(No.238)

中東呼吸器症候群コロナウイルス感染症確定例報告(118)-サウジアラビア

 2014年10月12日から16日の間、サウジアラビア(KSA)の国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)に死亡者2人を含む、中東呼吸器症候群(MERS-CoV)感染確定例5人を追加で報告しました。
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

症例の詳細は以下の通りです。

1.ターイフ出身・外国籍の42歳女性看護師は、10月13日に発症し翌14日に入院しました。患者は、MERS-Cov診断確定例との接触がありました。彼女には、合併症がありますが、ラクダとの接触歴、ラクダの生乳接触歴、発症前14日以内の渡航歴はありません。現在状態は安定し隔離されています。

2.ターイフ出身の60歳男性は10月14日に発症し、同日入院しました。患者には合併症がありました。患者は8日、MERS-CoV診断確定例が透析を受けたのと同じ部屋で、透析を受けています。彼はラクダとの接触歴や、非加熱ラクダ製品の喫食歴はなく、発症までの14日以内の渡航歴もありません。発症した翌日の15日に死亡しています。

3. Hawtah Bani Tamim 市の82歳男性は10月3日発症し、Alkharj市の病院を5日に受診し、6日間同病院に入院しました。その後、11日に、リヤドの病院に転院しました。彼には合併症がありました。動物との接触歴はありませんが、ラクダ農場が密集している地域に住んでおり、発症14日以内にラクダの生乳の喫食歴がありました。発症までの14日以内の渡航歴はありません。現在状態は安定しています。

4.リヤド市出身の44歳男性は10月7日発症し、11日リヤド市内の病院に入院しました。彼には合併症がありました。動物との頻回の接触歴がありましたが、発症14日以内にラクダとの接触歴や、非加熱ラクダ製品の喫食歴はありません。発症14日以内にDammam市に渡航しています。現在ICU(集中治療室)に入院しています。

5. Al Huwaya の町出身の70歳男性は10月8日発症し、10日ターイフ市の病院に入院しました。彼には合併症がありました。動物との接触歴がありましたが、発症14日以内にラクダとの接触歴やラクダの生乳接触歴はありません。発症までの14日以内の渡航歴もありません。患者は危篤状態となりICUに入院しましたが、10月28日死亡しました。

 患者家族や濃厚接触した医療従事者の追跡調査は継続中です。

 死亡者2人を含む前述5人の症例は、11月7日更新情報で既に報告されています。それゆえ、症例と死亡数の合計は変わりません。世界充ではWHOは、少なくとも331人の関連死を含む、909人のMERS-CoV感染診断確定例を報告しています。
 現在の状況と入手可能な情報に基づいて、WHOは全ての加盟国に対して重症急性呼吸器感染症(SARI)への監視を継続することと、通常とは異なる呼吸器感染症について再調査するように勧めています。
 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を押さえるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、早い時期に患者をMERS-CoVであると診断することは常にできるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者を世話する場合には、標準予防策に加えて飛沫予防策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確診症例を世話する場合には、接触予防策および目の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行う必要があります。
 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考えられます。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという、一般的な衛生手順を厳守すべきです。

 食品衛生の習慣は遵守しなければなりません。ラクダの生乳あるいは尿を飲まないように、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。