(No.12)

エボラ出血熱の流行状況24 平成27年1月28日更新

 2015年1月28日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約
 EVD流行の対策は、その焦点が、流行を遅らせることから流行を終わらせることに移行しており、第二段階に移動しました。この目標を可能な限り迅速に達成するために、重点の主眼(努力)は、早急な基盤(インフラ)整備から、患者発見、患者治療(管理)、安全な埋葬、および地域社会の参加等が、出来るだけ効率よく進める事ができる能力の確保に、移行しつつあります。
 流行が深刻な3か国から毎週報告されている新規の確定例が、2014年6月29日までの週以来、初めて100人未満になりました。1月25日末の週に流行3か国から報告された患者数は、ギニア30人、リベリア4人、シエラレオネ65人の、合計99人でした。
 リベリアとシエラレオネでは患者発生数は減少が続いていますが、ギニアでは、1月25日末の週に確定例が30人報告され、前の週よりも20人増えました。
 セネガルと国境を接するギニア北部のマリ県において、確定例が初めて報告されています。
 ギニアでは、1月18日末の週において、新規の確定例と可能性例20人のうち6人(30%)が、登録された接触者の中から発生しました。リベリアでは、1月 25日末の週において、新規の確定例4人のうち2人(50%)が、登録された接触者の中から発生しました。シエラレオネでは、同様の情報はまだ利用できていません。目標は、新規患者の100%が登録された接触者から発生することであり、それは、感染伝播の連鎖が追跡され遮断できたことを意味しています。
 1月25日までの21日間に、患者の検体が回収されてから検査結果の伝達を通して各国の保健省に報告されるまでの平均時間は、ギニア0.7日、リベリア0.5日、シエラレオネ0.8日でした。目標は、検体の回収から24時間以内に結果を得ることです。
 入院患者での致死率(信頼のある記録に基づく全入院患者から計算された結果)は、流行3か国において54%から62%の間であり、改善の傾向は未だ見られていません。
 流行3か国の全ての医療施設において、最低限遵守すべき感染予防と管理(IPC)についての評価が行われており、医療施設の100%がこのような基準に対応できることを目的としています。最低限のIPC基準に対応できる施設の割合に関するデータは、まもなく利用できるようになります。
 流行3か国から医療従事者の感染が816人報告されており、このうち488人が死亡しています。1月25日末の週に、ギニアとシエラレオネから医療従事者の感染は報告されませんでした。リベリアでは、前週の報告は0人でしたが、同週には2人の感染が報告されました。
 ギニアでは、1月21日末の週に、県下の合計27地域において、保安上の事件または協力を拒否するその他の事例が、少なくとも1例は報告されています。同週に、リベリアでは2地区から、シエラレオネでは4地区から、同様の事例が少なくとも1例は報告されています。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
 ギニア、リベリア、シエラレオネの3か国において、診断確定例、可能性例、疑い例を合わせて22,057人の患者が発生しており、8,795人が死亡しています(表1)。1月25日末の週に、ギニアでは30人、リベリアでは4人、シエラレオネでは65人の新規の確定例が報告されました。
 確定例と可能性例の階層別解析では、男性と女性の症例数は同程度であることが示されています。人口10万対の症例数を15歳未満の小児と比較すると、15歳から44歳までの成人では約3倍、45歳以上の成人では約4倍となっています(表2)。
 流行3か国から医療従事者の感染が816人報告されており、このうち488人が死亡しています(表3)。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定

2,569

92

1,578

可能性

332

未報告

332

疑い

16

未報告

未確定

国別総数

2,917

92

1,910

リベリ

確定

3,138

20

未確定

可能性

1,864

未報告

未確定

疑い

3,620

未報告

未確定

国別総数

8,622

20

3,686

シエラレオネ

確定

7,968

366

2,833

可能性

287

未報告

208

疑い

2,263

未報告

158

国別総数

10,518

366

3,199

22,057

478

8,795

※表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、現在進行中の再分類、遡及調査、検査結果の状況により、変更される場合があります。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における男女別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,341

1,438

443

1,572

742

(25)

(26)

(10)

(34)

(47)

リベリア

2,550

2,447

829

2,671

1,019

(128)

(124)

(48)

(156)

(190)

シエラレオネ

5,185

5,501

2,326

5,777

2,414

(145)

(190)

(73)

(223)

(327)

※表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
*性別データがないものは除きます。
♯年齢データがないものは除きます。

表3. ギニア、リベリア、シエラレオネにおける医療従事者のEVD症例数と死亡者数

国名

症例数

死亡者数

ギニア

162

88

リベリア

371

179

シエラレオネ

283

221

総数

816

488

※ギニアのデータは、症例数は確定例のみ、死亡者数は確定例と可能性例の合計です。リベリアのデータは、症例数も死亡者数も確定例のみです。シエラレオネのデータは、症例数も死亡者数も確定例、可能性例、疑い例の合計です。

図1. ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリにおけるEVD患者の分布図

※図のデータは、各国からの状況報告に基づいています。地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域についてもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の境界設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その 国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生している国
 マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
 英国では、2014年12月29日にスコットランドのグラスゴーでEVD診断確定例が確認されました。患者は、シエラレオネのETC(エボラ出血熱治療センター)でボランティアとして働いていた医療従事者です。患者は12月29日に隔離され、ロンドンの医療機関で治療を受けています。患者は、2015年1月23日にEVD検査に対する2回目の陰性が確認され、1月24日に退院しました。全ての接触者は21日の健康監視期間を終了しました(表4)。

表4. マリ、英国におけるEVD症例数と死亡者数

国名

確定例

可能性例

疑い例

死亡者数

医療従事者の割合

健康監視中の接触者数

21日間の健康監視終了者数

最新患者検査陰性確定日*

*からの経過日数

英国

1

0

0

0

100

0

55

2015/1/23

4


【出典】
 WHO, Ebola
 Ebola Situation Report - 28 January 2015
 http://apps.who.int/ebola/en/ebola-situation-report/situation-reports/ebola
 -situation-report-28-january-2015