海外感染症情報 (NO.61)
平成23年8月18日
関西空港検疫所
 ヨーロッパにおけるウエストナイルウイルス感染症の流行状況
 

2011816日現在、ヨーロッパのいくつかの国々においてウエストナイルウイルス感染症(WNV)の確定症例が報告されています。20117月初頭から811日までに公式発表された症例数はそれぞれ、アルバニア2例、ギリシャ22例、イスラエル6例、ルーマニア1例、ロシア連邦11例となっています。この症例数の増加は、医療従事者の意識の向上や検査機関の受容能力、また高温多雨の気候によるヤブカやイエカ属などの増加を反映しているようです。

 
WHOヨーロッパ支部は欧州疾病予防管理センター(ECDC)などと協力し、地域におけるWNVの流行状況を緊密にモニタリングしています。また、加盟国に対しては、WNV流行の影響を最小限にとどめるべく適切な公衆衛生対策を講じるよう呼びかけています。

 ヒトにおけるWNV感染症は多くは無症状か軽度の発熱のみです。感染者の約20%がウエストナイル熱に移行し、おおよそ150人に1人の割合でより重篤な神経侵襲性の病態に進行すると推測されています。50歳以上の人や免疫不全者(臓器移植など)は感染した場合にはより重症化しやすいとされています。

 ヒト用のワクチンがないため、重症化を免れるには適切な処置が必要であり、検査機関の充実や、ヒトや動物における監視活動の強化が疾患コントロールの一助になるとされています。

 予防に関しては、個人および社会における防蚊対策が最も重視されるべきで、とくに流行地域の住民には、疾患に対する知識や周辺環境での媒介蚊対策についての情報提供が必要であると述べられています。

(平成23年8月16日 WHO情報)