海外感染症情報 (NO.51)
平成22年5月31日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(11)


523日現在、世界中214以上の国や地域から18,114例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。
 現在、新型インフルエンザが最も流行している地域は、カリブ海地域と東南アジアで、低レベルの流行が起こっています。チリでの局所的な流行を除けば、南半球温帯地域での新型インフルエンザの流行はわずかとなっています。南アメリカにおいてRSウイルスが広く流行しており、呼吸器疾患が増加しているということに注意が必要です。しかしこの地域からのデータを解釈することはやや困難です。RSウイルスは主に5歳未満の子供が罹患します。季節性A型インフルエンザは全地域において少なく散発的ですが検出が続いています。B型インフルエンザはアジアでは減少していますが、南アメリカにおいては少数の地域で増加が報告されています。しかしこれらの地域では、最近増加しているにすぎません。
 カリブ海地域と中米では、キューバとコスタリカで新型インフルエンザの流行が続いています(後者は少数)。キューバでは、20102月下旬に始まった最近の新型インフルエンザの流行は、4月中旬に停滞期に達して以降は変化がないままです。先月には季節性B型インフルエンザが散発的に検出され、また他の呼吸器疾患ウイルスとの共流行が起こっていました。コスタリカでは、2010年初頭以降、新型インフルエンザと他の呼吸器疾患ウイルスとが低レベルで共流行しています。その他のいくつかの国々では、季節性B型インフルエンザの散発的な検出と、低レベルの他の呼吸器疾患ウイルスの共流行が報告されています。
 南アメリカの熱帯地域では、新型インフルエンザと季節性インフルエンザの流行が続いていますが、流行は散発的で低いレベルです。ペルーでは、(5歳未満の子供での)最近の局地的な呼吸器疾患の増加は、主にRSウイルスの流行と関連しています。コロンビアとブラジルでは、新型インフルエンザと季節性H3N2型インフルエンザが、低レベルですが先月ずっと検出されていました。ボリビアでは、最近の季節性B型インフルエンザの流行は終息したようです。
 アジアでは、南アジア・東南アジアの限られた地域(とくにシンガポール・マレーシア・バングラデシュ)を除いて、全体的な新型インフルエンザの流行レベルは低く散発的なままです。シンガポールでは、急性呼吸器感染症は20104月以降増加してきており、最新報告週では流行閾値に近い状態です。5月中旬には約39%のインフルエンザ様疾患患者の検体が新型インフルエンザ陽性でした。マレーシアでは、4月中旬の流行のピーク以降も新型インフルエンザの流行は続いているとのことで、少数の死亡例も報告されました。バングラデシュでは、4月中旬以降新型インフルエンザと季節性B型インフルエンザが共に主要な流行株となっていましたが、今回の報告週における呼吸器疾患の活動性は低いと報告されました。西インドでは、低いレベルで新型インフルエンザの流行が続いています。一方で東アジアにおいては季節性B型インフルエンザが少なく減少傾向にありますが報告され続けています。
 サハラ以南アフリカでは、アフリカ西部での新型インフルエンザの流行は今や大きく減少しているとのことです。ガーナで新型インフルエンザが低レベルで流行を続けていることに加えて、先月カメルーン・アンゴラ・ルワンダにおいても新型インフルエンザの散発的な検出が報告されました。カメルーンでは、3月中旬以降季節性B型インフルエンザの流行が続いています。
 北・南半球温帯地域では、全体的な新型インフルエンザの流行は少なく散発的なままです。南半球では、チリのいくつかの地域(とくにロスラゴス)でインフルエンザ様疾患の増加が報告され続けていますが、この呼吸器疾患の増加は主にRSウイルスが関連し、新型インフルエンザウイルスはほんの少ししか関連していません。近接するアルゼンチン、パラグアイ・ウルグアイでは、先月の呼吸器疾患の流行は全てインフルエンザよりも他のウイルスによるものでした。同様に、アフリカ南部では最近インフルエンザの検出はありません。ニュージーランドとオーストラリアでは、全体的なインフルエンザ様疾患は少ないままですが、最近オーストラリアにおいて季節性H3N2型インフルエンザと新型インフルエンザの散発的な検出が報告されました。

(平成22年5月28日 WHO情報)