(No.171)

フランス領カリブサンマルタン島におけるチクングニヤ熱 平成25年12月12日

 2013年12月6日世界保健機関(WHO)は、カリブのサンマルタン島のうちフランス領地域で現地発生のチクングニヤ熱診断確定例2例を報告しました。島の他の地域はオランダ領(シントマールテン島)となっています。2例の確定診断は、マルセイユにある国立アルボウイルスレファレンスセンターでポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてなされました。

 同地域では今年の1月からデング熱のアウトブレイクがみられています。11月18日に関節痛と発熱を有する5人の患者の調査があり、デング熱の診断は除外されましたが、その追跡調査でチクングニヤ熱であることが判明したものです。この5人の患者は10月12日~11月15日の間に発症しています。

 12月10日現在、診断確定例は2例ですが4例の可能性例(疑いが強い)と、20例の疑い例(疑いが弱い)が報告されています。

 チクングニヤ熱は感染した蚊によりヒトが感染する致命率の低いウイルス疾患です。症候としては高熱、頭痛、数週間も持続する(手首、足首の)重大な関節痛があります。発症するのは蚊にさされてから4~7日目です。チクングニヤという名称は、この疾患に罹患した人が(痛みのため)とる姿勢である「かがんでいる」という意味のマコンデ族の言葉に由来しています。

 この疾患には特別の治療法やワクチンはありませんので、予防法としては以下の2戦略が基本となります。
 ○蚊にさされる事の予防のために個人ができる手段や、感染の危険因子についての意識を高めること
 ○蚊の孵化する場所をへらし、蚊の増殖を阻止すること

 今回の出来事は、WHOアメリカ地域(PAHO)ではじめてチクングニヤ熱が地域内で伝播されたことを意味しています。

 同島におけるフランスとオランダ両国側の保健専門家は、両本国の公衆衛生専門家と共同で今回のアウトブレイクに対処すべく密に連携しています。地域の専門家による対応も今日まで実施されており、それには以下の項目が含まれます、
 ○症候調査と重症例の調査を含む疫学的調査
 ○媒介動物に対するコントロールは患者発生のあった地域で実施されており、まもなく空港周辺、学 校、保育所、病院を含めて全島に拡げられる予定です。
 ○報道、社会的動員: 情報は医療専門家、住民(個人防御、幼虫の発生する場所を減らす方法につ いての情報)、空港での特別情報として旅行者にひろく伝えられているところです。

 WHOは入国に際しては今回の出来事に対する特別のスクリーニングの実施やいかなる旅行交易の制限も推奨はしていません。

(2013年12月6日WHO報告)