(No.197)

エボラ対応に関するロードマップ 平成26年9月22日更新

 2014年9月22日、WHO(世界保健機関)は、エボラ対応に関するロードマップを更新しました。
ロードマップの体系に沿って、国別の報告は2つのカテゴリーに分類されます。1つは、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、もう1つは、初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(ナイジェリア、セネガル)です。また、西アフリカのエボラ流行とは関連のない、別のエボラウイルス疾患(EVD)が発生しているコンゴ民主共和国の状況の概観についても示されています(別掲1を参照)。


1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国

 表1のとおり、2014年9月22日現在、西アフリカ諸国で流行中のエボラウイルス疾患(EVD)における確定例、可能性例、疑い例(定義は別掲2を参照)の総数は、5,843人で、このうち2,803人が死亡しています。

表1. 2014年9月22日時点のギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ギニア

確定

818

465

可能性

162

162

疑い

28

5

国別総数

1,008

632

リベリ

確定

863

670

可能性

1,342

544

疑い

817

364

国別総数

3,022

1,578

シエラレオネ

確定

1,640

545

可能性

37

37

疑い

136

11

国別総数

1,813

593

5,843

2,803

※表1のデータは、2014年9月20日の時点でのギニア保健省からの報告、9月17日の時点でのリベリア保健省からの報告、9月 19日の時点でのシエラレオネ保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
 
 図1は、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国における症例の位置を示しています。それぞれの地域における累積症例数がグレー色の円で示されています。ギニアでは、キンディア州でEVDの確定症例が1例報告されました。この地域からEVD症例が報告されたのは今回が初めてです。

図1:広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国におけるEVD症例の分布

※図1のデータは、2014年9月20日の時点でのギニア保健省からの報告、9月17日の時点でのリベリア保健省からの報告、9月 19日の時点でのシエラレオネ保健省からの報告による公式情報に基づいています。この地図 に示された境界線や名前、使用された記号については、いかなる意味においてもWHOの見解を示すものではありません。これはすべての国、領域、都市、地域 の法的立場、またそれぞれの当局の法的立場を考慮してのことです。地図上の点線や破線は、現在完全な合意が得られていない可能性がある部分のおよその境界 を示しています。

 医療従事者におけるEVDへの暴露は、今回の流行の警戒すべき特徴として続いています。2014年9月22日の時点で、348人の医療従事者(ギニア67人、リベリア174人、ナイジェリア11人、シエラレオネ96人)がEVDを発症したことが確認されており、186名の医療従事者(ギニア35人、リベリア85人、ナイジェリア5人、シエラレオネ61人)がEVD感染で死亡しました。


2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 表2のとおり、ナイジェリアとセネガルの2か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国から入国してきた症例が報告されています。ナイジェリアでは、20症例が発生して8症例が死亡しました。セネガルでは、1症例が発生しましたが、死亡例やエボラに起因するとされる新たな疑い例はありません。

表2. 2014年9月22日時点のナイジェリア、セネガルにおけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ナイジェリア

確定

19

7

可能性

1

1

疑い

0

0

国別総数

20

8

セネガル

確定

1

0

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

1

0

21

8

※ 表2のデータは、各国の保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

 現在、接触者の追跡調査と健康監視が行われています。ナイジェリアでは、696人の接触者(ラゴス348人、ポート・ハーコート348人)が21日間の健康監視を終えました。ラゴスで現在も健康監視を受けている3人の接触者については、全員が9月20日に監視(検温などのチェック)を受けました。ポート・ハーコートで現在も健康監視を受けている175人の接触者については、165人(94%)が9月20日に監視を受けました。
セネガルでは、すべての接触者が現時点で21日間の経過観察を終え、さらなるEVD症例は報告されていません。
 EVD流行に関する疫学データを解釈する際に考慮しなければならない点がいくつかあります。今回の流行でEVDに起因するとされている死亡者の多くが、この疾患で死亡したと疑われる症例であり、確定例ではありません。EVD症例は、検査室で検体が陽性となった場合のみ確定例とされます。身体から採取された検体がEVD陰性であった場合、その人はそれ以降EVDによる死亡例には算入されず、それによって数値は修正されます。しかし、国によっては、検査室の体制や治療センターが飽和状態にあるため、確定例の人数と併せた可能性例の人数および疑い例の人数の総数(の方が)が、症例数をより正確に反映している可能性があります。現在、情報源の異なるデータの間にみられる相違について、解決する作業が行われており、それによって将来的には症例数および死亡者数が改訂される可能性があります。


別掲1. コンゴ民主共和国におけるエボラ流行
 2014年9月18日現在、コンゴ民主共和国(DRC)において、68人のEVD症例(確定例28人、可能性例26人、疑い例14人)が報告されており、このうち8人が医療従事者で発生しています。また、合計41人の死亡者が報告されており、このうち8人が医療従事者でした。
現在、432人の接触者が21日間の健康監視を終えました。488人の接触者が監視中で、468人(96%)が9月18日(この日がデータの報告があった最終日)に監視を受けました。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネに影響を与えている流行とは関連がありません。

別掲2. EVDの症例定義
 表3のとおり、EVD症例は、確定例、可能性例、疑い例のうちのどの基準に該当するかで分類されます。

表3. EVD症例の分類

分類

分類基準

確定例

疑い例や可能性例の検体が検査室でエボラウイルス陽性が確認された場合に分類される。

可能性例

臨床医によって疑い例と判断された症例、もしくは確定例と疫学的に関連があり「EVD疑い例」とされていた死亡者で、検査されずに検査室で確定されなかった患者。

疑い例

生死に関わらず、突然の発熱があり、EVDの疑い例、可能性例、確定例、もしくは死亡または病気の動物に接触したことがある患者。あるいは、突然の発熱および少なくとも3つの症状(頭痛、嘔吐、食欲不振、下痢、傾眠傾向、胃痛、筋肉痛もしくは関節痛、嚥下困難、呼吸困難、しゃっくりのうち3)がある患者。あるいは、原因不明の出血がある患者、原因不明の突然死があった患者。