エボラ出血熱の流行状況40 平成27年5月20日更新
2015年5月20日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。
要約
・ 5月17日末の週に、ギニアとシエラレオネから35人の確定例が報告され、過去1か月以上における週
間の最高患者数となりました。これは前週に報告された9人と比較して、大幅に増加しています。感染
伝播の地理的分布も合計6地区(ギニア3地区、シエラレオネ3地区)となっており、前週の3地区(ギニア
2地区、シエラレオネ1地区)と比較して拡大しています。
・ ギニアは、前週の患者7人と比較して、合計27人の患者を報告しました。患者のほとんどは西部県の
デュブレカ県(11人)とフォレカリア県(11人)から報告されており、残りの5人はギニアビサウと国境を
接する北西部県のボケ県から報告されました。ボケ県の患者は沿岸地区のカムサールに集中しており、
初期調査ではコナクリの感染伝播の連鎖に由来していることが示唆されています。デュブレカ県から報
告された患者11人は、すべてタネネから報告されました。この流行の発生由来は不明ですが、後ろ向き
調査ではほとんどの確定例が4人の可能性例(4月中旬にデュブレカで別の可能性例の葬儀に参列)と関連
があり、流行の起源となっている可能性があります。フォレカリア県では、患者11人は県内10地域の
うち6地域に分布しています。ギニアから報告された患者27人のうち9人は、流行の起源が不明で、感
染伝播の連鎖がいくつかの地域で検知をすり抜けていることを示しています。
・ ギニアビサウ近傍のボケ県で最近の流行が発生したため、同国から対策チームが評価を目的として国
境に配備されています。国境を越えた接触者の追跡を確実にするために、疫学調査チームも動員されて
います。
・ シエラレオネの8人の確定例は、首都フリータウン(4人)、カンビア(1人)、ポート・ロコ(3人)から報
告されました。フリータウンでは、前週は同国の患者報告における一部のみであったモア・ワーフ地区
に近い北部の3地域に患者が集中しました。カンビアの患者1人は、最近の数週間で感染伝播の中心とな
っていたマグベマ・チーフダムから報告されました。ポート・ロコのカフブロム・チーフダムから報告
された患者3人は、カンビアの感染伝播の連鎖と関連しています。同国から報告された8人のうち4人は、
既報患者の接触者として登録されていました。追加された3人は接触者として登録されていませんでし
たが、既報患者の接触者の追加調査で発見されました。フリータウンから報告された残りの患者は、コ
ミュニティでの死亡者で死後の検査後に同定されました。感染源は不明ですが、モア・ワーフ地区で発
見されました。
・ ギニアにおける最後の医療従事者の感染は4月6日に報告されましたが、シエラレオネにおける最新の
医療従事者の感染が5月14日に確認されました。この患者は、発症時にフリータウンの近くにあるエボ
ラ治療センターで働いていたシエラレオネ国民です。このセンターは、最近のイタリア人医療従事者の
患者がイタリアに帰国するまで滞在していた施設と同じです。2人の医療従事者がどのようにして
EVDに曝露したかについて、調査が続いています。現在、イタリアで合計13人の接触者が健康監視さ
れていますが、いずれも濃厚接触があったとは考えられていません。流行の開始以降、ギニア、リベリ
ア、シエラレオネから合計869人の医療従事者の感染が報告され、うち507人の死亡が報告されました。
1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
・ ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて26,933人の
EVD患者が発生しており、11,120人が死亡しています(表1)。5月17日までの7日間に、ギニアでは
27人、シエラレオネでは8人の新たな確定例が報告されました。リベリアでの流行は5月9日に終息しま
した。
・ 診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると15~44歳の成人の
患者数は3~4倍となっています。45歳以上の成人は小児と比べると4~5倍になっています。
・ 医療従事者の感染者数は流行3か国で合計869人となっており、うち507人が死亡しています。
表1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
* 最後の確定例が埋葬されて42日が経過した後に、リベリアの流行は終息が宣言されました。現在、3か
月の高警戒期間に入っています。
表2.ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数
※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
・ マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ
深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
・ 5月12日、WHOはイタリアにおけるEVD確定例の報告を受けました。患者はボランティア活動を行
っていた医療従事者で、5月7日にシエラレオネからイタリアに帰国しました。5月10日に発症して、
5月11日にサルデーニャ島のサッサリ病院の感染症病棟に搬送されました。5月12日に臨床検体が
EVD陽性と確認され、患者はローマの国立感染症研究所へ隔離移送されました。最後のフライト後の
72時間を経過して発症したため、飛行機の同乗者に対する接触者追跡調査は必要ないと考えています。
現在、合計13人の接触者が健康監視されており、いずれもリスクの高い暴露はなかったと考えられてい
ます。
・ 5月9日、リベリアにおけるEVD流行は終息が宣言されました。過去に広範囲に及ぶ深刻な感染伝播
が発生した国は新たな確定例を認めず、最後の確定例を3月28日に埋葬して42日が経過しました。
現在、3か月間の高警戒期間に入っています。5月17日末の週に、1日平均27検体が検査され、すべて
EVD陰性が確認されました。
EVDの曝露を早期に検知し、対応するための各国の対策
・ EVD非流行国へのEVD患者の入国は、EVDの発生国が存在する限り、危険性があり続けます。
しかし、適切な水準の対策が講じられれば、EVDが侵入したとしても迅速で適切な対応により封じ込め
ることが可能です。
・ WHOの対策活動は、全ての国が、潜在的なEVD患者を効率的かつ確実に検出、調査、報告し、効果
的な対策の実施などを励行することを目指しています。WHOはこれらの援助を、対策チーム(PSTs)の
派遣、直接的技術支援および技術指導と機器の提供を通じて行っています。
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 20 May 2015
http://apps.who.int/ebola/en/current-situation/ebola-situation-report-20-may-2015
要約
・ 5月17日末の週に、ギニアとシエラレオネから35人の確定例が報告され、過去1か月以上における週
間の最高患者数となりました。これは前週に報告された9人と比較して、大幅に増加しています。感染
伝播の地理的分布も合計6地区(ギニア3地区、シエラレオネ3地区)となっており、前週の3地区(ギニア
2地区、シエラレオネ1地区)と比較して拡大しています。
・ ギニアは、前週の患者7人と比較して、合計27人の患者を報告しました。患者のほとんどは西部県の
デュブレカ県(11人)とフォレカリア県(11人)から報告されており、残りの5人はギニアビサウと国境を
接する北西部県のボケ県から報告されました。ボケ県の患者は沿岸地区のカムサールに集中しており、
初期調査ではコナクリの感染伝播の連鎖に由来していることが示唆されています。デュブレカ県から報
告された患者11人は、すべてタネネから報告されました。この流行の発生由来は不明ですが、後ろ向き
調査ではほとんどの確定例が4人の可能性例(4月中旬にデュブレカで別の可能性例の葬儀に参列)と関連
があり、流行の起源となっている可能性があります。フォレカリア県では、患者11人は県内10地域の
うち6地域に分布しています。ギニアから報告された患者27人のうち9人は、流行の起源が不明で、感
染伝播の連鎖がいくつかの地域で検知をすり抜けていることを示しています。
・ ギニアビサウ近傍のボケ県で最近の流行が発生したため、同国から対策チームが評価を目的として国
境に配備されています。国境を越えた接触者の追跡を確実にするために、疫学調査チームも動員されて
います。
・ シエラレオネの8人の確定例は、首都フリータウン(4人)、カンビア(1人)、ポート・ロコ(3人)から報
告されました。フリータウンでは、前週は同国の患者報告における一部のみであったモア・ワーフ地区
に近い北部の3地域に患者が集中しました。カンビアの患者1人は、最近の数週間で感染伝播の中心とな
っていたマグベマ・チーフダムから報告されました。ポート・ロコのカフブロム・チーフダムから報告
された患者3人は、カンビアの感染伝播の連鎖と関連しています。同国から報告された8人のうち4人は、
既報患者の接触者として登録されていました。追加された3人は接触者として登録されていませんでし
たが、既報患者の接触者の追加調査で発見されました。フリータウンから報告された残りの患者は、コ
ミュニティでの死亡者で死後の検査後に同定されました。感染源は不明ですが、モア・ワーフ地区で発
見されました。
・ ギニアにおける最後の医療従事者の感染は4月6日に報告されましたが、シエラレオネにおける最新の
医療従事者の感染が5月14日に確認されました。この患者は、発症時にフリータウンの近くにあるエボ
ラ治療センターで働いていたシエラレオネ国民です。このセンターは、最近のイタリア人医療従事者の
患者がイタリアに帰国するまで滞在していた施設と同じです。2人の医療従事者がどのようにして
EVDに曝露したかについて、調査が続いています。現在、イタリアで合計13人の接触者が健康監視さ
れていますが、いずれも濃厚接触があったとは考えられていません。流行の開始以降、ギニア、リベリ
ア、シエラレオネから合計869人の医療従事者の感染が報告され、うち507人の死亡が報告されました。
1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
・ ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて26,933人の
EVD患者が発生しており、11,120人が死亡しています(表1)。5月17日までの7日間に、ギニアでは
27人、シエラレオネでは8人の新たな確定例が報告されました。リベリアでの流行は5月9日に終息しま
した。
・ 診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると15~44歳の成人の
患者数は3~4倍となっています。45歳以上の成人は小児と比べると4~5倍になっています。
・ 医療従事者の感染者数は流行3か国で合計869人となっており、うち507人が死亡しています。
表1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の 症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
3,201 |
43 |
1,988 |
可能性例 |
419 |
未報告 |
419 |
|
疑い例 |
15 |
未報告 |
データなし |
|
国別総数 |
3,635 |
43 |
2,407 |
|
リベリア* |
確定例 |
3,151 |
0 |
データなし |
可能性例 |
1,879 |
未報告 |
データなし |
|
疑い例 |
5,636 |
未報告 |
データなし |
|
国別総数 |
10,666 |
0 |
4,806 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
8,605 |
19 |
3,541 |
可能性例 |
287 |
未報告 |
208 |
|
疑い例 |
3,740 |
未報告 |
158 |
|
国別総数 |
12,632 |
19 |
3,907 |
|
総数 |
確定例 |
14,957 |
62 |
データなし |
可能性例 |
2,585 |
未報告 |
データなし |
|
疑い例 |
9,391 |
未報告 |
データなし |
|
総数 |
26,933 |
62 |
11,120 |
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
* 最後の確定例が埋葬されて42日が経過した後に、リベリアの流行は終息が宣言されました。現在、3か
月の高警戒期間に入っています。
表2.ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数
国名 |
症例数 |
||||
性別* (人口10万対) |
年齢別♯ (人口10万対) |
||||
男性 |
女性 |
0-14歳 |
15-44歳 |
45歳以上 |
|
ギニア |
1,540 |
1,650 |
496 |
1,823 |
827 |
(28) |
(30) |
(11) |
(39) |
(53) |
|
リベリア |
1,911 |
1,835 |
561 |
2,056 |
704 |
(96) |
(93) |
(33) |
(120) |
(132) |
|
シエラレオネ |
4,641 |
4,948 |
1,904 |
5,454 |
2,062 |
(163) |
(171) |
(79) |
(211) |
(279) |
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
・ マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ
深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
・ 5月12日、WHOはイタリアにおけるEVD確定例の報告を受けました。患者はボランティア活動を行
っていた医療従事者で、5月7日にシエラレオネからイタリアに帰国しました。5月10日に発症して、
5月11日にサルデーニャ島のサッサリ病院の感染症病棟に搬送されました。5月12日に臨床検体が
EVD陽性と確認され、患者はローマの国立感染症研究所へ隔離移送されました。最後のフライト後の
72時間を経過して発症したため、飛行機の同乗者に対する接触者追跡調査は必要ないと考えています。
現在、合計13人の接触者が健康監視されており、いずれもリスクの高い暴露はなかったと考えられてい
ます。
・ 5月9日、リベリアにおけるEVD流行は終息が宣言されました。過去に広範囲に及ぶ深刻な感染伝播
が発生した国は新たな確定例を認めず、最後の確定例を3月28日に埋葬して42日が経過しました。
現在、3か月間の高警戒期間に入っています。5月17日末の週に、1日平均27検体が検査され、すべて
EVD陰性が確認されました。
EVDの曝露を早期に検知し、対応するための各国の対策
・ EVD非流行国へのEVD患者の入国は、EVDの発生国が存在する限り、危険性があり続けます。
しかし、適切な水準の対策が講じられれば、EVDが侵入したとしても迅速で適切な対応により封じ込め
ることが可能です。
・ WHOの対策活動は、全ての国が、潜在的なEVD患者を効率的かつ確実に検出、調査、報告し、効果
的な対策の実施などを励行することを目指しています。WHOはこれらの援助を、対策チーム(PSTs)の
派遣、直接的技術支援および技術指導と機器の提供を通じて行っています。
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 20 May 2015
http://apps.who.int/ebola/en/current-situation/ebola-situation-report-20-may-2015