海外感染症情報 (NO.54)
平成22年6月7日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(12)

 530日現在、世界中214以上の国や地域から18,138例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。
 カリブ海地域と東南アジアでは、新型インフルエンザの流行はありますが減少傾向が続いています。南半球温帯地域の国々では、まだ冬季のインフルエンザシーズンが始まったという証拠はありませんが、チリでは局所的な新型インフルエンザの流行は見られています。その他の地域は、全体的な新型インフルエンザの流行レベルは低いままです。季節性B型インフルエンザウイルスは現在、世界的に主要なウイルス株となっていますが、流行レベルは低い状態です。5月後半においてアフリカ東部のいくつかの国々で、低いですが有意なレベルで季節性H3N2型インフルエンザウイルスの検出が見られたということに注意が必要です。
 アメリカ大陸の熱帯地域で、新型インフルエンザが最も流行しているのはカリブ海地域です。キューバでは、新型インフルエンザの流行は、4月中旬に停滞期になってからは減少傾向に入りました。コスタリカとコロンビア両国では、2010年初頭以降新型インフルエンザの流行が低レベルですが続いています。5月には、この地域のいくつかの国々から新型インフルエンザと他の季節性インフルエンザウイルス(とくにB型インフルエンザウイルス)の散発的な検出が報告されています。この地域での他の呼吸器疾患ウイルス(例えばRSウイルス)の流行状況は、国ごとに異なっています。
 アジアで現在新型インフルエンザが最も流行している地域は、南アジアと東南アジアで、特にシンガポールとマレーシア、そして流行の程度は少し低いですがバングラデシュです。シンガポールでは、先週(5月の第5週)急性呼吸器感染症の流行値は閾値以下となり、呼吸器検体のうち新型インフルエンザ陽性の割合は39%から29%に減少しました。マレーシアとバングラデシュでは、過去36週間において週毎の新規報告件数はほとんど変化がありませんが、このことは、先月この地域において新型インフルエンザが低レベルで流行し続けていたということを示しています。西インド、南インドおよびタイの一部でもごく低いレベルですが新型インフルエンザが流行し続けています。先月、この地域の多くの国々で新型インフルエンザウイルス散発的な検出が報告されています。東アジアでは、全体的なインフルエンザの流行レベルは低いままですが、季節性B型インフルエンザウイルスが低レベルで流行し続け、減少傾向にあります。
 サハラ以南アフリカでは、アフリカ西部で新型インフルエンザの流行が続いていますが減少傾向にあります。とくにガーナでの流行は目立ち、最新報告週において全呼吸器検体の15%が新型インフルエンザウイルス陽性でした。アフリカ中部では、季節性B型インフルエンザウイルスの散発的な検出報告が続いています。ケニアとタンザニアでは、最新報告週において季節性H3N2インフルエンザウイルスが少ないですが有意な数(ケニアでは57呼吸器検体中6例、タンザニアでは25呼吸器検体中13例)で検出されたということに注意が必要です。
全体的に、北・南半球の温帯地域では、先月の新型インフルエンザウイルスの検出は散発的なもののみです。南半球の温帯地域では、チリのいくつかの地域からのみ少数の新型インフルエンザの報告がありますが、全体的な流行は現在のところ限局的です。他の呼吸器ウイルス、とくにRSウイルスは、チリ、パラグアイ、アルゼンチンで流行が確認されています。南アフリカでは、新型インフルエンザウイルスの検出は最近ありません。ニュージーランドとオーストラリアでは、全体的なインフルエンザ様疾患の数は少ないままです、最近オーストラリアで季節性と新型インフルエンザウイルスの散発的な検出が報告されたのみです。

(平成22年6月4日 WHO情報)