海外感染症情報 (NO.58)
平成22年6月24日
関西空港検疫所
パンデミック・インフルエンザ(H1N1)
流行状況について(14)


613日現在、世界中214以上の国や地域から18,172例以上の死亡例を含む新型インフルエンザの確定症例が報告されています。
 前回更新時から状況は大きく変化していません。熱帯の一部の地域、特に中米、カリブ海地域および南アジア、東南アジアの一部で新型インフルエンザの流行が見られますが、世界的には新型インフルエンザの活動性は低いままです。アジアおよびアフリカ・南米のいくつかの地域においては、季節性B型インフルエンザウイルスが低いレベルで流行し続けています。最近、季節性H3N2型インフルエンザがアフリカ東部で再び流行を続けています。南半球温帯地域の国々が冬に入り、これまでのところ散発的なインフルエンザの流行のみが報告されています。

 アメリカ大陸熱帯地域では、主にコスタリカ(2010年初頭以降)およびキューバ(20105月下旬に最終報告)からそれぞれ新型インフルエンザ流行の報告がありますが、少ないもしくは減少傾向にあります。キューバと(数は少ないですが)コスタリカでは、最近の新型インフルエンザの流行と少数の死亡例とが関連していました。コロンビアでは、6月の第1週目の呼吸器疾患の増加傾向は、新型インフルエンザの局地的な流行拡大と少数の死亡例と関連しており、新型インフルエンザウイルスの流行が低レベルですが増加してきていることを反映しているようです。その他の地域では、先月は新型インフルエンザウイルスの散発的な検出のみでした。いくつかの国々では、A型(ベネズエラでは5月以降)およびB型(ボリビアでは3月以降)を含む、季節性インフルエンザウイルスが最近流行しています。地域全体としては、他の呼吸器疾患ウイルス(特にRSウイルス)が変化しながら共に流行し続けています。

 アジアでは、マレーシア、シンガポールおよび少ないですがインド、バングラデシュ、ブータンで新型インフルエンザの流行が続いています。マレーシアでは、流行は続いていますが減少傾向にあり、4月中旬の週間新規報告数が横ばいになり、5月末には減少し始めたようです。シンガポールでは、6月第2週目に急性呼吸器感染症は警戒レベル近くになっていましたが流行閾値以下に留まっていました。インフルエンザ様疾患患者の呼吸器検体のうち約28%が新型インフルエンザウイルス陽性でした。南アジアでは、西インド(2010年初頭以降)およびバングラデシュ(2月下旬以降)で新型インフルエンザの流行が低いレベルで続いています。インドにおける2010年の小規模な流行は、少数の死亡例と関連していました。バングラデシュでは、季節性B型インフルエンザウイルスが新型インフルエンザウイルスと共流行を続けており、つい最近になってインドでも見られるようになりましたが、低いレベルです。南インドのケララ州で新型インフルエンザの流行拡大が最近報告されていることに注意が必要であり、さらなる情報がまもなく出るようです。ブータンでは、離れた3地域において新型インフルエンザの学校での流行が報告されていますが、全体的な呼吸器疾患レベルは低いとのことです。

 サハラ以南アフリカでは、東アフリカと西アフリカの一部地域において新型インフルエンザが低いレベルで流行し続けています。6月第1週目に、全呼吸器検体のうち新型インフルエンザウイルス陽性であったのは、それぞれタンザニアで10%、ガーナで16%でした。ケニアとタンザニアでは、5月下旬以降、少数ですが有意な数の季節性H3N2型インフルエンザウイルスが検出され続けています。

 北半球の温帯地域全体として、先月の新型インフルエンザウイルスは散発的な検出のみでした。南半球の温帯地域では、チリとウルグアイの2国のみで少数の新型インフルエンザウイルスの検出が最近報告されています。チリとアルゼンチンでは、他の呼吸器疾患ウイルス、特にRSウイルスの流行が確認されています。南アフリカでは、6月第12週目において、少数の季節性インフルエンザウイルスH3N2型およびB型が検出されています。ニュージーランドとオーストラリアでは、全体的なインフルエンザ様疾患レベルは少ないままです。オーストラリアでは、季節性と新型インフルエンザウイルスの散発的な検出のみが最近報告されています。

(平成22年6月18日 WHO情報)