エボラ出血熱の流行状況23 平成27年1月21日更新
2015年1月21日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。
要約
ギニア、リベリア、シエラレオネともに半減期間はそれぞれ1.4週間、2.0週間、2.7週間、で患者数は減少しています。1月18日までの週の3か国の患者報告数は145人であり、ギニアが20人、リベリアが8人、シエラレオネが117人となっています。
マリでは、EVDは42日間の新規患者発生が無く終焉宣言をしています。
3国に隣接するギニアビサウ、コートジボワール、マリ、セネガルとの国境地域では、サーベイランスと情報共有の増強が行われる予定です。
感染伝播が深刻な国々でも隔離治療のためのベッド数は確保されており、報告患者数(確定例と疑い例の合計数)の2倍以上の収容能力があります。患者数の減少に伴い計画ベッド数は減少しています。
それぞれの国では、EVDで死亡したと分かっている人すべてを埋葬する能力が十分にあります。
3か国ともに、登録された接触者の89~99%がモニターされています。ただし、多くの地域では接触者数は予測されるよりも少なくなっています。1月11日の週にはギニアで診断確定者のうち53%が接触者からでした。リベリアでは1月1日~15日の間新規確定診断患者の53%が接触者からでした。(なお、シエラレオネについてはデータがありません)
3か国では27ヶ所の診断確定のための検査実施機関があります。需要に応じてさらに5ヶ所が計画されています。検体収集から検査までの日数は1月18日までの3週間では、ギニアで1.37日、リベリアで2.32日、シエラレオネで2.32日でした。(ただし、ギニアのいくつかの地域のデータは既報)
入院患者の死亡率(予後の判明している入院患者から計算された値)は3か国で57~59%で発生当初と変化有りません。
3か国での医療従事者の患者は828人で内499人が死亡しています。12月を通してみるとリベリアとシエラレオネでは医療従事者の発症率は低下していますがギニアでは増加しています。
地域住民参加の指標として見てみると、ギニアの71%の地域、シエラレオネの100%の地域で、安全でかつ威厳の保たれた埋葬を実施できるようにキーとなる宗教的指導者のリストが確保されています。リベリアに関してはデータがありません。接触者の追跡調査や安全な埋葬に対する社会の反発はギニアでもっとも著しいですが、3か国共に認められています。
1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
現在までに、21000人以上の診断確定例、可能性例、疑い例が3か国から報告されており、死亡数は8600人以上になっています(表1)。(ただし、予後について多くの例で不明です)ギニア8人、シベリア117人、シエラレオネ18人の新規確定患者報告が1月18日の週の1週間でなされています。
累積の確定例、可能性例患者の階層別解析では男女比は同等となっています。14歳以下の小児と15歳~44歳の人では後者が3倍罹患しています。45歳以上のヒトが小児の4倍以上の罹患数です(表2)。
3か国における医療従事者の総患者数は828人となっており、内499人が死亡しています(表3)。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
※表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における男女別・年齢別症例数
※表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
*性別データがないものは除きます。♯年齢データがないものは除きます。
表3. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
※表3のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。
ギニア
2015年1月18日までの1週間で20人の患者が報告されており、その前週は45人でした。2014年8月3日の週の終わり以来、この3週間連続で国内では最も患者報告数が減少しています。8の地域から確定例、可能性例がこの期間に報告されています。ドゥブレカはもっとも患者が多く発生しており、5人の確定例が報告されており、コナクリ、ボファではそれぞれ4人の確定例が報告されています。ボファでは昨年の6月27日報告がありませんでした。今回の流行の発祥地であるゲケドゥを含めて10地域で1月18日までの3週間で確定例の報告はありませんでした。1月21日げんざいで診断確定例及び可能性例1人に対して6.9ベッドの利用が可能でした。(疑い例を含めると1人当たり4.9ベッド)1月18日までの3週間で検体処理までの時間は平均1.37日(1.00-1.93日)で有りこの数値は検体の集積から検査までの時間を示しています。このデータは3地区でのデータです。また同期間での診断確定例1人あたり接触者数の平均値は16人(4-27人)です。
リベリア
2014年8月、9月にみられた1週あたり300人以上の診断確定例発生と比べると2015年1月18日までの1週間は8人の診断確定例の発生と減少しています。同時期の患者の内6人の確定例と11人の可能性例はモンセラード郡、2例の確定例がグランドバッサ郡からのみ報告されています。1月18日迄の3週間における診断確定例及び可能性例1人に対して利用できるベッド数は18.4ベッドでした。(疑い例を含めると4ベッド)同期間における検体集積から処理までの平均所要時間は2.03日(1.0-4.0日)でした。 また同期間における診断確定例1人あたり平均接触者数は83人(40-165人)でその前の3週間は39人でした。
シエラレオネ
患者発生数はシエラレオネでは急速に減少しています。2015年1月18日迄の週の診断確定例はあらたに117人でした。その前週は184人、前々週は248人でした。西部地区は現在ももっとも強い伝播がおこっています。1月18日までの1週間で首都フリータウンでは30人、近隣のポートロコと西部地域地方地区ではそれぞれ31人と17人の新規診断確定例が発生しています。14の地区のうち10地区で同期間に新規診断確定例が発生しています。カイラフンはギニアのゲケドゥと接していますが37日間新規診断確定例は認めていません。ポートロコと接しているカンビアではボンバリと同様8人の診断確定例が報告されています。東部ではギニアとの国境になるコノで同時期に13人の新規診断確定例が報告されています。1月18日までの3週間で診断確定例及び可能性例1人当たりに8.7ベッドの確保ができています。(疑い例を含めると5.5)1月18日までの3週間での検体処理所要日数は2.32日(1.44-5.22日)で同期間における診断確定例1人当たりの接触者は平均14人(0-25日)でありその前の21日間は18人であるとのことです。
図1. ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD患者の分布図

2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
マリ、ナイジエリア、セネガル、スペイン、英国、米国合衆国の6か国では広範に強い伝播の起こっている国からの輸入例が報告されています。英国ではスコットランドのグラスゴーで2014年12月29日に症例が確認されました。患者はシエラレオネのエボラ治療センターから帰国したボランティアの医療従事者でした。12月29日に隔離されロンドンで治療を受けています。予防手段として接触の可能性のあるヒトを調査しています。現在までハイリスクの接触者は確認されていません。
マリは、最終の患者のEVDに関する検査結果陰性を確認してから既に42日経過したため、1月18日に終息を宣言しています。
要約
ギニア、リベリア、シエラレオネともに半減期間はそれぞれ1.4週間、2.0週間、2.7週間、で患者数は減少しています。1月18日までの週の3か国の患者報告数は145人であり、ギニアが20人、リベリアが8人、シエラレオネが117人となっています。
マリでは、EVDは42日間の新規患者発生が無く終焉宣言をしています。
3国に隣接するギニアビサウ、コートジボワール、マリ、セネガルとの国境地域では、サーベイランスと情報共有の増強が行われる予定です。
感染伝播が深刻な国々でも隔離治療のためのベッド数は確保されており、報告患者数(確定例と疑い例の合計数)の2倍以上の収容能力があります。患者数の減少に伴い計画ベッド数は減少しています。
それぞれの国では、EVDで死亡したと分かっている人すべてを埋葬する能力が十分にあります。
3か国ともに、登録された接触者の89~99%がモニターされています。ただし、多くの地域では接触者数は予測されるよりも少なくなっています。1月11日の週にはギニアで診断確定者のうち53%が接触者からでした。リベリアでは1月1日~15日の間新規確定診断患者の53%が接触者からでした。(なお、シエラレオネについてはデータがありません)
3か国では27ヶ所の診断確定のための検査実施機関があります。需要に応じてさらに5ヶ所が計画されています。検体収集から検査までの日数は1月18日までの3週間では、ギニアで1.37日、リベリアで2.32日、シエラレオネで2.32日でした。(ただし、ギニアのいくつかの地域のデータは既報)
入院患者の死亡率(予後の判明している入院患者から計算された値)は3か国で57~59%で発生当初と変化有りません。
3か国での医療従事者の患者は828人で内499人が死亡しています。12月を通してみるとリベリアとシエラレオネでは医療従事者の発症率は低下していますがギニアでは増加しています。
地域住民参加の指標として見てみると、ギニアの71%の地域、シエラレオネの100%の地域で、安全でかつ威厳の保たれた埋葬を実施できるようにキーとなる宗教的指導者のリストが確保されています。リベリアに関してはデータがありません。接触者の追跡調査や安全な埋葬に対する社会の反発はギニアでもっとも著しいですが、3か国共に認められています。
1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
現在までに、21000人以上の診断確定例、可能性例、疑い例が3か国から報告されており、死亡数は8600人以上になっています(表1)。(ただし、予後について多くの例で不明です)ギニア8人、シベリア117人、シエラレオネ18人の新規確定患者報告が1月18日の週の1週間でなされています。
累積の確定例、可能性例患者の階層別解析では男女比は同等となっています。14歳以下の小児と15歳~44歳の人では後者が3倍罹患しています。45歳以上のヒトが小児の4倍以上の罹患数です(表2)。
3か国における医療従事者の総患者数は828人となっており、内499人が死亡しています(表3)。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の 症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
2,539 |
136 |
1,557 |
可能性例 |
319 |
未報告 |
319 |
|
疑い例 |
8 |
未報告 |
未確定 |
|
国別総数 |
2,871 |
136 |
1876 |
|
リベリア |
確定例 |
3,135 |
25 |
未確定 |
可能性例 |
1,854 |
未報告 |
未確定 |
|
疑い例 |
3,489 |
未報告 |
未確定 |
|
国別総数 |
8,478 |
25 |
3,605 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
7,903 |
549 |
2,779 |
可能性例 |
287 |
未報告 |
208 |
|
疑い例 |
2,150 |
未報告 |
158 |
|
国別総数 |
10,340 |
549 |
3,145 |
|
総数 |
21,689 |
710 |
8,626 |
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における男女別・年齢別症例数
国名 |
症例数 |
||||
性別* (人口10万人対) |
年齢別♯ (人口10万人対) |
||||
男性 |
女性 |
0-14歳 |
15-44歳 |
45歳以上 |
|
ギニア |
1,341 |
1,438 |
443 |
1,572 |
742 |
(25) |
(26) |
(10) |
(34) |
(47) |
|
リベリア |
2,538 |
2,444 |
831 |
2,653 |
1,015 |
(128) |
(124) |
(48) |
(155) |
(190) |
|
シエラレオネ |
4,879 |
5150 |
2243 |
5634 |
2331 |
(171) |
(178) |
(93) |
(218) |
(315) |
*性別データがないものは除きます。♯年齢データがないものは除きます。
表3. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
162 |
100 |
リベリア |
370 |
178 |
シエラレオネ |
296 |
221 |
総数 |
828 |
499 |
ギニア
2015年1月18日までの1週間で20人の患者が報告されており、その前週は45人でした。2014年8月3日の週の終わり以来、この3週間連続で国内では最も患者報告数が減少しています。8の地域から確定例、可能性例がこの期間に報告されています。ドゥブレカはもっとも患者が多く発生しており、5人の確定例が報告されており、コナクリ、ボファではそれぞれ4人の確定例が報告されています。ボファでは昨年の6月27日報告がありませんでした。今回の流行の発祥地であるゲケドゥを含めて10地域で1月18日までの3週間で確定例の報告はありませんでした。1月21日げんざいで診断確定例及び可能性例1人に対して6.9ベッドの利用が可能でした。(疑い例を含めると1人当たり4.9ベッド)1月18日までの3週間で検体処理までの時間は平均1.37日(1.00-1.93日)で有りこの数値は検体の集積から検査までの時間を示しています。このデータは3地区でのデータです。また同期間での診断確定例1人あたり接触者数の平均値は16人(4-27人)です。
リベリア
2014年8月、9月にみられた1週あたり300人以上の診断確定例発生と比べると2015年1月18日までの1週間は8人の診断確定例の発生と減少しています。同時期の患者の内6人の確定例と11人の可能性例はモンセラード郡、2例の確定例がグランドバッサ郡からのみ報告されています。1月18日迄の3週間における診断確定例及び可能性例1人に対して利用できるベッド数は18.4ベッドでした。(疑い例を含めると4ベッド)同期間における検体集積から処理までの平均所要時間は2.03日(1.0-4.0日)でした。 また同期間における診断確定例1人あたり平均接触者数は83人(40-165人)でその前の3週間は39人でした。
シエラレオネ
患者発生数はシエラレオネでは急速に減少しています。2015年1月18日迄の週の診断確定例はあらたに117人でした。その前週は184人、前々週は248人でした。西部地区は現在ももっとも強い伝播がおこっています。1月18日までの1週間で首都フリータウンでは30人、近隣のポートロコと西部地域地方地区ではそれぞれ31人と17人の新規診断確定例が発生しています。14の地区のうち10地区で同期間に新規診断確定例が発生しています。カイラフンはギニアのゲケドゥと接していますが37日間新規診断確定例は認めていません。ポートロコと接しているカンビアではボンバリと同様8人の診断確定例が報告されています。東部ではギニアとの国境になるコノで同時期に13人の新規診断確定例が報告されています。1月18日までの3週間で診断確定例及び可能性例1人当たりに8.7ベッドの確保ができています。(疑い例を含めると5.5)1月18日までの3週間での検体処理所要日数は2.32日(1.44-5.22日)で同期間における診断確定例1人当たりの接触者は平均14人(0-25日)でありその前の21日間は18人であるとのことです。
図1. ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD患者の分布図

2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
マリ、ナイジエリア、セネガル、スペイン、英国、米国合衆国の6か国では広範に強い伝播の起こっている国からの輸入例が報告されています。英国ではスコットランドのグラスゴーで2014年12月29日に症例が確認されました。患者はシエラレオネのエボラ治療センターから帰国したボランティアの医療従事者でした。12月29日に隔離されロンドンで治療を受けています。予防手段として接触の可能性のあるヒトを調査しています。現在までハイリスクの接触者は確認されていません。
マリは、最終の患者のEVDに関する検査結果陰性を確認してから既に42日経過したため、1月18日に終息を宣言しています。
国名 |
確定例 |
可能性例 |
疑い例 |
死亡者数 |
医療従事者の割合 |
健康監視中の接触者数 |
21日間の健康監視終了者数 |
最新患者検査陰性確定日* |
*からの経過日数 |
英国 |
1 |
0 |
0 |
0 |
100% |
55 |
|
|
|
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 21 January 2015
http://apps.who.int/ebola/en/status-outbreak/situation-reports/
ebola-situation-report-21-january-2015