(No.60)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)について(111)
2015年5月14日更新

 2015年5月9日、中国の国家衛生家族計画(出産)委員会(NHFPC)は、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト感染確定例6人を世界保健機関(WHO)に報告しました。うち2人は死亡しています。

 発症した日は2015年3月26日から4月12日です。年齢は3歳から67歳で平均年齢は36歳です。これら6人のうち、4人(67%)は男性です。4人(67%)は、家禽と関連する環境にあり、残り2人(33%)については不明です。集団感染は報告されていません。症例は安徽省(1人)、福建省(1人)、江蘇省(1人)、上海市(1人)と浙江省(2人)の5つの行政区から報告されました。

 中国政府は、以下のようなサーベイランスと対策を実施しています。
 * 流行のサーベイランス及び状況分析の強化
 * 患者管理と治療の強化
 * 市民へのリスクコミュニケーションと情報の発信

 WHOは疫学的状況の監視と、さらなる最新情報に基づいたリスク評価を実施しています。全体的に鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの公衆衛生上のリスクは変わっていません。
2ヶ月前と比較して鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染者数は減少していますが、今後も周辺地域で散発的に発生することが予想されます。流行地域から国境を越えて旅行する者がいれば、旅行中又はその到着後に他の国で感染者が発見されるかもしれません。もし、このような事例が発生しても、このウイルスは、簡単にヒトからヒトへの直接感染を起こす能力はないのでコミュニティレベルで感染が拡がるとは考えられていません。

 WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、養鶏場への立ち入り、生きた家禽類を扱う市場での動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物品との接触を避けるよう忠告しています。また、渡航者は石けんと水で手をよく洗い、食品の安全と衛生習慣を維持すべきです。
 
 WHOはこの事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。これまで通り、鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中又は帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、鳥インフルエンザへの感染を鑑別診断として考えておくべきです。
 WHOは、国際保健規則(2005)に基づき、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、通常と異なる傾向がみられた症例については慎重に検討を重ねることを各国に促しています。さらに、国の健康事前計画による活動を続けていくことを求めています。

 【出典】
  WHO, Global Alert and Response (GAR).
  Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China, 14 May 2015
  http://www.who.int/csr/don/14-May-2015-avian-influenza-china/en/