(No.50)

中東呼吸器症候群コロナウイルス感染確定例報告(70) 平成26年3月12日更新

  2014年3月11日更新情報です。2月20日サウジアラビア保健省は新たに2例の中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)確定診断例を報告しました。

 世界保健機関(WHO)に報告された詳細は以下の通りです。
 1例目 アルアフサ州の58歳男性で、2月2日に発症し4日入院しました。2月24日軽快退院しました。複数の慢性疾患があり、動物との接触歴が報告されています。
 2例目 リヤド出身81歳女性で、複数の基礎疾患があり、2月2日入院し、2月5日MERSの症状を呈し、2月8日死亡しました。発症する前までに、動物との接触歴はないようです。
 2012年9月から現在まで、世界中からWHOに報告された中東呼吸器症候群コロナウイルス感染症患者は186人で、このうち81人が死亡しています。

 現在の状況と入手可能な情報に基づいて、WHOは全ての加盟国に対して重症急性呼吸器感染症(SARI)への監視を継続することと、通常とは異なる呼吸器感染症について再調査するように勧めています。
感染予防と管理措置が医療施設におけるMERS-CoVの可能性拡大を防止するために重要です。MERS-CoVの感染疑い、あるいは確定例が収容されている医療施設では、他の患者や医療従事者、訪問者に感染した患者からのウイルス感染のリスクを減少させるための適切な対策をとるべきです。すべての医療従事者に対して感染予防・制御に関する教育と訓練を定期的に実施すべきです。

 感染初期が軽症で非典型的な症状のため、MERS-CoVの発症初期の患者の診断確定は、常に可能とは限りません。そのため、医療従事者は全ての患者に対し、診断結果に関わらず、常に、どの場所でも、すべての患者に対して標準予防策を実施することが重要です。

 飛沫感染に対する予防策は、急性呼吸器感染症を持つ全ての患者を治療する時に標準予防策に追加する必要があります。MERS-CoV感染の可能性のある、または診断の確定した患者を治療する時は、目の保護を加えた接触感染予防策をする必要もあります。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には際は、空気感染に対する予防策もするべきです。

 例え、鼻咽頭スワブ上の最初の試験は陰性であっても、臨床および疫学的な手がかりからMERS-CoV感染を強く疑う患者は、感染の可能性がありうると考えて管理するべきです。最初の検査が陰性でも、できれば下気道からの検体で、繰り返し試験を行うべきです。

 医療従事者は引き続き、警戒することをお勧めします。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERS-CoVの検査をすべきです。

 全ての加盟国はMERS-CoV感染に関する新たな症例が発生した場合、考えられる感染源と臨床経過の情報と共に、迅速に評価し、WHOに報告するように呼び掛けています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。
MERS-CoVに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。
 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。