(No.204)

エボラ対応のロードマップに関する状況報告(3) 平成26年10月8日更新

 2014年10月8日、WHO(世界保健機関)は、エボラ対応のロードマップに関する状況報告を更新しました。
 10月5日の時点で、西アフリカ諸国で流行中のエボラウイルス疾患(EVD)における確定例、可能性例、疑い例の総数は、8,033人で、このうち3,879人が死亡しています。EVD患者が発生している国は、ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、セネガル、アメリカ合衆国です。なお、スペインで10月12日に終わる週(第41疫学週)に1例EVD確定例が報告されましたが、この症例の情報については、次のエボラ対応に関するロードマップの更新で報告する予定です。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
 ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、上向きの流行傾向が続いています(表1)。

表1. 2014年10月5日時点のギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数

国名

症例定義

患者数

21日以内の患者数

21日以内の

患者数の割合

死亡者数

ギニア

確定

1,044

253

24

587

可能性

180

13

7

179

疑い

74

65

88

2

総数

1,298

331

26

768

リベリ

確定

941

136

14

1,018

可能性

1,795

567

32

701

疑い

1,188

651

55

491

総数

3,924

1,354

34

2,210

シエラレオネ

確定

2,455

924

38

725

可能性

37

0

0

123

疑い

297

190

64

31

総数

2,789

1,114

40

879

8.011

2,799

35

3,857

※ 表1のデータは、10月5日のギニア保健省とシエラレオネ保健省からの報告、10月4日のリベリア保健省による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

・ギニア
 10月第1週に約100人の新規確定例が報告され、ギニアでの感染伝播が持続しています。何週にもわたって、ギニアの3地域(流行の発生源となった地域でもある首都コナクリ、マセンタ県、ゲケドゥ県)で感染伝播が続いています。ゲケドゥ県で報告された新たな確定例と可能性例の数は、過去4週間で4~6人と安定かつ低い状況ですが、マセンタでは同時期に毎週15~71人の新規患者が報告されています。コナクリでは10月第1週(第40疫学週)に15人の新たな確定例と可能性例が報告され、感染伝播は高い状態のままです。同時期にゼレコレ県でも15人の新たな確定例と可能性例が報告されており、著明な増加となっています。東部では、コートジボアールと国境を接するロラ県でEVD症例(確定例3人)が初めて報告されています。隣接するベイラ県で前週に最初の確定例が報告されていました。

・リベリア
 リベリアでは、データ取得に影響を与えている深刻な問題が続いています。国や検査室の職員から得られた証言では、新規患者の過小報告が疑いの余地なくあることを示しており、リベリア、特に首都モンロビアの状況は週ごとに悪化し続けています。モンロビアでは、過去3週間において毎週約200人の新たな可能性例と疑い例が報告されていますが、確定例はごくわずかな報告です。これらの疑い例とされた事例の実質的な割合(本当の割合)は、おそらく本物のEVD(確定例)であり、過去3週間にわたって報告された確定例の減少は、臨床監視データと検査結果が一致する遅れを反映しています。非常に厳しい環境ながら、データ取得の問題に対処する努力が続いており、今後、数値は上方修正される可能性があります。マージビ郡では、新たな確定例と可能性例の報告数の増加が続いており、グランドケープマウント郡において最初の確定例が報告されました。ギニアのゲケドゥ県と国境を接するロファ郡では、9月最終週に12人の確定例と可能性例が報告され、先週39例発生したことと比較して新規患者発止数は減少しています。これは本当の減少と見られます。

・シエラレオネ
 シエラレオネの流行状況は、過去7週間で新規患者の報告数が増加しており、悪化し続けています。首都フリータウンに隣接しているボンバリ、ポート・ロコ、モヤンバでは、過去7週間から8週間にわたって患者の急増が報告されています。ボーやトンコリリにおいても、同時期に新たな確定例と可能性例の増加が報告されています。対照的に、カイラフン(第40疫学週、3例)とケネマ(第40疫学週、5例)では、過去4週間で新規患者の報告数がかなり減少しています。これらの地域は過去に高いレベルの感染伝播が報告されていました。対応する職員からの報告には、この減少が本物かどうか確認するためさらなる調査が必要であるが、本物であることが示唆されています。

・医療従事者の感染
 医療従事者において、エボラウイルスへの感染が多数続いており、大きな懸念となっています。10月5日現在、401人の医療従事者がエボラウイルスに感染し、232人が死亡しています(表2)。

表2. 2014年10月5日時点のギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ギニア

確定

65

30

可能性

8

8

疑い

0

0

国別総数

73

38

リベリア

確定

75

63

可能性

89

27

疑い

24

4

国別総数

188

94

シエラレオネ

確定

125

91

可能性

2

2

疑い

2

2

国別総数

129

95

ナイジェリア

確定

11

5

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

11

5

401

232

8

・地理的分布
 図1は、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国における患者の位置を示しています。以前に患者が確認された8地域(ギニア7地域、シエラレオネ1地域)において、10月5日以前の過去21日以内に新規患者は報告されていません。ギニアでは、コートジボアールと国境を接するロラ県において、最初のEVD症例(確定例3人)が報告されました。

図1:ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例の分布


2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 表3のとおり、ナイジェリア、セネガル、アメリカ合衆国(以下、米国)の3か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国から入国してきた症例が報告されています。
 ナイジェリアでは、20症例が発生して8症例が死亡しました。セネガルでは、1症例が発生しましたが、死亡例やエボラに起因するとされる新たな疑い例はありません。9月30日、WHO傘下のPAHO(汎米保健機関)は、米国における最初のEVD輸入例発生の通報を受けました。患者は西アフリカへの直近の渡航歴が有り、米国入国の約4日後の9月24日にEVDとして矛盾しない症状を呈しました。同26日に医療機関を受診、28日にテキサス州・ダラスのPresbyterian 病院に入院隔離となりました。検査検体は、ジョージア州・アトランタのCDCとテキサス州の検査施設に送付されました。結果はEVD陽性でした。
 ナイジェリアでは、すべての接触者891人(ラゴス362人、ポート・ハーコート529人)が、21日間の健康監視を終了し、新たな患者報告はありません。最後の確定例に実施された2度目のEVD検査も、9月8日に陰性であることが確認されました。セネガルでは、すべての接触者が現時点で21日間の経過観察を終え、新たな患者は報告されていません。最後の確定例に実施された2度目のEVD検査も、9月5日陰性である事が確認されました。米国では、48人の接触者が健康監視されています。

表3. 2014年10月5日時点のナイジェリア、セネガル、米国におけるEVD症例数

国名

症例定義

症例数

死亡者数

ナイジェリア

確定

19

7

可能性

1

1

疑い

0

0

国別総数

20

8

セネガル

確定

1

0

可能性

0

0

疑い

0

0

国別総数

0

0

アメリカ合衆国

確定

1

0

可能性

未報告

未報告

疑い

未報告

未報告

国別総数

1

0

22

8

※ 表3のデータは、各国の保健省からの報告による公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

別掲. コンゴ民主共和国におけるエボラ流行
 2014年10月5日の時点で、コンゴ民主共和国(DRC)において、71人のEVD患者(確定例30人、可能性例26人、疑い例15人)が報告されており、このうち8人が医療従事者で発生しています。また、71人の患者のうち43人の死亡者が報告されており、このうち8人が医療従事者です。
 816人の接触者が21日間の健康監視を終えました。305人の接触者が監視中で、全員が10月5日(この日がデータ報告の最終日)に監視を受けました。この流行は、ギニア、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネに影響を与えている流行とは関連がありません。