(No.168)

西アフリカにおけるエボラ出血熱の集団発生(34) 平成26年7月26日更新

疫学とサーベイランス
 世界保健機構(WHO)はシエラレオネ、リベリア、ギニアにおけるEVDの流行状況を監視し続けています。エボラウイルスの疫学的傾向は、流行地の地域社会と医療施設の間で感染伝搬がまだ未だ発生し、不安定な状態です。2014年7月21日から23日の間に、リベリアとシエラレオネでは96人の新たな患者96人と死亡者7人が報告されました。同じ期間にギニアでは12人の新たな患者と5人の死亡者が報告されました。これらの人数には、疑い例、可能性例、診断確定例が含まれています。ウイルスの活動性が低下した週の後のギニアでの新患者数の急増は、地域に未検出の感染伝播が存在している事を示しています。この現象はEVD流行発生の制御に逆行しており、流行の封じ込め対策、特に効果的な接触者追跡の向上が求められています。
 加えて、ナイジェリア保健省は国内でのEVD第1例を報告しました。同国当局によりますと、患者は、最近ナイジェリアへ渡航した40歳のリベリア国籍の男性で、EVD症状を呈しナイジェリアの病院を受診しています。彼は7月20日、トーゴの(首都)ロメを経由し空路ナイジェリアのラゴスに到着しました。彼は渡航中に発症し、ラゴスに到着後直ぐに当地の私立病院に入院しましたが、25日死亡しました。22日に検体が採取され、ラゴス大学附属総合病院のウイルス学研究所での予備的検査が実施され、エボラウイルスが陽性でした。この症例の検体は、セネガルのダカール・パスツール研究所でWHO 協力センターに確認のため照会されています。ナイジェリア当局は、この(付随)症例の源泉での封じ込めを確実にするために、WHOとそのパートナーと密接に連携しています。

保健部門の対策
 西アフリカにおける現在のEVD流行対策を進行させるため、WHO事務局長は2014年7月24日ジュネーブで、支援住民および開発協力者と討議しました。国と機関は流行に対し彼らに再度援助と支持を約束し、さらなる人材と財源を確保するための努力がなされています。
 アフリカ地域(AFRO)事務局長ルイス・サンボ医師は、EVD流行3カ国での実情調査の任務を継続しました。7月21日~22日にリベリア、22日~23日はシエラレオネ、23日~25日にギニアを訪問しました。同事務局長の訪問の最終目的は、EVDの流行を直に評価して現状の対策と課題を検証し、西アフリカでの流行を迅速に封じ込める最良の方法を見つけることです。大統領、保健省や他の上級官僚の大臣達、国際的・地域の非政府組織、国連機関、その他の利害関係者との、公式会談が開催されました。
 地域事務局長は3カ国の訪問中、既存の感染防御と対策手段で封じ込めが可能であると何度も繰り返えして述べる一方、流行状況の深刻さを強調しています。事務局長は、流行が各国の保健区域を越えて発生していると見ており、市民の地域社会を含むすべての区域にEVD流行三カ国の政府に働きかけています。また、現地スタッフと他国の資源を動員し、現地での活動がそれぞれの文化を尊重しながら行えるよう、各国に要求しました。国境を越えて協力を強化し、公衆衛生の非常事態への対策を調整し、WHOの効果的な調整と委任を強化するために、各国に指令を繰り返し発出しています。WHOを代表して、地域事務局長は影響をうけた各国にWHOの継続的な参加を約束し、EVD発生を制御するための国家的努力を支持し国際社会を動員することでその役割を果たすことを再確認しました。
 2014年7月24日ギニア首相と地域局長はコナクリでWHO小地域アウトブレイクコーディネイションセンター(SEOCC)を公式に開始しました。センターは地域的・国際的レベルでの技術面でのサポートを統合し調和していきます。WHOは、活動の中心的役割を担い調整(連携)センターの活動に貢献するそれぞれの組織から代表者を、関係機関に動員するよう依頼しました。SEOCCの設立は、7月初旬にアクラ(ガーナ)で開かれた緊急閣僚会議からの引き続いての活動でした。


 ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、接触者の追跡、情報公開やコミュニティへの動員、及び症例管理と感染予防・制御、調整などを含めた流行対策におけるすべての側面を拡大して強化するための努力が現在続いています。

 WHOは、この事例に関する現在の情報からは、ギニア、リベリア、シエラレオネへの渡航や貿易を制限することを推奨していません。


患者数情報の更新
 EVDに起因する新たな患者と死亡者について、西アフリカ3カ国ギニア、リベリア、シエラレオネの保健省から報告が続いています。2014年7月21日から23日までの間に、新たな死亡者12人を含むEVDの新規患者108人が3カ国から報告されました。ギニアでは患者12人と死亡者5人、リベリアでは患者25人と死亡者2人、シエラレオネでは患者71人と死亡者5人です。これらの人数には、EVDの診断確定例、可能性例、疑い例と死亡例が含まれています。

 2014年7月23日の時点で、3カ国でEVDに起因した患者の累計数は、死亡者672人を含めて1,201人となりました。患者の分布と分類は以下のとおりです。ギニア:患者427人(確定例311人、可能性例99人、疑い例17人)・死亡者319人(確定例208人、可能性例99人、疑い例12人)、リベリア:患者249人(確定例84人、可能性例84人、疑い例81人)・死亡者129人(確定例60人、可能性例 50人、疑い例19人)、シエラレオネ:患者525人(確定例419人、可能性例56人、疑い例50人)・死亡者224人(確定例188人、可能性例33人、疑い例3人)。統計の概要表は以下のとおりです。

2014年7月23日時点のギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVDの診断確定例、可能性例、
疑い例、死亡例

 

新症例

確定

可能性

疑い

ギニア

症例

12

311

99

17

427

死亡

5

208

99

12

319

リベリ

25

84

84

81

249

死亡

2

60

50

19

129

シエラレオ

71

419

56

50

525

死亡

5

188

33

3

224

108

814

239

148

1,201

死亡

12

456

182

34

672


 ※ 新症例は2014年7月21日から23日までの間に報告された患者

 症例数の総数は、分類変更、後ろ向き調査、症例と検査結果の統合、そして強化されたサーベイランスにより変化します。記載されているデータは、保健省から報告された最も有用性の高い情報に基づいています。