(No.199)

エボラ対応のロードマップに関する状況報告(2) 平成26年10月1日更新

 2014年10月1日、WHO(世界保健機関)は、エボラ対応のロードマップに関する状況報告を更新しました。


概要
 2014年9月28日の時点で、西アフリカ諸国で流行中のエボラウイルス疾患(EVD)における確定例、可能性例、疑い例(定義は別掲1を参照)の総数は、7,178人で、このうち3,338人が死亡しています(表1)。EVD患者が発生している国は、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、セネガルです。ギニア、リベリア、シエラレオネでは、前週と比較して新規患者の報告数は減少しています。しかし、いくつかの主要な地域からは、EVD患者が少なく報告されており、ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、流行は持続的かつ広範囲なままで、いくつもの地域で患者の発生率が増加しているという有力な証拠があります。西アフリカにおけるEVD流行について、現在も制御下に置かれていることを示す徴候がまだいくつかあります。
表1. 2014年9月28日時点のギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数

国名

症例定義

患者数

21日以内の患者数

21日以内の

患者数の割合

死亡者数

ギニア

確定

950

230

24

535

可能性

170

14

8

170

疑い

37

23

62

5

総数

1,157

267

23

710

リベリ

確定

927

280

30

890

可能性

1,656

687

42

664

疑い

1,113

672

60

444

総数

3,696

1,639

44

1,998

シエラレオネ

確定

2,076

788

38

574

可能性

37

0

0

37

疑い

191

106

56

11

総数

2,304

894

39

6722

7,157

2,800

39

3,333

※ 表1のデータは、各国保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
 シエラレオネとリベリアにおいて、上向きの流行傾向が続いています。対して、ギニアにおける流行の膠着状態は重大な懸念であり、すぐにでも状況が変わる可能性はありますが、以前よりも安定した状態にあります。

・ギニア
 ギニアからの報告では、過去5週間の状況と比較して、新規患者の報告数が僅かに減少しています。この減少傾向は、過去5週間で新規患者数が急増していたマセンタ地区からの報告数が減少したことに起因しています。
 今回の流行の発信地域であるゲケドゥ県で流行が持続しており、過去10週間にわたって毎週5~20人の新規患者が報告されています。首都コナクリでは今週に27人の新たな確定例が報告されており、僅かな増加があります。現在、コートジボワールと国境を接するベイラ県において、最初の確定例が報告されています。

・リベリア
 過去2週間以上、リベリアから報告されている新規患者数は、急激な減少傾向を示しています。先週、首都モンロビアからの新たな確定例の報告はありませんでしたが、今週は新たに5人の確定例が報告されました。
 ボン郡、グランドバッサ郡、マージビ郡、ニンバ郡において、新規患者の報告が続いています。ギニアのゲケドゥ県と国境を接するロファ郡では、過去3週間は患者数にほとんど変化がありませんでしたが、今週、38人の新規患者(確定例と可能性例)が報告されました。

・シエラレオネ
 シエラレオネの流行状況は、過去6週間で新規患者の報告数が増加しており、悪化し続けています。首都フリータウンに隣接しているポートロコ、ボンバリ、モヤンバでは、過去4週間で新規患者が急増していることを受けて隔離されています。トンコリリでは今週も新規患者が報告されています。対照的に、以前に高いレベルの流行が報告されていたカイラフンとケネマでは、過去2週間で新規患者の報告数がかなり減少しています。この減少が本物かどうか、過小報告であるのかどうかを確認するために、詳しい調査が必要になりますが、現在は過小報告の可能性が高いと示されています。


・医療従事者の感染
 医療従事者において、エボラウイルスへの感染が多数続いており、大きな懸念となっています。9月28日現在、377人の医療従事者がエボラウイルスに感染し、216人が死亡しています(表2)。
表2. 2014年9月28日時点のギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ギニア

確定

59

27

可能性

8

8

疑い

0

0

国別総数

67

35

リベリア

確定

73

63

可能性

88

28

疑い

24

4

国別総数

185

95

シエラレオネ

確定

111

78

可能性

2

2

疑い

1

1

国別総数

114

81

ナイジェリア

確定

11

5

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

11

5

377

216

・地理的分布
 図1は、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国における患者の位置を示しています。それぞれの地域における累積患者数がグレー色の円で示され、9月28日から遡って21日以内の累積患者数が赤色で示されています。以前に患者が確認された10地域(ギニア9地域、シエラレオネ1地域)において、9月28日以前の過去21日以内に新規患者は報告されていません。ギニアでは、コートジボワールと国境を接するベイラ県において、最初の確定例が報告されました。リベリアでは、これまでに患者報告がなかったグランド・クル郡において、6人の確定例が報告されました。

図1:ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例の分布

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 表2のとおり、ナイジェリアとセネガルの2か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国から入国してきた症例が報告されています。ナイジェリアでは、20症例が発生して8症例が死亡しました。セネガルでは、1症例が発生しましたが、死亡例やエボラに起因するとされる新たな疑い例はありません。
 現在、接触者の追跡調査と健康監視が行われています。ナイジェリアでは、すべての接触者891人(ラゴス362人、ポート・ハーコート529人)が、21日間の健康監視を終了し、新たな患者報告はありません。ラゴスで確定例が最後に確認されたのは9月5日で、ポート・ハーコートで確定例が最後に確認されたのは9月1日です。
 セネガルでは、すべての接触者が現時点で21日間の経過観察を終え、新たな患者報告されていません。確定例が最後に確認された8月28日から42日(潜伏期間の2倍)が経過しており、この国では流行の発生を未然に防げたと考えられています。

表3. 2014年9月28日時点のナイジェリア、セネガルにおけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ナイジェリア

確定

19

7

可能性

1

1

疑い

0

0

国別総数

20

8

セネガル

確定

1

0

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

0

0

21

8

※ 表3のデータは、各国の保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。


3. エボラへの暴露を迅速に検出して対応するための各国の準備状況

 2014年の西アフリカにおけるEVDの流行に関して、IHR 2005に基づいてWHOの統括責任者会長による2回目の緊急委員会が招集されました。この会議は、インターネットを使って、2014年9月16日から年9月21日まで、緊急委員会の委員とアドバイザーが参加して行われました。
 委員会は、すべて国が想定される状況に対する個々人の十分な訓練を通して、準備の補強、計画の確認、そして現在の準備状況を点検しなければならないと、強調しています。

別掲1. EVDの症例定義
 下記の表のとおり、EVD症例は、確定例、可能性例、疑い例のうちのどの基準に該当するかで分類されます。
表. EVD症例の分類

分類

分類基準

確定例

疑い例や可能性例の検体が検査室でエボラウイルス陽性が確認された場合に分類される。

可能性例

臨床医によって疑い例と判断された症例、もしくは確定例と疫学的に関連があり「EVD疑い例」とされていた死亡者で、検査されずに検査室で確定されなかった患者。

疑い例

生死に関わらず、突然の発熱があり、EVDの疑い例、可能性例、確定例、もしくは死亡または病気の動物に接触したことがある患者。あるいは、突然の発熱および少なくとも3つの症状(頭痛、嘔吐、食欲不振、下痢、傾眠傾向、胃痛、筋肉痛もしくは関節痛、嚥下困難、呼吸困難、しゃっくりのうち3)がある患者。あるいは、原因不明の出血がある患者、原因不明の突然死があった患者。



別掲2. コンゴ民主共和国におけるエボラ流行
 2014年9月28日の時点で、コンゴ民主共和国(DRC)において、70人のEVD患者(確定例30人、可能性例26人、疑い例14人)が報告されており、このうち8人が医療従事者で発生しています。また、70人の患者の うち42人の死亡者が報告されており、このうち8人が医療従事者です。
666人の接触者が21日間の健康監視を終えました。279人の接触者が監視中で、265人(95%)が9月28日(この日がデータの報告があった最終日)に監視を受けました。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネに影響を与えている流行とは関連がありません。