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エボラウィルス病 背景と要約

 
 エボラウイルス病:背景と要約
 4月3日WHO(世界保健機関)はエボラウイルス病(EVD:エボラ出血熱と同義)の発生に対し各国当局を支援しています。現在流行しているエボラウイルスはザイールエボラウイルスとほぼ同じ(98%の相同性)系統です。今回初めて発見されたのは西アフリカです。ギニア南東部の森林地帯で初発例が報告されました。流行は急速に拡がりコナクリなどいくつかの地域からEVDによる症例と死亡例が報告されました。ギニアへ渡航した近隣諸国から少数の疑い例と死亡例が報告されています。診断確定例はギニアとリベリアから報告されています。
 疑い例・診断確定例と死亡例の最新情報
 エボラウイルス属はフィロウイルス科(他マールブルグウイルス属・Cuevavirus属)に含まれます。エボラウイルス属はブンディブギョエボラウイルス(BDBV)・ザイールエボラウイルス(EBOV)・レストンエボラウイルス(RESTV)・スーダンエボラウイルス(SUDV)・タイフォレストエボラウイルス(TAFV)の5種類あります。BDBV, EBOV, SUDVはかつてアフリカで大流行しましたがRESTV とTAFVは認めていません。今回のEVD患者からはザイールエボラウイルスが検出されています。
 アフリカではオオコウモリがエボラウイルスの自然宿主と考えられています。このウイルスは、感染したオオコウモリやオオコウモリと接触するサル、ブタなどの中間宿主を介し、野生動物から人へ伝染します。感染した動物に接触したり、屠殺の過程において、あるいは生血や乳や生肉など加熱処理せずに摂取することで、感染する場合があります。
 エボラウイルスは血液や体液を介してヒトからヒトへ感染します。患者の汚染された針や、周囲の汚染された備品との接触でも感染します。
 エボラウイルス病は突然の発熱が特徴的な症状であり、激しい消耗、筋肉痛、頭痛、嘔気と咽頭痛を伴います。死亡率90%であり重症化する急性ウイルス疾患です。その後は嘔吐、下痢、腎障害や肝障害を来し、全身性の出血を伴うものもあります。血液検査では白血球数と血小板数の減少と肝酵素の上昇を認めることが多いです。

 ウイルスの感染から発症までの潜伏期間は2日から21日です。患者の血液や分泌物にウイルスが存在する期間は、発症から61日までと報告されており、この期間は感染力があります。
 EVDである可能性を考えた場合、他の頻度が多い疾患、例えばマラリア、腸チフス、赤痢、コレラ、レプトスピラ、ペスト、リケッチア感染症、回帰熱、髄膜炎、肝炎、そして他のウイルス性出血熱を見逃してはなりません(鑑別が重要)。
 確定診断は検査室診断でなされるが、患者検体は感染源であるので、最大限の生物学的防護手段を講じた状態で実施する必要があります。
 EVDにはワクチンも、特異療法もない。重症患者には、集中的な扶助的治療(対症療法)が必要である。患者は頻繁に脱水症状を呈し、電解質を有する補液、あるいは静脈内投与が必要であります。
 感染の危険因子を認知し、防護手段の励行することが、人への感染とそれに続く死亡を減少させる唯一の手段である。患者への無防備な濃厚接触は避けるべきです。患者を在宅ケアする場合は、手袋とPPE(着脱の前後の手指消毒)の実施が必要です。
 病院、自宅で患者を見舞った場合、その後、常に手洗いが必要です。

 医療従事者への感染のほとんどは、基本的な防護手段が講じられていない場合に発生しています。医療従事者は、どの患者(EVD以外の患者も)に接する場合でも標準防護策を講じるべきです。EVDの疑いがある場合は、標準防護策以外に、患者の血液、およびその他体液との接触を避ける等の対策も必要です。EVDで死亡した患者を埋葬する作業は、感染の危険があり危険です。この場合、速やか・かつ安全に埋葬されなければなりません。WHO(世界保健機関)は、国家および地域保健当局およびその他の技術支援団体と連係し、状況を評価して対応するため専門家を現地に派遣(配置)しています。
 隔離施設と移動可能な検査室が設立され、感染予防・管理と患者治療の指針が提供されています。また、当該地域においては、住民への啓発と教育キャンペーン、社会動員、および感染の危険性に関する情報共有(リスクコミュニケーション)が行われています。EVDの発生が最近報告された地域に滞在した人は全て、EVDの症状を知り、最初にその症状が現れた時点で(直ぐに)医療機関を受診するべきです。
 EVDの発生が最近報告された地域に滞在した人は全て、EVDの症状を知り、最初にその症状が現れた時点で(直ぐに)医療機関を受診するべきです。当該地域からの帰国者でEVDに合致した症状を呈している者を、診察・治療する内科医は、EVDの可能性を考慮に入れるべきです。マラリア、腸チフス、赤痢、コレラ、レプトスピラ、ペスト、リケッチア感染症、回帰熱、髄膜炎、肝炎、および他のウイルス性出血熱が鑑別診断として考慮する必要があります。WHOは関係国に対して、EVDと症状が合致する事例等調査への調査の強化を、また通常見られない事例を発見した場合の注意深く検証する事を推奨しています。それは、IHR(世界保健規則)に準じて、人のEVD感染を判明させ(それに続く)報告を確保するためです、またWHOは、関係国にEVDに対する国レベルの対策活動の継続を求めています。