海外感染症情報 (NO.75)
平成25年6月7日
関西空港検疫所
2013年アフリカ髄膜炎ベルトにおける髄膜炎菌性髄膜炎
 2013年6月6日 今年1月1日から5月12日(疫学第19週)まで、髄膜炎のための重点的な髄膜炎発生動向調査下にあるアフリカ諸国19か国のうち、18か国から9,249人の髄膜炎疑い例があり、うち857人が死亡し、死亡率9.3%と報告されています。症例数は過去10年間の流行シーズンにおける報告の中で最も少ない数です。

 髄膜炎菌感染症の集団発生は、ギニアと南スーダンで確認されており、それぞれ404人の疑い例でうち38人が死亡、196人の疑い例でうち13人が死亡と報告されています。

 ギニアでは、シギリ県において主に髄膜炎菌の血清型W135(NmW135)による小規模な流行が報告されました。ギニア保健省の要請に応じて、流行性髄膜炎を制御するために、ワクチン供給の国際調整団体(ICG)は髄膜炎菌ACWの多糖類ワクチン63,075回分を提供しました。今年5月2日から7日まで、当該国の住民を対象としたワクチンキャンペーンが保健省によって実施されました。

 南スーダンでは、髄膜炎菌の血清型A(Nm A)による流行がアッパーナイル州マラカル郡で確認されました。ICGは198,770回分の髄膜炎菌Aの結合型ワクチンを提供し、世界保健機関(WHO)や関連機関の支援を受け、南スーダンの保健省が指揮をとり、今年5月15日から24日までワクチンキャンペーンを実施しました。

 さらに、髄膜炎の集団発生は、ベナンで1県、ブルキナファソで1県、ナイジェリアで3県の報告がありました。これらの流行は短期間であり、優位な髄膜炎菌は確認されていません。発生した県の保健省は、患者発生動向調査やケースマネージメントの強化を含めた感染予防と防御対策を実施しました。

 同期間中に報告された髄膜炎の症例数の減少は、2010年からアフリカ髄膜炎ベルトの国々において、新しく開発された髄膜炎菌A結合型ワクチンの漸進的な導入に起因すると考えられています。アフリカでの予防を目的とした初めての髄膜炎菌ワクチンの導入により、2010年から2012年の過去3年間でアフリカ髄膜炎ベルトの10か国100万人以上の人々に予防接種をすることができました。今年、症例数と流行活動の減少は、このワクチンを導入した効果の証明となり、アフリカの病気の主な原因である髄膜炎菌Aの流行を取り除くことが期待されます。アフリカ髄膜炎ベルトにおける大規模な流行が4年から10年の間隔で発生しているように見えることを考えると、髄膜炎の綿密な患者発生動向調査は極めて重要です。

 髄膜炎の流行は、2002年に導入された重点的な髄膜炎発生動向調査システムの一部で検出されており、それによって参加国が毎週、地区レベルでの情報を収集し、ワガドゥグのWHOアフリカ地域事務局国際支援チームに報告し、編集され、地域週速報として配布されています。これにより、地区レベルの流行が適時に検出されるだけでなく、地域レベルの状況の監視や、国境地域、複数国での流行の把握、対応の調整もできるようになります。

 WHOは、パートナー機関や当該国の保健省と共同で、流行状況について注意深く監視し続けています。
(2013年6月6日 WHO報告)