エボラ出血熱の流行状況21 平成27年1月7日更新
2015年1月7日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。
ギニアでは、報告された患者数の変動が続いていますが、発生数の明らかな低下傾向はありません。EVD発生の地理的拡大が続いています。フリア県では初めて2人の診断確定例が発生しました。リベリアにおける発生率は低下しており、シエラレオネは横ばいの状態ですが、同国西部地域では伝播率は高いままです。
国連エボラ緊急対策ミッション(UNMEER)は、全てのEVD患者(100%)の隔離および治療という2個の目標を掲げ、2015年1月1日迄に安全で尊厳のある埋葬の100%実施を、3か国において遂行しています。
深刻な感染伝播が発生している国々では、隔離と治療に関する十分な受け入れ能力は有しており、収容能力(治療用ベッド)は登録されている診断確定例と可能性例の2倍以上となっています。しかしベッドと患者の偏在、症例数の過小評価のためUNMEERの掲げている目標は地域によっては達成できていません。どの地域に於いても需要に見合った受け入れ体制を確保するため小さな治療施設を急ぎ配置する事が、益々重要視されつつあります。
同様にEVDによる死者数の過少評価されており、UNMEERの目標である100%の安全な埋葬には至っていません。
さらにUNMEERの2つの目標以外に、厳格な接触者追跡調査、検査機関へのアクセス、および地域活動など、いくつかの重要な局面が存在しています。
ギニア、リベリア、シエラレオネでは登録された接触者の90%以上は監視されていますが、多くの地域では個々の接触者の監視率は低くなっています。伝播率が低くなってきた地域では、特に伝播の連鎖を断ち切るために接触者の追跡調査が必須です。
3か国では23ヶ所、診断確定のための検査施設がおかれていますが、さらに5ヶ所が計画されています。
入院患者の死亡率(予後が判明している入院患者から計算されたもの)は3か国で約60%となっています。
3か国での医療従事者の感染数は820人で、内488人が死亡しています。
EVDの対策のいろいろな要素については、安全な埋葬から接触者の追跡調査まで、対策の主幹を担い、活発に従事している感染地の住民に負うところが多い。UNICEFは特にこの面で指導力を発揮しています。現在ギニアの87%、リベリアの100%、シエラレオネの57%の地域で活動をモニターするシステムができています。
1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
現在、ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国で診断確定例、可能性例合わせて20000人以上の患者が発生しており(表1)8000人以上が死亡しています。(死亡数は過小評価)
診断確定例と可能性例の累積数の階層分析では、男女ほぼ同数となっています。14歳以下の小児と比較して15歳~44歳までの年齢層を見るとほぼ3倍数となっています。(10万人あたり33人対10万人当たり98人)45歳以上の人は10万人当たり125人となっており小児の約4倍となっています。診断確定例、可能性例合わせて人口10万人当たりギニアは26人、リベリアは206人、シエラレオネは170人となっています。
ギニア
2015年1月4までの週は、診断確定例が74人となっています。増減傾向は何とも言えません(不明)。地理的にはEVDは拡がっており、特に西部のフリア県では初めて4人の患者が報告されました。19の地域で診断確定例、可能性例合わせて同期間に21人となっています。コナクリでは感染数が最も多く24人、次いで近隣のドゥブレカで16人の診断確定例が、1月4日迄の1週間にそれぞれ発生しています。コートジボワールとの国境に近い東部のロラでは12人の診断確定例が報告されています。以前に患者の報告されていた6地域では、1月4日に至る過去3週間では診断確定例あるいは可能性例の報告はありませんでした。
リベリア
新規診断確定例は昨年の8月~9月にかけての300人/週のピーク時から、2015年1月2日までの5日間では、8人の診断確定例と、40人の可能性例の発生までに減少しつつあります。首都モンロビアのあるモンセラード郡では同国でもっとも患者数が多く、6人の診断確定例と33人の可能性例が1月2日までの5日間で発生しています。15の内12地域で1月2日までの5日間で診断確定例の報告はありませんでした。
シエラレオネ
シエラレオネでは患者発生は横ばいになっています。しかしながら2015年の1月4日までの週に248人の診断確定例が報告されています。現在、最も感染者の多い国のままです。
同国の西部は最も伝播の激しい所です。首都フリータウンでは93人診断確定例が報告されています。またその近隣のポルトロコでは41人、ウエスタン・ルーラルでは50人の診断確定例がそれぞれ1月4日までの1週間で報告されています。14地区の内11地区で同時期に診断確定例が報告されています。
ギニアとの国境に近い東部のコノ地区では最終週に32人、過去3週間には84人の診断確定例が報告されています。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における男女別・年齢別症例数
※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。*性別データがないものは除きます。♯年齢データがないものは除きます。

※ 図のデータは、各国からの状況報告に基づいています。地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域につい てもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の境界設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その 国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。
医療従事者
2015年1月4日迄に医療従事者は838人がEVDに罹患し、そのうち495人が死亡しています。先週の報告数が678人であったのに対し、数が著しく増加していますがこれはシエラレオネでの流行開始からの感染医療従事者数の追加報告によるものです。過去2週間のうちに感染者数が一気に増加したのではありません。
表3. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
※ 表3のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
現在、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
英国では2014年12月29日にスコットランドのグラスゴーでEVDと診断確定例が発生しました。患者はシエラレオネのETC(エボラ出血熱治療センター)でボランティアとして医療従事していました。ロンドンで隔離治療をうけています。患者と接触の可能性のあった人は調査されています。感染リスクの高い接触者は同定されていません。
マリでは、6人の死亡者を含む合計8人の患者が報告されました。直近の患者7人は、首都バマコからの報告であり、10月24日に同国のKayes(カイ)で死亡した初発患者との関連はありません。最後に診断確定された患者は、12月6日に2回目の検査で陰性が確認され、12月11日に退院しました。カイで発生した患者とバマコで発生した患者との接触者は、全員が21日間の健康監視を終了しました。
マリ,英国におけるEVD症例数と死亡者数
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 7 January 2015
http://apps.who.int/ebola/en/status-outbreak/situation-reports/
ebola-situation-report-7-january-2015
ギニアでは、報告された患者数の変動が続いていますが、発生数の明らかな低下傾向はありません。EVD発生の地理的拡大が続いています。フリア県では初めて2人の診断確定例が発生しました。リベリアにおける発生率は低下しており、シエラレオネは横ばいの状態ですが、同国西部地域では伝播率は高いままです。
国連エボラ緊急対策ミッション(UNMEER)は、全てのEVD患者(100%)の隔離および治療という2個の目標を掲げ、2015年1月1日迄に安全で尊厳のある埋葬の100%実施を、3か国において遂行しています。
深刻な感染伝播が発生している国々では、隔離と治療に関する十分な受け入れ能力は有しており、収容能力(治療用ベッド)は登録されている診断確定例と可能性例の2倍以上となっています。しかしベッドと患者の偏在、症例数の過小評価のためUNMEERの掲げている目標は地域によっては達成できていません。どの地域に於いても需要に見合った受け入れ体制を確保するため小さな治療施設を急ぎ配置する事が、益々重要視されつつあります。
同様にEVDによる死者数の過少評価されており、UNMEERの目標である100%の安全な埋葬には至っていません。
さらにUNMEERの2つの目標以外に、厳格な接触者追跡調査、検査機関へのアクセス、および地域活動など、いくつかの重要な局面が存在しています。
ギニア、リベリア、シエラレオネでは登録された接触者の90%以上は監視されていますが、多くの地域では個々の接触者の監視率は低くなっています。伝播率が低くなってきた地域では、特に伝播の連鎖を断ち切るために接触者の追跡調査が必須です。
3か国では23ヶ所、診断確定のための検査施設がおかれていますが、さらに5ヶ所が計画されています。
入院患者の死亡率(予後が判明している入院患者から計算されたもの)は3か国で約60%となっています。
3か国での医療従事者の感染数は820人で、内488人が死亡しています。
EVDの対策のいろいろな要素については、安全な埋葬から接触者の追跡調査まで、対策の主幹を担い、活発に従事している感染地の住民に負うところが多い。UNICEFは特にこの面で指導力を発揮しています。現在ギニアの87%、リベリアの100%、シエラレオネの57%の地域で活動をモニターするシステムができています。
1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
現在、ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国で診断確定例、可能性例合わせて20000人以上の患者が発生しており(表1)8000人以上が死亡しています。(死亡数は過小評価)
診断確定例と可能性例の累積数の階層分析では、男女ほぼ同数となっています。14歳以下の小児と比較して15歳~44歳までの年齢層を見るとほぼ3倍数となっています。(10万人あたり33人対10万人当たり98人)45歳以上の人は10万人当たり125人となっており小児の約4倍となっています。診断確定例、可能性例合わせて人口10万人当たりギニアは26人、リベリアは206人、シエラレオネは170人となっています。
ギニア
2015年1月4までの週は、診断確定例が74人となっています。増減傾向は何とも言えません(不明)。地理的にはEVDは拡がっており、特に西部のフリア県では初めて4人の患者が報告されました。19の地域で診断確定例、可能性例合わせて同期間に21人となっています。コナクリでは感染数が最も多く24人、次いで近隣のドゥブレカで16人の診断確定例が、1月4日迄の1週間にそれぞれ発生しています。コートジボワールとの国境に近い東部のロラでは12人の診断確定例が報告されています。以前に患者の報告されていた6地域では、1月4日に至る過去3週間では診断確定例あるいは可能性例の報告はありませんでした。
リベリア
新規診断確定例は昨年の8月~9月にかけての300人/週のピーク時から、2015年1月2日までの5日間では、8人の診断確定例と、40人の可能性例の発生までに減少しつつあります。首都モンロビアのあるモンセラード郡では同国でもっとも患者数が多く、6人の診断確定例と33人の可能性例が1月2日までの5日間で発生しています。15の内12地域で1月2日までの5日間で診断確定例の報告はありませんでした。
シエラレオネ
シエラレオネでは患者発生は横ばいになっています。しかしながら2015年の1月4日までの週に248人の診断確定例が報告されています。現在、最も感染者の多い国のままです。
同国の西部は最も伝播の激しい所です。首都フリータウンでは93人診断確定例が報告されています。またその近隣のポルトロコでは41人、ウエスタン・ルーラルでは50人の診断確定例がそれぞれ1月4日までの1週間で報告されています。14地区の内11地区で同時期に診断確定例が報告されています。
ギニアとの国境に近い東部のコノ地区では最終週に32人、過去3週間には84人の診断確定例が報告されています。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の 症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
2471 |
344 |
1,499 |
可能性例 |
282 |
未報告 |
282 |
|
疑い例 |
22 |
未報告 |
0 |
|
国別総数 |
2775 |
344 |
1,781 |
|
リベリア |
確定例 |
3118 |
70 |
未確定 |
可能性例 |
1816 |
未報告 |
未確定 |
|
疑い例 |
3223 |
未報告 |
未確定 |
|
国別総数 |
8157 |
70 |
3496 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
7602 |
900 |
2,577 |
可能性例 |
287 |
未報告 |
208 |
|
疑い例 |
1891 |
未報告 |
158 |
|
国別総数 |
9780 |
900 |
2,943 |
|
総数 |
20712 |
1314 |
8220 |
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における男女別・年齢別症例数
国名 |
症例数 |
||||
性別* (人口10万人対) |
年齢別♯ (人口10万人対) |
||||
男性 |
女性 |
0-14歳 |
15-44歳 |
45歳以上 |
|
ギニア |
1309 |
1410 |
431 |
1,539 |
727 |
(24) |
(26) |
(9) |
(33) |
(47) |
|
リベリア |
2,538 |
2,444 |
831 |
2,653 |
1,015 |
(128) |
(124) |
(48) |
(155) |
(190) |
|
シエラレオネ |
3,891 |
4,151 |
1,663 |
4,570 |
1,799 |
(136) |
(143) |
(69) |
(177) |
(243) |
|
総数 |
7,738 |
8005 |
2,925 |
8,762 |
3,541 |
(75) |
(78) |
(33) |
(98) |
(125) |

※ 図のデータは、各国からの状況報告に基づいています。地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域につい てもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の境界設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その 国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。
医療従事者
2015年1月4日迄に医療従事者は838人がEVDに罹患し、そのうち495人が死亡しています。先週の報告数が678人であったのに対し、数が著しく増加していますがこれはシエラレオネでの流行開始からの感染医療従事者数の追加報告によるものです。過去2週間のうちに感染者数が一気に増加したのではありません。
表3. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
154 |
89 |
リベリア |
370 |
178 |
シエラレオネ |
296 |
221 |
総数 |
820 |
488 |
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
現在、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
英国では2014年12月29日にスコットランドのグラスゴーでEVDと診断確定例が発生しました。患者はシエラレオネのETC(エボラ出血熱治療センター)でボランティアとして医療従事していました。ロンドンで隔離治療をうけています。患者と接触の可能性のあった人は調査されています。感染リスクの高い接触者は同定されていません。
マリでは、6人の死亡者を含む合計8人の患者が報告されました。直近の患者7人は、首都バマコからの報告であり、10月24日に同国のKayes(カイ)で死亡した初発患者との関連はありません。最後に診断確定された患者は、12月6日に2回目の検査で陰性が確認され、12月11日に退院しました。カイで発生した患者とバマコで発生した患者との接触者は、全員が21日間の健康監視を終了しました。
マリ,英国におけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
確定例 |
可能性例 |
疑い例 |
死亡者数 |
医療従事者の割合 |
健康監視中の接触者数 |
21日間の健康監視終了者数 |
最新患者検査陰性確定日* |
*よりの経過日数 |
マリ |
7 |
1 |
0 |
6 |
25% |
0 |
433 |
2014/12/6 |
31 |
英国 |
1 |
0 |
0 |
0 |
100% |
|
|
|
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 7 January 2015
http://apps.who.int/ebola/en/status-outbreak/situation-reports/
ebola-situation-report-7-january-2015