海外感染症情報 (NO.57)
平成22年6月15日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)の流行状況について(13)


 
66日現在、世界中214以上の国や地域から18,156例以上の死亡例を含む新型インフルエンザ確定症例が報告されています。
 熱帯の一部の地域、特に東南アジアとカリブ海地域において、新型インフルエンザの活動は活発ですが減少しつつあります。南半球の温帯地域の国々が冬に入り、今までのところチリとウルグアイを除いて、インフルエンザは散発的に報告されているのみです。チリとウルグアイの両国では、最近少数の新型インフルエンザウイルスの検出が報告されています。20102月末以降、季節性のB型インフルエンザウイルスが世界的に主要な流行株となっていますが、特に南米と東アフリカで、低いレベルですが季節性H3N2インフルエンザウイルスが増加してきています。
 アメリカ大陸の熱帯地域では、全体的な新型インフルエンザの流行は少なくなっていますが、南アメリカの一部の熱帯地域において、季節性のH3N2型とB型インフルエンザウイルスの両方が流行しています。キューバでは、新型インフルエンザの流行は活動的ですが減少し続けています。コスタリカでは、2010年初頭以降、新型インフルエンザの流行は低レベルです。ブラジルでは、新型インフルエンザの散発的な報告が続いています。ブラジルとベネズエラ両国では、最新報告週(5月最終週)において、呼吸器疾患の増加傾向に関連したインフルエンザの局地的な流行が報告されました。ベネズエラでは、5月初旬に始まった最近のインフルエンザの流行は、主に季節性A型インフルエンザウイルスの流行によるものでした。ボリビアでは、季節性インフルエンザの流行(主にB型)が3月〜5月にみられ、現在は鎮静化してきているようです。
 アジアでは、南アジアと東南アジアの熱帯地域(特にシンガポール、マレーシア、バングラデシュ)を除いて、全体的なインフルエンザの流行は少ないままです。シンガポールでは、全体的な急性呼吸器感染症の発生レベルは、わずかに閾値以下に留まっており、呼吸器検体で新型インフルエンザ陽性の割合は34%と若干増えています。マレーシアでは、新型インフルエンザの流行は5月に横ばいとなった以降は減少を始めたようです。バングラデシュでは、3月以降、新型と季節性B型インフルエンザウイルスの両方が低レベルで流行し続けています。アジアのその他の地域では、散発的な新型インフルエンザウイルスの検出報告が続いています。東アジアでは、全体的なインフルエンザの流行は少ないままですが、季節性B型インフルエンザウイルスが減少傾向にはありますが低いレベルで流行し続けています。
 サハラ以南アフリカでは、西アフリカの一部の地域(特にガーナ)で、新型インフルエンザは低レベルですが流行し続けています。ガーナでは、最新報告週において全呼吸器検体のうち新型インフルエンザ陽性であったのは13%でした。ケニアとタンザニアでは、5月下旬以降、少数ですが有意な数の季節性H3N2型インフルエンザが検出されています。
 北半球の温帯地域では、先月の新型インフルエンザウイルスは散発的な検出のみでした。南半球温帯地域では、チリとウルグアイの二ヶ国のみで、少数の新型インフルエンザの検出が最近報告されています。チリでは、5月に一部の限られた地域で新型インフルエンザの流行があり、5月最終週では呼吸器検体の3.4%が新型インフルエンザ陽性でした。ウルグアイでは、最新報告週(5月最終週)において、25検体のうち11検体(44%)が新型インフルエンザ陽性であったということに注意が必要ですが、呼吸器疾患の正確な数は分かっていません。チリとアルゼンチンでは、他の呼吸器疾患ウイルス、特にRSウイルスの流行が確認されています。南アフリカでは、新型インフルエンザウイルスは最近検出されていません。ニュージーランドとオーストラリアでは、全体的なインフルエンザ様疾患の数は少ないままですが、オーストラリアでは、季節性と新型インフルエンザウイルスの散発的な検出のみが最近報告されています。

(平成22年6月11日 WHO情報)