海外感染症情報 (NO.67)
平成24年9月6日
関西空港検疫所
アメリカ合衆国ヨセミテ国立公園におけるハンタウイルス肺症候群について

8月31日、国立公園公衆衛生サービスオフィス(NPS)はカリフォルニア州ヨセミテ国立公園で観光客6人がハンタウイルス肺症候群(HPS)を発症しうち、2人が死亡したと報告しました。
NPSの調査でこれら6人の患者は6月と7月に発症したことが判明しました。うち5人は国立公園内カリービレッジにある「シグネチャー・テント・キャビンズ」に泊まっていました。NPSは米国疾病管理センター(CDC)、カリフォルニア州保健局と協力し、他の患者の特定、ハンタウイルス感染症についての知識の普及に努め、新たな患者の早期発見・早期治療につなげたいとしています。
HPSは、頻度は高くないもののげっ歯類の糞尿・唾液を介してヒトに感染する重症の感染症で、ウイルスは主にシカネズミを宿主としています。発熱・悪寒・筋肉痛、ときには消化器症状で発症し、急速な経過で死に至ることがあります。通常は初感染後2~4週間の潜伏期間を経て発症しますが、再感染後の発症は早くて1週間から遅くて6週間後と潜伏期間に幅がみられます。
ハンタウイルス感染症に対して有効な治療法・ワクチンはなく、早期発見・早期治療により症状の急速な進行を軽減することは可能です。
公園当局ではあらゆる手段を講じて建物内の検査の強化、公園内の清掃、げっ歯類の公園内での分布のモニタリング、観光客に対してはハンタウイルス感染症の情報提供を行っています。現在、「シグネチャー・テント・キャビンズ」は閉鎖されています。
観光客にはげっ歯類およびその排泄物の接触を避けるよう呼びかけています。げっ歯類との接触の機会がある冒険家、バックパッカー、キャンプ客、観光客はテントや宿泊施設からげっ歯類を追い出し食物を汚染から守るよう予防策をとるようにすべきだとしています。
国立公園関係者は「シグネチャー・テント・キャビンズ」に6月中旬以降出入りのあった国内外の観光客と、現在連絡をとっています。また、NPSは、6月10日から8月24日までの間に「シグネチャー・テント・キャビンズ」に出入りした者(900人ほど)には症状があれば医療機関を受診するよう呼びかけています。

(2012年9月4日WHO報告)