エボラ出血熱の流行状況22 平成27年1月14日更新
2015年1月14日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。
要約
ギニアは、2014年8月17日末の週以来、EVDの新規確定患者数が最も低い週であったことを報告しました。リベリアにおける患者発生数は低い状態が続いており、2015年1月11日末の週の最後の2日間は、確認された患者はいませんでした。また、患者数は、2014年6月第1週以来の最低数となっています。シエラレオネでは、1月第2週に患者発生数が減少していることが報告され、2014年8月31日末の週以来、新規患者数が最低数を記録しました。
ギニア、リベリア、シエラレオネでは、患者を隔離して治療するために、確定患者、可能性例患者の2倍以上のベッドを充てられる十分な受け入れ能力を備えています。しかし、ベッドと患者の地理的な不均等分布や患者数が過小報告されているため、いくつかの地域では、EVD患者の隔離が完全ではないことを示唆しています。
同様に、各国は死因がEVDと判明している患者については全てを埋葬する受け入れ能力を整えましたが、報告に上がらない死亡者の存在は、全ての埋葬が安全ではないということを示唆しています。
流行3か国では、多くの地域でEVD患者に対する接触者数は予想されるよりも少なくなっていますが、登録された接触者の84~99%以上は健康監視されていると報告しています。感染伝播の割合が低くなってきた地域では、厳格な接触者の追跡が流行の連鎖を遮断することが不可欠となります。1月11日末の週では、ギニアにおいて新しく確認された患者の15%が既知の接触者からのものでした(リベリアとシエラレオネでは同種の情報は利用できていません)。
現在、流行3か国には27か所の検査施設があり、要請に応えるためにさらに4か所の開設が予定されています。
入院患者の中での致死率(信頼のある記録に基づく全入院患者から計算された結果)は、流行3か国でおよそ57~60%です。
これまでに、流行3か国から医療従事者の感染が825人報告されており、このうち493人が死亡しています。
安全な埋葬から接触者の追跡まで、EVD対策のあらゆる要素が感染流行地域で対策を主導するために、地域活動を積極的に行う人々の手に委ねられています。これまでのところ、ギニアの38地域のうち33 地域(87%)で、リベリアでは全地域で、シエラレオネでは14地域のうち8地域(57%)で、地域社会での参加活動の状況を確認する拠点を設置しました。
1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国において、診断確定例、可能性例、疑い例を合わせて21,261人の患者が発生しており、8,414人が死亡しています(表1)。なお、死亡者数は過小報告されています。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
※表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
確定例と可能性例の累計に関する階層別解析では、男女の患者数はほぼ同数であることが示されています(表2)。人口10万対の患者発生数を15歳未満の小児と比較したとき、15歳から44歳までの成人では約3倍(35:101)、45歳以上の成人では約4倍(35:130)となっています。
人口10万対の患者発生数は、ギニアでは26、リベリアでは210、シエラレオネでは176となっています。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における男女別・年齢別症例数
※表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
*性別データがないものは除きます。
♯年齢データがないものは除きます。
ギニア
2015年1月11日迄の週に、42人の診断確定例が報告されました。第2週の患者発生数は2014年8月17日末の週以来の低い状態で、首都コナクリでは2014年11月後半以来の低い状態です。今回の報告期間中に、8地域で確定例および可能性例が報告されています。
12人の確定例が報告されたForecariahは最も発生数が多い地域で、次いで9人の確定例が報告されたコナクリとなっています。Friaは、1月11日の週に報告はありませんでしたが、前週に本年最初の患者2人が報告されています。
以前に患者が報告されていた4地域(流行発生地であるGueckedouを含む)では、1月11日に至る過去3週間では診断確定例あるいは可能性例の報告はありませんでした。
リベリア
新規患者は、昨年の8月~9月のピーク時の300人/週のピーク時から、2015年1月11日までの7日間では、8人の診断確定例となっています。
首都モンロビアのあるモンセラード郡は、患者の報告が続いています。1月11日までの7日間に、モンセラード地域のGrand Cape Mountで4人の診断確定例が報告されています。ギニアのGueckedouと国境を接するLofaでは、患者報告が78日間ありません。
シエラレオネ
2015年1月11日末の週に、新たに184人の診断確定例が報告されています。患者発生数は減少していますが、最も感染者の多い国となっています。
同国の西部が最も感染伝播の激しい地域です。首都フリータウンでは、59人の診断確定例が報告されています。また、その近隣のポートロコでは41人、ウエスタン・ルーラルでは31人の診断確定例が、それぞれ1月 11日までの1週間に報告されています。14地区のうち、10地区で同時期に診断確定例が報告されています。
ギニアのGueckedouと国境を接するカイラフンでは、患者報告が30日間ありません。ポートロコとギニア地区に接したKambiaでは17人の診断確定例が報告されています。
ギニアと国境を接する同国の東部では、同時期に14人の診断確定例が報告されています。
図1. ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD患者の分布図

※図のデータは、各国からの状況報告に基づいています。地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域についてもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の境界設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その 国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。
医療従事者
2015年1月11日までに、現在もしくは以前流行があった国全部で、医療従事者は843人がEVDに罹患し、このうち500人が死亡しています。
表3. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
※表3のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
英国では、2014年12月29日にスコットランドのグラスゴーでEVD診断確定例が確認されました。患者は、シエラレオネのETC(エボラ出血熱治療センター)でボランティアとして働いていた医療従事者です。患者は隔離され、ロンドンの医療機関で治療を受けています。公衆衛生当局は予防的手段(念のため)として、可能性のある接触者全員について調査を行っています。ハイリスクの接触者は確認されていません。
マリでは、6人の死亡者を含む8人の診断確定例が報告されています。最近の7人はマリの首都バマコで報告されており、2014年10月24日にカイで死亡した初発患者との関連はありません。最後の診断確定例は2014年12月6日に2度目の検査で陰性が確認されており、12月11日に退院しています。カイの初発患者とバマコで発生した患者の接触者は、全員が21日間の健康監視期間を終了しました。
表4. マリ、英国におけるEVD症例数と死亡者数
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 14 January 2015
http://apps.who.int/ebola/en/status-outbreak/situation-reports/
ebola-situation-report-14-january-2015
要約
ギニアは、2014年8月17日末の週以来、EVDの新規確定患者数が最も低い週であったことを報告しました。リベリアにおける患者発生数は低い状態が続いており、2015年1月11日末の週の最後の2日間は、確認された患者はいませんでした。また、患者数は、2014年6月第1週以来の最低数となっています。シエラレオネでは、1月第2週に患者発生数が減少していることが報告され、2014年8月31日末の週以来、新規患者数が最低数を記録しました。
ギニア、リベリア、シエラレオネでは、患者を隔離して治療するために、確定患者、可能性例患者の2倍以上のベッドを充てられる十分な受け入れ能力を備えています。しかし、ベッドと患者の地理的な不均等分布や患者数が過小報告されているため、いくつかの地域では、EVD患者の隔離が完全ではないことを示唆しています。
同様に、各国は死因がEVDと判明している患者については全てを埋葬する受け入れ能力を整えましたが、報告に上がらない死亡者の存在は、全ての埋葬が安全ではないということを示唆しています。
流行3か国では、多くの地域でEVD患者に対する接触者数は予想されるよりも少なくなっていますが、登録された接触者の84~99%以上は健康監視されていると報告しています。感染伝播の割合が低くなってきた地域では、厳格な接触者の追跡が流行の連鎖を遮断することが不可欠となります。1月11日末の週では、ギニアにおいて新しく確認された患者の15%が既知の接触者からのものでした(リベリアとシエラレオネでは同種の情報は利用できていません)。
現在、流行3か国には27か所の検査施設があり、要請に応えるためにさらに4か所の開設が予定されています。
入院患者の中での致死率(信頼のある記録に基づく全入院患者から計算された結果)は、流行3か国でおよそ57~60%です。
これまでに、流行3か国から医療従事者の感染が825人報告されており、このうち493人が死亡しています。
安全な埋葬から接触者の追跡まで、EVD対策のあらゆる要素が感染流行地域で対策を主導するために、地域活動を積極的に行う人々の手に委ねられています。これまでのところ、ギニアの38地域のうち33 地域(87%)で、リベリアでは全地域で、シエラレオネでは14地域のうち8地域(57%)で、地域社会での参加活動の状況を確認する拠点を設置しました。
1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国において、診断確定例、可能性例、疑い例を合わせて21,261人の患者が発生しており、8,414人が死亡しています(表1)。なお、死亡者数は過小報告されています。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の 症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
2,514 |
230 |
1,530 |
可能性例 |
284 |
未報告 |
284 |
|
疑い例 |
8 |
未報告 |
未確定 |
|
国別総数 |
2,806 |
230 |
1,814 |
|
リベリア |
確定例 |
3,127 |
48 |
未確定 |
可能性例 |
1,839 |
未報告 |
未確定 |
|
疑い例 |
3,365 |
未報告 |
未確定 |
|
国別総数 |
8,331 |
48 |
3,538 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
7,786 |
769 |
2,696 |
可能性例 |
287 |
未報告 |
208 |
|
疑い例 |
2,051 |
未報告 |
158 |
|
国別総数 |
10,124 |
769 |
3,062 |
|
総数 |
21,261 |
1,047 |
8,414 |
確定例と可能性例の累計に関する階層別解析では、男女の患者数はほぼ同数であることが示されています(表2)。人口10万対の患者発生数を15歳未満の小児と比較したとき、15歳から44歳までの成人では約3倍(35:101)、45歳以上の成人では約4倍(35:130)となっています。
人口10万対の患者発生数は、ギニアでは26、リベリアでは210、シエラレオネでは176となっています。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における男女別・年齢別症例数
国名 |
症例数 |
||||
性別* (人口10万人対) |
年齢別♯ (人口10万人対) |
||||
男性 |
女性 |
0-14歳 |
15-44歳 |
45歳以上 |
|
ギニア |
1,334 |
1,430 |
442 |
1,564 |
736 |
(25) |
(26) |
(10) |
(34) |
(47) |
|
リベリア |
2,538 |
2,444 |
831 |
2,653 |
1,015 |
(128) |
(124) |
(48) |
(155) |
(190) |
|
シエラレオネ |
4,125 |
4,423 |
1,771 |
4,821 |
1,936 |
(145) |
(153) |
(73) |
(186) |
(262) |
|
総数 |
7,997 |
8,297 |
3,044 |
9,038 |
3,687 |
(78) |
(81) |
(35) |
(101) |
(130) |
*性別データがないものは除きます。
♯年齢データがないものは除きます。
ギニア
2015年1月11日迄の週に、42人の診断確定例が報告されました。第2週の患者発生数は2014年8月17日末の週以来の低い状態で、首都コナクリでは2014年11月後半以来の低い状態です。今回の報告期間中に、8地域で確定例および可能性例が報告されています。
12人の確定例が報告されたForecariahは最も発生数が多い地域で、次いで9人の確定例が報告されたコナクリとなっています。Friaは、1月11日の週に報告はありませんでしたが、前週に本年最初の患者2人が報告されています。
以前に患者が報告されていた4地域(流行発生地であるGueckedouを含む)では、1月11日に至る過去3週間では診断確定例あるいは可能性例の報告はありませんでした。
リベリア
新規患者は、昨年の8月~9月のピーク時の300人/週のピーク時から、2015年1月11日までの7日間では、8人の診断確定例となっています。
首都モンロビアのあるモンセラード郡は、患者の報告が続いています。1月11日までの7日間に、モンセラード地域のGrand Cape Mountで4人の診断確定例が報告されています。ギニアのGueckedouと国境を接するLofaでは、患者報告が78日間ありません。
シエラレオネ
2015年1月11日末の週に、新たに184人の診断確定例が報告されています。患者発生数は減少していますが、最も感染者の多い国となっています。
同国の西部が最も感染伝播の激しい地域です。首都フリータウンでは、59人の診断確定例が報告されています。また、その近隣のポートロコでは41人、ウエスタン・ルーラルでは31人の診断確定例が、それぞれ1月 11日までの1週間に報告されています。14地区のうち、10地区で同時期に診断確定例が報告されています。
ギニアのGueckedouと国境を接するカイラフンでは、患者報告が30日間ありません。ポートロコとギニア地区に接したKambiaでは17人の診断確定例が報告されています。
ギニアと国境を接する同国の東部では、同時期に14人の診断確定例が報告されています。
図1. ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD患者の分布図

※図のデータは、各国からの状況報告に基づいています。地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域についてもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の境界設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その 国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。
医療従事者
2015年1月11日までに、現在もしくは以前流行があった国全部で、医療従事者は843人がEVDに罹患し、このうち500人が死亡しています。
表3. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
159 |
94 |
リベリア |
370 |
178 |
シエラレオネ |
296 |
221 |
総数 |
825 |
493 |
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
英国では、2014年12月29日にスコットランドのグラスゴーでEVD診断確定例が確認されました。患者は、シエラレオネのETC(エボラ出血熱治療センター)でボランティアとして働いていた医療従事者です。患者は隔離され、ロンドンの医療機関で治療を受けています。公衆衛生当局は予防的手段(念のため)として、可能性のある接触者全員について調査を行っています。ハイリスクの接触者は確認されていません。
マリでは、6人の死亡者を含む8人の診断確定例が報告されています。最近の7人はマリの首都バマコで報告されており、2014年10月24日にカイで死亡した初発患者との関連はありません。最後の診断確定例は2014年12月6日に2度目の検査で陰性が確認されており、12月11日に退院しています。カイの初発患者とバマコで発生した患者の接触者は、全員が21日間の健康監視期間を終了しました。
表4. マリ、英国におけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
確定例 |
可能性例 |
疑い例 |
死亡者数 |
医療従事者の割合 |
健康監視中の接触者数 |
21日間の健康監視終了者数 |
最新患者検査陰性確定日* |
*からの経過日数 |
マリ |
7 |
1 |
0 |
6 |
25% |
0 |
433 |
2014/12/6 |
38 |
英国 |
1 |
0 |
0 |
0 |
100% |
55 |
|
|
|
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 14 January 2015
http://apps.who.int/ebola/en/status-outbreak/situation-reports/
ebola-situation-report-14-january-2015