エボラ対応のロードマップに関する状況報告16 平成26年12月3日更新
2014年12月3日WHO(世界保健機関)は、エボラ対応のロードマップに関する状況報告を更新しました。
要約
11月30日の時点で合計17145人のエボラウイルス疾患(EVD)確定例、可能性例、疑い例が感染例の発生している5か国(ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、アメリカ合衆国)と過去に患者の発生している国(ナイジェリア、セネガル、スペイン)から報告されています。死亡者数は6070人です。報告数はギニアで少し増加(77人の確定例が11月30日の週に報告)、リベリアでは不変ないしわずかな減少(43人の新規診断確定例が11月28日までの5日間で報告)、シエラレオネでは引き続き増加(537人の新規診断確定例が11月30日の週に報告)しています。これら3国での致死率は72%で、入院加療した患者のみでの致死率は60%です。
国連エボラ緊急対応ミッション(UNMMER)の目標としている患者の隔離治療率70%、エボラ関連死の安全な埋葬率70%そして来年初めまでに100%達成を目標にこれらの3か国では対策が継続されています。国家レベルでは3国ともに隔離治療が実施できるベッド数を確保できていますが、ベッド数に地域差があり、地域によっては深刻な不足状態にあります。同様に埋葬に関しても十分な能力がありますが、エボラ関連死であることの報告が完全にはなされておらず、逆にエボラ関連死でないものが多く報告されていたりします。70%の目標は地域によって達成されていません。これら3国では検体を採取すれば1日以内に検査施設にアクセスできるようになっています。これらの国では未だ困難な業務であるにもかかわらず、EVD患者との接触者として登録された人の85%以上は追跡されています。感染の連鎖を断ち切るためには感染率の低い地域でも追跡調査の能力を向上させることが必要です。
概要
エボラ対応ロードマップに関する定期報告
ロードマップの体系に沿って、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。1つは、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、1つは、初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)、もう1つは、これらの国々と隣接もしくは感染伝播が活発な地域と強い貿易関係にある国です。
1.広範囲に及ぶ申告な感染伝播が発生している国
現在合計17111人のEVD診断確定例、可能性例、疑い例と死者6055人が11月30日にギニアとシエラレオネの保健省、11月28日にリベリアの保健省から報告されています。(表1参照)
表1ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
※表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
ギニア
新たに77人の診断確定例が11月30日の週に報告されましたが前週は148人のため減少しています。10月初めからの傾向としては75人~148人/週の間でこの6週間は微増です。実質的には数値に変化なくEVD感染の状態が不変であることを示しています。過去3週間東部のンゼレコレ(最終週6人の診断確定例、その前週29人)、マセンタ(最終週15人、その前週26人)カンカン(最終週7人、その前週7人)で多くの新規発生を認めています。カンカンでは伝播が続いておりケルワネ、クルサ、キシドゥグではとくに地域住民が南東部のゲケドウ(最終週に1人の診断確定例あり)やマセンタよりも北部地域あるいは隣国のマリでの加療を望んでいることから関心を寄せている地域であります。マリへの最初の輸入例は国境に近いシギリからで11月はじめ以来当地では2人の診断確定例が最終週にあり、それ以前の7週間にも1~3人の患者が発生しています。この地域では確定診断できる施設と、治療施設がありません。サハラ砂漠南端のサヘル地域と呼ばれる地域では特に安全な埋葬に対する抵抗が強いこと、人口が多いことから容易に患者が増加することが懸念される地域です。中心部ではファラナがシエラレオネのコイナダグと接していますが過去4週間のうちに平均8人/週の患者が発生しています。首都コナクリでは11月30日のしゅうに14人の診断確定例が発生しています。近隣のコヤでは同じく15人の診断確定例が発生しており、コナクリは過去2週間とも新規患者は増加傾向です。10の県でEVDの発生が報告されており、地理的に拡大をみせています。10月1日時点と同様に9の地域で1週間以内に感染者が報告されています。12月1日の時点では14県で1週間以内に感染者が報告されています。
リベリア
過去5週間患者の発生率は9月中旬から10月中旬にかけて減少しはじめてから一定しています。111月28日までの5日間での患者は前週の78人から43人に減少しています。首都モンロビアのあるモンセラード郡では34人の診断確定例が報告されており、これは同時期の国内診断確定例の79%に相当します。ボミ郡で診断確定例2人、グランドバッサ郡で診断確定例4人、グランドケープマウント郡で診断確定例2人(その前週は21人)マージビ郡では診断確定例1人が同時期に報告されています。シエラレオネとギニアの国境に近いロファ郡では5週間新規の報告はありません。
シエラレオネ
EVDの発生は相変わらず高いままで11月30日の週には537人の診断確定例が報告されています。その前週は385人でした。もっとも患者の多い地域は首都フリータウンで202人の診断確定例が発生しています。南部を除く国内中で感染は継続しており、ボー23人、ボンバリ66人、カンビア14人、コノ15人、コイナダグ6人、モヤンバ3人、ポルトロコ94人、トンコリリ40人、西部田園地域72人となっており、報告のあるどの地域も新規診断確定例が多くなっています。とりわけモヤンバでは過去の週と比べて新規患者が多く報告されています。ただし全体としてこの地域での増加はありません。一方ケネマやカイラフンの南部地域では11月はじめより患者数は0人、1人となっています。ポンテでも過去2週間に報告例は0人です。

医療従事者の感染について
11月30日現在622人の医療従事者(HCWs)がEVDに感染しており、346人が死亡しています。総数の中にはマリの2人、ナイジェリアの11人、スペインの1人、アメリカ合衆国の3人も含まれています。それぞれのケースで暴露源を詳しく調査しています。
2.初発の症例のみ発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国では広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が生じている国からの流入してきたケースが報告されています。7人の診断確定例と1人の可能性例、うち6人死亡(5人は診断確定例、1例は可能性例)がマリで報告されています。もっとも最近のケースはマリの首都バマコで発生しており、この例は10月24日にカイで死亡した国内第1例めとの関連はありません。1例目の患者との接触者に実施した21日間の監視は終了しています。12月2日にバマコでのアウトブレイクと関連して接触者277人中219人が監視されています。
スペインではマドリードでEVD患者の治療にあたったHCWの検査が2度陰性となり退院してから42日以上経過したため終焉宣言がなされています。
アメリカ合衆国では4人の患者が発生し、1人が死亡しました。ニューヨークのHCWとテキサスの2人のHCWは2回のEVD検査が陰性となり、退院しています。全ての接触者の21日間の健康監視は終了しています。
ナイジェリアでは20人の患者が発生し8人が死亡しました。セネガルでは1人の患者が発生し、死亡しました。しかし両国とも対策が奏功しそれぞれ10月17日と10月19日に終焉宣言されています
3.エボラに暴露された際の患者の発見と対策について国レベルでの準備
EVDのアウトブレイクが悪化してきたためは患者発生のない国に持ち込まれる危険性が高まっています。十分な準備をしていればEVDの侵入は大規模な流行が起こる前に阻止できる可能性はあります。ナイジェリアとセネガルで流行を阻止できたのは十分な準備ができたおかげと考えられます。両国とも政治の強い主導、早期発見と対策、国民への啓発キャンペーン、パートナー組織の力強いサポートがあったために可能となりました。
WHO及びパートナーはサポートが必要な国として最重要に位置づけられるのはコートジボワール、ギニアビサウ、マリ、セネガルであり、それに続いて重要なのはベニン、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、ナイジェリア、南スーダン、トーゴ、を挙げています。このような優先順位は流行国との地理的関係、交易や人の移動、保健衛生システムの強さなどをもとに決められています。
要約
11月30日の時点で合計17145人のエボラウイルス疾患(EVD)確定例、可能性例、疑い例が感染例の発生している5か国(ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、アメリカ合衆国)と過去に患者の発生している国(ナイジェリア、セネガル、スペイン)から報告されています。死亡者数は6070人です。報告数はギニアで少し増加(77人の確定例が11月30日の週に報告)、リベリアでは不変ないしわずかな減少(43人の新規診断確定例が11月28日までの5日間で報告)、シエラレオネでは引き続き増加(537人の新規診断確定例が11月30日の週に報告)しています。これら3国での致死率は72%で、入院加療した患者のみでの致死率は60%です。
国連エボラ緊急対応ミッション(UNMMER)の目標としている患者の隔離治療率70%、エボラ関連死の安全な埋葬率70%そして来年初めまでに100%達成を目標にこれらの3か国では対策が継続されています。国家レベルでは3国ともに隔離治療が実施できるベッド数を確保できていますが、ベッド数に地域差があり、地域によっては深刻な不足状態にあります。同様に埋葬に関しても十分な能力がありますが、エボラ関連死であることの報告が完全にはなされておらず、逆にエボラ関連死でないものが多く報告されていたりします。70%の目標は地域によって達成されていません。これら3国では検体を採取すれば1日以内に検査施設にアクセスできるようになっています。これらの国では未だ困難な業務であるにもかかわらず、EVD患者との接触者として登録された人の85%以上は追跡されています。感染の連鎖を断ち切るためには感染率の低い地域でも追跡調査の能力を向上させることが必要です。
概要
エボラ対応ロードマップに関する定期報告
ロードマップの体系に沿って、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。1つは、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、1つは、初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)、もう1つは、これらの国々と隣接もしくは感染伝播が活発な地域と強い貿易関係にある国です。
1.広範囲に及ぶ申告な感染伝播が発生している国
現在合計17111人のEVD診断確定例、可能性例、疑い例と死者6055人が11月30日にギニアとシエラレオネの保健省、11月28日にリベリアの保健省から報告されています。(表1参照)
表1ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の発生数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
1929 |
306 |
1117 |
可能性例 |
210 |
未確定 |
210 |
|
疑い例 |
25 |
未確定 |
|
|
国別総数 |
2164 |
306 |
1327 |
|
リベリア |
確定例 |
2801 |
273 |
2日分のデータなし |
可能性例 |
1792 |
未確定 |
2日分データなし |
|
疑い例 |
3042 |
未確定 |
2日分データなし |
|
国別総数 |
7635 |
278 |
3145 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
5978 |
1455 |
1374 |
可能性例 |
79 |
未確定 |
174 |
|
疑い例 |
1255 |
未確定 |
35 |
|
国別総数 |
7312 |
1455 |
1583 |
|
総数 |
|
17111 |
2039 |
6055 |
※表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
ギニア
新たに77人の診断確定例が11月30日の週に報告されましたが前週は148人のため減少しています。10月初めからの傾向としては75人~148人/週の間でこの6週間は微増です。実質的には数値に変化なくEVD感染の状態が不変であることを示しています。過去3週間東部のンゼレコレ(最終週6人の診断確定例、その前週29人)、マセンタ(最終週15人、その前週26人)カンカン(最終週7人、その前週7人)で多くの新規発生を認めています。カンカンでは伝播が続いておりケルワネ、クルサ、キシドゥグではとくに地域住民が南東部のゲケドウ(最終週に1人の診断確定例あり)やマセンタよりも北部地域あるいは隣国のマリでの加療を望んでいることから関心を寄せている地域であります。マリへの最初の輸入例は国境に近いシギリからで11月はじめ以来当地では2人の診断確定例が最終週にあり、それ以前の7週間にも1~3人の患者が発生しています。この地域では確定診断できる施設と、治療施設がありません。サハラ砂漠南端のサヘル地域と呼ばれる地域では特に安全な埋葬に対する抵抗が強いこと、人口が多いことから容易に患者が増加することが懸念される地域です。中心部ではファラナがシエラレオネのコイナダグと接していますが過去4週間のうちに平均8人/週の患者が発生しています。首都コナクリでは11月30日のしゅうに14人の診断確定例が発生しています。近隣のコヤでは同じく15人の診断確定例が発生しており、コナクリは過去2週間とも新規患者は増加傾向です。10の県でEVDの発生が報告されており、地理的に拡大をみせています。10月1日時点と同様に9の地域で1週間以内に感染者が報告されています。12月1日の時点では14県で1週間以内に感染者が報告されています。
リベリア
過去5週間患者の発生率は9月中旬から10月中旬にかけて減少しはじめてから一定しています。111月28日までの5日間での患者は前週の78人から43人に減少しています。首都モンロビアのあるモンセラード郡では34人の診断確定例が報告されており、これは同時期の国内診断確定例の79%に相当します。ボミ郡で診断確定例2人、グランドバッサ郡で診断確定例4人、グランドケープマウント郡で診断確定例2人(その前週は21人)マージビ郡では診断確定例1人が同時期に報告されています。シエラレオネとギニアの国境に近いロファ郡では5週間新規の報告はありません。
シエラレオネ
EVDの発生は相変わらず高いままで11月30日の週には537人の診断確定例が報告されています。その前週は385人でした。もっとも患者の多い地域は首都フリータウンで202人の診断確定例が発生しています。南部を除く国内中で感染は継続しており、ボー23人、ボンバリ66人、カンビア14人、コノ15人、コイナダグ6人、モヤンバ3人、ポルトロコ94人、トンコリリ40人、西部田園地域72人となっており、報告のあるどの地域も新規診断確定例が多くなっています。とりわけモヤンバでは過去の週と比べて新規患者が多く報告されています。ただし全体としてこの地域での増加はありません。一方ケネマやカイラフンの南部地域では11月はじめより患者数は0人、1人となっています。ポンテでも過去2週間に報告例は0人です。

医療従事者の感染について
11月30日現在622人の医療従事者(HCWs)がEVDに感染しており、346人が死亡しています。総数の中にはマリの2人、ナイジェリアの11人、スペインの1人、アメリカ合衆国の3人も含まれています。それぞれのケースで暴露源を詳しく調査しています。
国名 |
症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
106 |
59 |
リベリア |
361 |
174 |
シエラレオネ |
138 |
106 |
総数 |
605 |
339 |
2.初発の症例のみ発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国では広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が生じている国からの流入してきたケースが報告されています。7人の診断確定例と1人の可能性例、うち6人死亡(5人は診断確定例、1例は可能性例)がマリで報告されています。もっとも最近のケースはマリの首都バマコで発生しており、この例は10月24日にカイで死亡した国内第1例めとの関連はありません。1例目の患者との接触者に実施した21日間の監視は終了しています。12月2日にバマコでのアウトブレイクと関連して接触者277人中219人が監視されています。
スペインではマドリードでEVD患者の治療にあたったHCWの検査が2度陰性となり退院してから42日以上経過したため終焉宣言がなされています。
アメリカ合衆国では4人の患者が発生し、1人が死亡しました。ニューヨークのHCWとテキサスの2人のHCWは2回のEVD検査が陰性となり、退院しています。全ての接触者の21日間の健康監視は終了しています。
ナイジェリアでは20人の患者が発生し8人が死亡しました。セネガルでは1人の患者が発生し、死亡しました。しかし両国とも対策が奏功しそれぞれ10月17日と10月19日に終焉宣言されています
国名 | 累積数 | 接触者調査 | |||||||
診断確定例 | 可能性例 | 疑い例 | 死亡数 | 医療従事者 | 監視中の人数 | 監視修了者 | 最終陰性日 | 陰性からの 経過日数 |
|
マリ | 7 | 1 | 0 | 6 | 25% | 227 | 206 | ― | ― |
アメリカ合衆国 | 4 | 0 | 0 | 1 | 75% | 0 | 177 | ― | ― |
3.エボラに暴露された際の患者の発見と対策について国レベルでの準備
EVDのアウトブレイクが悪化してきたためは患者発生のない国に持ち込まれる危険性が高まっています。十分な準備をしていればEVDの侵入は大規模な流行が起こる前に阻止できる可能性はあります。ナイジェリアとセネガルで流行を阻止できたのは十分な準備ができたおかげと考えられます。両国とも政治の強い主導、早期発見と対策、国民への啓発キャンペーン、パートナー組織の力強いサポートがあったために可能となりました。
WHO及びパートナーはサポートが必要な国として最重要に位置づけられるのはコートジボワール、ギニアビサウ、マリ、セネガルであり、それに続いて重要なのはベニン、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、ナイジェリア、南スーダン、トーゴ、を挙げています。このような優先順位は流行国との地理的関係、交易や人の移動、保健衛生システムの強さなどをもとに決められています。