エボラ対応のロードマップに関する状況報告17 平成26年12月10日更新
2014年12月10日WHO(世界保健機関)は、エボラ対応のロードマップに関する状況報告を更新しました。
要約
12月07日の時点で合計17942人のエボラウイルス疾患(EVD)確定例、可能性例、疑い例が感染例の発生している5か国(ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、アメリカ合衆国)と過去に患者の発生している国(ナイジェリア、セネガル、スペイン)から報告されています。死亡者数は6388人です。報告数はギニアで少し増加(12月7日時点で103人)、リベリアで減少(12月3日時点で29人)、シエラレオネで依然として増加(12月7日時点で397人)となっています。これら3国の総数で見た最終的な致死率は76%、入院患者の死亡率は61%となっています。国連エボラ緊急対応ミッション(UNMMER)の目標としている患者の隔離治療率100%、エボラ関連死の安全な埋葬率100%を来年初めまでに達成する目標に沿って、当該3か国では対策が継続されています。国家レベルでは3国ともに隔離治療が実施できるベッド数を確保できていますが、ベッド数に地域差があり、地域によっては深刻な不足状態にあります。同様に埋葬に関しても十分な能力がありますが、エボラ関連死であることの報告が完全にはなされておらず、逆にエボラ関連死でないものが多く報告されていたりします。一部の地域ではまだ不十分である可能性もあります。これら3国では検体を採取すれば1日以内に検査施設にアクセスできるようになっています。感染伝搬が盛んで住民の抵抗が強いこれらの地域では、追跡調査は未だ困難な業務であるにもかかわらず、EVD患者との接触者として登録された人の80%以上は追跡されています。感染の連鎖を断ち切るためには感染率の中等度ないし低い地域でも追跡調査の能力を向上させることが必要となります。
概要
エボラ対応ロードマップに関する定期報告
保健省により報告される公式情報に基づく疫学状況の検証、および、利用可能なロードマップの中心的指標に対して取られる対策の評価が含まれます。疫学状況に関する情報の利用と質の改善のための持続的努力が継続されています。
ロードマップの体系に沿って、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。1つは、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、1つは、初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)、もう1つは、これらの国々と隣接もしくは感染伝播が活発な地域と強い貿易関係にある国です。
1.広範囲に及ぶ申告な感染伝播が発生している国
現在合計17908人のEVD診断確定例、可能性例、疑い例と死者6055人が12月07日にギニアとシエラレオネの保健省、12月03日にリベリアの保健省から報告されています。(表1参照)
ギニア
新たに診断確定例、可能性例を含めて103人の患者が12月7日の週に報告されました。10月の初めから少し増加の傾向を辿っています。過去7週間の報告は診断確定例が 75人~148人であり、この相対的に安定した発生数は、ギニアにおけるEVD感染様式の重要な変化を見えなくしている。過去3週間東部のンゼレコレ(最終週4人の診断確定例)と減少傾向、近隣のマセンタ(最終週15人、その前週15人)では多数のままであり、また接触者の追跡調査にも抵抗が起こっています。ファラナハ(診断確定例と可能性例で8人)カンカン(最終週4人、その前週7人)ケルワネ(最終週4人、前週0人)キシドゥグ(最終週5人、その前週1人)で新規発生を認めています。 中部、北部のいくつかの地域では感染が続いています。これらの地域住民は、南東部のゲケドウ(最終週に2人の診断確定例、その前週は7人))やマセンタの現存する医療機関より、北部地域あるいは隣国のマリでの加療を望んでいることから、持続的な感染が特に懸念されます。マリへの最初の輸入例は国境に近いシギリからで11月はじめ以来当地では3人の診断確定例が最終週にあり、それ以前の8週間にも1~3人の患者が発生しています。この地域では確定診断できる施設と、治療施設がありません。サハラ砂漠南端のサヘル地域と呼ばれる地域では特に安全な埋葬に対する抵抗が強いこと、人口が多いことから容易に患者が増加することが懸念される地域です。首都コナクリでは12月07日の週に17人の診断確定例が発生しています。近隣のコヤでは同じく18人の診断確定例が発生しており、コナクリは過去3週間とも新規患者は増加傾向です。テリメレでは過去12週間で初めて患者の報告がありました。10の県でEVDの発生が報告されており、地理的に拡大をみせています。10月1日時点と同様に9の地域で1週間以内に感染者が報告されています。12月1日の時点では14県で1週間以内に感染者が報告されています。
リベリア
過去4週間患者の発生率は、9月中旬から10月中旬にかけて減少しています。5地域で12月3日までの3日間での診断確定患者は29人となっています。首都モンロビアのあるモンセラード郡では15人の診断確定例が報告されており、これは同時期の国内診断確定例の半数以上に相当します。ボミ郡で診断確定例1人、グランドバッサ郡で診断確定例7人、グランドケープマウント郡で診断確定例5人、シノエ郡で診断確定例1人が同時期に報告されています。シエラレオネとギニアの国境に近いロファ郡では6週間新規の報告はありません。
シエラレオネ
EVDの発生は相変わらず高いままで12月07日の週には397人の診断確定例(他の2国の合計の3倍数です)が報告されています。もっとも患者の多い地域は首都フリータウンで133人の診断確定例で、これはすべての診断確定例の3分の1に相当します。南部を除く国内中で感染は継続しており、ボー14人、ボンバリ57人、カンビア10人、コノ24人、コイナダグ2人、モヤンバ10人、ポルトロコ76人、トンコリリ13人、西部田園地域57人となっており、報告のあるどの地域も新規診断確定例が多くなっています。一方ケネマやカイラフンの南部地域では11月はじめより患者数は0人、1人となっています。プジェフンも新たな患者発生は認めていません。ポンテは過去2週間に報告例は0人でしたが12月7日の週に1人報告されています。
※表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD症例の地理的分布

医療従事者
12月7日の週までに639人の医療従事者がEVDに感染しており、うち349人が死亡しています。その数値にはマリでの2人、ナイジェリアでの11人、スペインでの1人、アメリカ合衆国での3人を含んでいます。感染経路の精査が強力に実施されています。当初の症例は治療センター外での感染の割合が高くなっています。そのことからも感染防御とコントロール対策の再強化がEVD治療施設のみでなく、すべての医療機関で実施されています。WHOは個人防護(PPE)のガイドラインを再検討し、現在のEVDアウトブレイクにみあったバージョンをアップしています。すべての医療従事者はPPE装着の訓練とその使用者に対する助言がEVDの医療に携わる者にとっては必須です。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
※表2のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
現在、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国から入国してきた患者が報告されています(表3参照)
マリでは、6人の死亡者(確定例5人、可能性例1人)を含む合計8人の患者(確定例7人、可能性例1人)が報告されました。直近の7人の患者は、マリの首都バマコからの報告であり、10月24日に死亡した初発患者との関連はありません。初発患者との接触者は、全員が21日間の健康監視を終了しました。12月07日の時点で、バマコでの発生に関連した接触者の227人中219人が健康監視されています。
アメリカ合衆国では、1人の死亡を含む4人のEVD患者が報告されました。ニューヨークの医療従事者1人、テキサスの医療従事者2人は、2度のEVD陰性が確認され、すでに退院しています。この国におけるすべての接触者は、21日間の健康監視を終了しました。
表3.マリ、アメリカ合衆国におけるEVD症例数と死亡者数
※ 表3のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
要約
12月07日の時点で合計17942人のエボラウイルス疾患(EVD)確定例、可能性例、疑い例が感染例の発生している5か国(ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、アメリカ合衆国)と過去に患者の発生している国(ナイジェリア、セネガル、スペイン)から報告されています。死亡者数は6388人です。報告数はギニアで少し増加(12月7日時点で103人)、リベリアで減少(12月3日時点で29人)、シエラレオネで依然として増加(12月7日時点で397人)となっています。これら3国の総数で見た最終的な致死率は76%、入院患者の死亡率は61%となっています。国連エボラ緊急対応ミッション(UNMMER)の目標としている患者の隔離治療率100%、エボラ関連死の安全な埋葬率100%を来年初めまでに達成する目標に沿って、当該3か国では対策が継続されています。国家レベルでは3国ともに隔離治療が実施できるベッド数を確保できていますが、ベッド数に地域差があり、地域によっては深刻な不足状態にあります。同様に埋葬に関しても十分な能力がありますが、エボラ関連死であることの報告が完全にはなされておらず、逆にエボラ関連死でないものが多く報告されていたりします。一部の地域ではまだ不十分である可能性もあります。これら3国では検体を採取すれば1日以内に検査施設にアクセスできるようになっています。感染伝搬が盛んで住民の抵抗が強いこれらの地域では、追跡調査は未だ困難な業務であるにもかかわらず、EVD患者との接触者として登録された人の80%以上は追跡されています。感染の連鎖を断ち切るためには感染率の中等度ないし低い地域でも追跡調査の能力を向上させることが必要となります。
概要
エボラ対応ロードマップに関する定期報告
保健省により報告される公式情報に基づく疫学状況の検証、および、利用可能なロードマップの中心的指標に対して取られる対策の評価が含まれます。疫学状況に関する情報の利用と質の改善のための持続的努力が継続されています。
ロードマップの体系に沿って、国別の報告は3つのカテゴリーに分類されます。1つは、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、1つは、初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国(マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)、もう1つは、これらの国々と隣接もしくは感染伝播が活発な地域と強い貿易関係にある国です。
1.広範囲に及ぶ申告な感染伝播が発生している国
現在合計17908人のEVD診断確定例、可能性例、疑い例と死者6055人が12月07日にギニアとシエラレオネの保健省、12月03日にリベリアの保健省から報告されています。(表1参照)
ギニア
新たに診断確定例、可能性例を含めて103人の患者が12月7日の週に報告されました。10月の初めから少し増加の傾向を辿っています。過去7週間の報告は診断確定例が 75人~148人であり、この相対的に安定した発生数は、ギニアにおけるEVD感染様式の重要な変化を見えなくしている。過去3週間東部のンゼレコレ(最終週4人の診断確定例)と減少傾向、近隣のマセンタ(最終週15人、その前週15人)では多数のままであり、また接触者の追跡調査にも抵抗が起こっています。ファラナハ(診断確定例と可能性例で8人)カンカン(最終週4人、その前週7人)ケルワネ(最終週4人、前週0人)キシドゥグ(最終週5人、その前週1人)で新規発生を認めています。 中部、北部のいくつかの地域では感染が続いています。これらの地域住民は、南東部のゲケドウ(最終週に2人の診断確定例、その前週は7人))やマセンタの現存する医療機関より、北部地域あるいは隣国のマリでの加療を望んでいることから、持続的な感染が特に懸念されます。マリへの最初の輸入例は国境に近いシギリからで11月はじめ以来当地では3人の診断確定例が最終週にあり、それ以前の8週間にも1~3人の患者が発生しています。この地域では確定診断できる施設と、治療施設がありません。サハラ砂漠南端のサヘル地域と呼ばれる地域では特に安全な埋葬に対する抵抗が強いこと、人口が多いことから容易に患者が増加することが懸念される地域です。首都コナクリでは12月07日の週に17人の診断確定例が発生しています。近隣のコヤでは同じく18人の診断確定例が発生しており、コナクリは過去3週間とも新規患者は増加傾向です。テリメレでは過去12週間で初めて患者の報告がありました。10の県でEVDの発生が報告されており、地理的に拡大をみせています。10月1日時点と同様に9の地域で1週間以内に感染者が報告されています。12月1日の時点では14県で1週間以内に感染者が報告されています。
リベリア
過去4週間患者の発生率は、9月中旬から10月中旬にかけて減少しています。5地域で12月3日までの3日間での診断確定患者は29人となっています。首都モンロビアのあるモンセラード郡では15人の診断確定例が報告されており、これは同時期の国内診断確定例の半数以上に相当します。ボミ郡で診断確定例1人、グランドバッサ郡で診断確定例7人、グランドケープマウント郡で診断確定例5人、シノエ郡で診断確定例1人が同時期に報告されています。シエラレオネとギニアの国境に近いロファ郡では6週間新規の報告はありません。
シエラレオネ
EVDの発生は相変わらず高いままで12月07日の週には397人の診断確定例(他の2国の合計の3倍数です)が報告されています。もっとも患者の多い地域は首都フリータウンで133人の診断確定例で、これはすべての診断確定例の3分の1に相当します。南部を除く国内中で感染は継続しており、ボー14人、ボンバリ57人、カンビア10人、コノ24人、コイナダグ2人、モヤンバ10人、ポルトロコ76人、トンコリリ13人、西部田園地域57人となっており、報告のあるどの地域も新規診断確定例が多くなっています。一方ケネマやカイラフンの南部地域では11月はじめより患者数は0人、1人となっています。プジェフンも新たな患者発生は認めていません。ポンテは過去2週間に報告例は0人でしたが12月7日の週に1人報告されています。
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の 症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
2051 |
321 |
1207 |
可能性例 |
221 |
未報告 |
221 |
|
疑い例 |
20 |
未報告 |
0 |
|
国別総数 |
2292 |
321 |
1428 |
|
リベリア |
確定例 |
2830 |
225 |
未確定 |
可能性例 |
1814 |
未報告 |
未確定 |
|
疑い例 |
3075 |
未報告 |
未確定 |
|
国別総数 |
7719 |
225 |
3177 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
6375 |
1319 |
1559 |
可能性例 |
79 |
未報告 |
174 |
|
疑い例 |
1443 |
未報告 |
35 |
|
国別総数 |
7897 |
1319 |
1768 |
|
総数 |
17908 |
1865 |
6373 |
※表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD症例の地理的分布

医療従事者
12月7日の週までに639人の医療従事者がEVDに感染しており、うち349人が死亡しています。その数値にはマリでの2人、ナイジェリアでの11人、スペインでの1人、アメリカ合衆国での3人を含んでいます。感染経路の精査が強力に実施されています。当初の症例は治療センター外での感染の割合が高くなっています。そのことからも感染防御とコントロール対策の再強化がEVD治療施設のみでなく、すべての医療機関で実施されています。WHOは個人防護(PPE)のガイドラインを再検討し、現在のEVDアウトブレイクにみあったバージョンをアップしています。すべての医療従事者はPPE装着の訓練とその使用者に対する助言がEVDの医療に携わる者にとっては必須です。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
121 |
62 |
リベリア |
363 |
174 |
シエラレオネ |
138 |
106 |
総数 |
622 |
342 |
※表2のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
現在、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国から入国してきた患者が報告されています(表3参照)
マリでは、6人の死亡者(確定例5人、可能性例1人)を含む合計8人の患者(確定例7人、可能性例1人)が報告されました。直近の7人の患者は、マリの首都バマコからの報告であり、10月24日に死亡した初発患者との関連はありません。初発患者との接触者は、全員が21日間の健康監視を終了しました。12月07日の時点で、バマコでの発生に関連した接触者の227人中219人が健康監視されています。
アメリカ合衆国では、1人の死亡を含む4人のEVD患者が報告されました。ニューヨークの医療従事者1人、テキサスの医療従事者2人は、2度のEVD陰性が確認され、すでに退院しています。この国におけるすべての接触者は、21日間の健康監視を終了しました。
表3.マリ、アメリカ合衆国におけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
確定例 |
可能性例 |
疑い例 |
死亡者数 |
医療従事者の割合 |
健康監視中の接触者数 |
マリ |
7 |
1 |
0 |
6 |
25% |
26 |
アメリカ合衆国 |
4 |
0 |
0 |
1 |
75% |
0 |
※ 表3のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。