海外感染症情報 (NO.40)
平成23年6月2日
関西空港検疫所
ドイツにおける溶血性尿毒症症候群の流行について

2011527日現在、ドイツでは5月第2週目以降276人が溶血性尿毒症症候群(haemolytic uremic syndromeHUS)を発症し、3人の女性が死亡するという重篤な疾患の流行が報告されています。HUSは、主に大腸菌感染に併発し、腎不全を引き起こします。ほとんどの大腸菌は無害であるとされていますが、腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic E.coliEHEC)と呼ばれるグループは毒素を産生し、血球や腎臓を傷害します。多くの感染者が入院し、数人は集中治療が必要な状態でした。新規患者報告も相次いでいます(最新の発症例は525日)。他の国々においても報告があり、とくにスウェーデンでは10人のHUS感染報告があります。感染者全員が最近ドイツ(とくにドイツ北部)に渡航していました。
 今回の大流行は異常に急速に拡大し、また通常であれば小児や高齢者がハイリスク群とされますが、成人(86%が18歳以上)、とくに女性(67%)の感染報告が目立ちます。大腸菌の中でもまれな血清型であるO104が今回の大流行を引き起こした可能性が示唆されています。原因に関する疫学調査が行われており、まだ特定されてはいませんが、キュウリである可能性があるとのことです。ドイツのロベルト・コッホ研究所はトマト、キュウリ、レタスを食べないよう、また果物や野菜は衛生的に処理するよう注意喚起を行っています。
 EHECは血性下痢や腹痛を起こします。最近のドイツ渡航歴(とくにドイツ北部)がありこれらの症状が見られる場合は速やかに医療機関に相談して下さい。HUSの合併症として、下痢が軽快した後に急性腎不全を引き起こすことがあります。止痢薬や抗菌薬による治療は状態を悪化させることもあるため、通常は推奨されません。
 食前やトイレの後の手洗いが非常に重要です。とくに小児や免疫が低下している人に接する場合は、飲食物を介する感染や動物との直接接触による感染と同様に人から人へと感染が拡がることがあります。
 WHOはドイツに関わる渡航や貿易についていかなる制限も勧告していません。


(平成23年5月27日 WHO情報)