海外感染症情報 (NO.71)
平成24年9月13日
関西空港検疫所
米国ヨセミテ国立公園におけるハンタウイルス肺症候群について(2)

 9月7日現在、国立公園局(NPS)は、カリフォルニア州ヨセミテ国立公園に6月以降に滞在した観光客の中で8人のハンタウイルス肺症候群(HPS)の患者が発生したと報告しました。この患者のうち、3人が死亡し、5人が回復しています。
 公園管理者は観光客や国立公園内カリービレッジにある「シグネチャー・テント・キャビンズ」あるいは「ハイ・シエラ・キャンプ」に、6月10日から8月24日までの間に宿泊した者に対して、HPSの症状が現れていないかどうか早急な医学的注意を喚起するため、広報と助言活動を始めています。
 米国ではハンタウイルス肺症候群のヒト-ヒト感染は報告されていません。NPSによって行われた調査により、8人の報告患者のうち7人がヨセミテ公園内のカリービレッジにある「シグネチャー・テント・キャビンズ」に関わっており、1名は7月にヨセミテ公園内のカリービレッジとは異なる地域である「ハイ・シエラ・キャンプ」に滞在していました。
 ハンタウイルス肺症候群は特定の治療法がありません。感染者の早期発見と早期治療が病気の進行を抑制します。早期の症状は発熱、悪寒、筋肉痛、疲労感です。50%の患者が頭痛、嘔気、嘔吐、めまい、腹痛を起こします。疾患は急速に進行し(症状が始まってから4~10日)、やがて咳、息切れや重度の呼吸困難が出現します。
 HPS患者の生存の可能性には早期の医療的介入が大きく影響します。ヨセミテ国立公園に最近訪れた人で、上記のような症状が出た場合には、ハンタウイルスへの感染の可能性があるために、直ちに医療機関を受診することが推奨されます。
 NPSは米国疾病予防管理センター(CDC)、カリフォルニア州保健局、その他の州健康局と協力し、さらに患者が発生してこないか確認するとともに、ハンタウイルスやHPSへの国民の関心を高めるように尽力しています。
(2012年9月12日WHO報告)