海外感染症情報 (NO.49) |
平成22年5月24日 関西空港検疫所 |
パンデミック・インフルエンザ(H1N1型)の流行状況について(10) |
5月16日現在、世界中214以上の国や地域から18,097例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。 最新状況は前回更新時と大きな変化はありません。現在、新型インフルエンザが最も流行している地域はカリブ海地域と東南アジアです。北・南半球温帯地域では、新型インフルエンザの流行は少なく散発的です。アフリカ中部では、季節性B型インフルエンザの流行が増えてきており、その地域の全インフルエンザ分離検体中の85%を占めています。B型インフルエンザはアジアやヨーロッパで低レベルではありますが検出され続けており、中米でも報告されるようになってきました。 アメリカの熱帯地域では、カリブ海地域で新型インフルエンザの流行が最も続いています。キューバでは、2010年2月下旬に始まった新型インフルエンザ流行の第2期は、4月下旬にはピークを迎え以降減少してきています。この流行第2期は、重症例や致死例との関連はありましたが、2009年9月下旬〜11月下旬に見られていた流行第1期よりも強烈なものではないようです。これに対しドミニカ共和国では、呼吸器疾患の低〜中等度の流行は他の呼吸器疾患ウイルスの流行と主に関連しており、インフルエンザは季節性の散発的な検出のみが報告されています。中米・南米の熱帯地域にわたって新型インフルエンザは低レベルですが流行しています(例えばメキシコの2009年12月以降、コロンビア・ブラジルの2010年初旬以降、グアテマラの2010年4月初旬以降)。ニカラグアとホンジュラスもまた地理的に見て局所的なインフルエンザの流行を最近報告していますが、季節性インフルエンザ・新型インフルエンザ・他の呼吸器疾患ウイルスの相対的な検出の割合はわかっていません。これに対しパナマでは、過去3ヶ月間にわたる低レベルの呼吸器疾患の流行は、他の呼吸器疾患ウイルスの流行と関連付けられています。ボリビアでは2010年2月下旬〜5月上旬に季節性B型インフルエンザの流行が低レベルですが持続していることに注意が必要です。この地域のいくつかの国々からはインフルエンザと他の呼吸器疾患ウイルス(RSウイルス・アデノウイルスを含む)の共流行が続いているということがわかっています。 アジアでは、新型インフルエンザが最も流行している地域は南アジア・東南アジア、とくにバングラデシュ・マレーシア・シンガポールです。マレーシアでは、2010年4月上旬以降新型インフルエンザの流行第二期が起こっていますが、最近になって全体的な活動性は落ち着いてきており、2009年7月〜9月上旬まで続いた流行初期の間に見られた流行活動性を超えるものではないとのことです。シンガポールでは、2010年4月中旬以降、急性呼吸器感染症の流行レベルは上昇傾向のままです。最新報告週においては、急性呼吸器感染症の流行レベルが閾値を超えており、インフルンザ様疾患で新型インフルエンザ陽性で合った患者の割合は39%でした。バングラデシュでは、新型インフルエンザと季節性B型インフルエンザの共流行が2010年4月中旬以降増加してきていますが、今では安定してきているようです。タイと西・南インドでは新型インフルエンザの流行が低レベルですが持続しています。カンボジアとフィリピンでは新型インフルエンザの散発的な検出報告が続いています。東アジアでは、新型インフルエンザは散発的にしか検出されていません。この地域においては季節性B型インフルエンザが主に流行していますが、中国・韓国では流行は減少傾向にあるようです。 北・南半球温帯地域では、全体的な新型インフルエンザの流行は少なく散発的なままです。オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザ様疾患のわずかな増加が報告されていましたが、オーストラリアにおいては主に他の呼吸器疾患ウイルスの流行に起因するものでした。南アメリカ温帯地域ではチリを除いてインフルエンザの散発的な検出のみ報告されています。チリでは、新型インフルエンザと他の呼吸器疾患ウイルスの共流行によるインフルエンザ様疾患の増加が局所的に(ロスラゴス地域)報告され続けています。ヨーロッパでは、新型インフルエンザと季節性B型インフルエンザはかなり少なく散発的な検出となっています。季節性B型インフルエンザは東欧・北欧でいまだ流行がみられます。グルジアでは、主に子供(5歳以下)・学童(5〜14歳)におけるインフルエンザ様症状による呼吸器疾患受診数の増加が報告されましたが、このことが新型インフルエンザによるものかどうかは分かっていません。
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(平成22年5月21日 WHO情報) |