海外感染症情報 (NO.69)
平成24年9月10日
関西空港検疫所
シエラレオネにおけるコレラの発生について(3)

 シエラレオネでの今年はじめからのコレラのアウトブレイクに対応するために、保健衛生省は国内国際レベルでパートナーと密に協同活動を実施しています。9月5日現在で、同国13地区の内、12地区から16,360例の発生報告があり、うち255例が死亡し、死亡率(CFR)は1.6%となっています。首都のフリータウンのある西部地域で新規発生患者の60%を占めています。
 シエラレオネの大統領は、コレラの流行拡大は「人道上の危機」であると宣言し、対策を指導したり、物資を流通させたり、調整全体を概観するため、大統領令下にコレラ対策本部を設立し、保健衛生省、経済・通商産業省、地方自治体、パートナーや関係者を含めた多面的な対策を実施しています。またユニセフ、オックスファム(オックスフォード貧窮救済機関)、英国赤十字社、セイブ・ザ・チルドレン、ケア(米国救援物資発送協会)、コンサーン、国境なき医師団、英国国際開発省、国連人道援助局、国際赤十字社、世界保健機関などを含めた国内外のパートナーらとともに、保健衛生省は患者管理、サーベイランス、総合的な対応の調整といった分野で対策を拡充していっています。できる限り早くコレラ流行を制御するため、保健衛生省や関連保健機関は“コレラに対する備え及び対策実行計画”(CPROP)に沿った活動を行っていますが、こういった活動をサポートし調整するために、コレラ・コントロール・コマンドセンター(C4)がフリータウンのWHO国事務局の中に設立されています。同センターは、国家対策本部が方針決定をする際の指針となる情報の提供も実施しています。
 地域レベルでの患者の早期発見と、時期を失しない治療が死亡率の低下には必要であることが強調されてきました。コレラの患者さんはコレラ治療ユニットで治療されること、ユニットのない地域では隔離の目的で医療施設の中に特別のエリアを設けることが協調されてきました。
 治療及び検査部門の医療従事者や検査技師を補強するため、WHOはグローバル感染症警報対応ネットワーク (GOARN)を通し、バングラデシュの下痢疾患国際研究センターから患者治療と検査の専門家を派遣しています。国内の検査室には検体を集め、移送し、分析するに十分な設備と試薬が供給されています。検査室における確定診断は、特に新たに流行が発生している地域では重要です。
 コレラの予防とコントロール活動に対する社会への介入も進行中です。200人以上の伝統的治療を行う人たちへ、コレラについてのオリエンテーションも実施されています。安全が保証されていない水源からの水を飲むことは避けるようにと注意喚起する会合が、フリータウンでは組織されています。電話会社によって国民むけのテキストメッセージが配信されています。ユニセフや他のパートナーは、水や、下水設備や公衆衛生活動のサポートを実施しています。
 なお、今回のコレラの流行に関してWHOはシエラレオネへのいかなる旅行や交易の制限も推奨はしていません。
(2012年9月8日WHO報告)