東アジアでは、新型インフルエンザは散発的にしか検出されていませんが、持続しています。しかし、とくに中国・香港・台湾で季節性B型インフルエンザの流行が減少傾向にあると報告されました。

サハラ以南アフリカでは、アフリカ中部と少数の東部地域において季節性B型インフルエンザが低レベルで流行を続けている一方で、アフリカ西部地域においては新型インフルエンザの流行は減少を続けているようです。ガーナでは、新型インフルエンザの検出は20104月初旬のピーク以降は減少を続けており、最新報告では呼吸器検体の10%が新型インフルエンザ陽性でした。20102月下旬に新型インフルエンザ流行のピークが見られたセネガルからはインフルエンザの流行は報告されませんでした。中央アフリカ・カメルーンでは新型インフルエンザと季節性B型インフルエンザがともに流行しているとの報告が続いていました。最新報告週では季節性B型インフルエンザが主流であり、全呼吸器検体の約31%が季節性B型インフルエンザ陽性で4%が新型インフルエンザ陽性でした。季節性H3N2B型インフルエンザの散発的な検出は過去1ヶ月にわたってアフリカ東部から西部にかけて報告され続けています。

南北アメリカの温帯地域では、チリを除いて散発的なインフルエンザの検出が報告されています。チリでは、新型インフルエンザと他の呼吸器疾患ウイルスの共流行による局所的なインフルエンザ様疾患の流行が報告され続けていました。

ヨーロッパでは、全体的な呼吸器疾患の流行が少数に留まっているように、新型インフルエンザの散発的な検出は続いています。B型インフルエンザの低レベルでの流行は北欧・東欧で続いており、とくにロシアとイタリアで目立ちます。

(平成22年5月14日 WHO情報)