(No.88)

エボラ出血熱の流行状況43
平成27年6月10日更新

 2015年6月10日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約
 ・ 4月から5月上旬にかけてEVDの流行があった地域での症例発症数の減少と地理的領域の縮小が、
  ここ数週間で止まりました。6月7日までの1週間でギニアから16人、シエラレオネから15人の
  計31人の新たな確定例が報告されています。2週連続で症例数が増加し、シエラレオネでは3月下旬
  以来、最も多い数です。さらにギニアとシエラレオネで新たに報告された地域が拡大し、未知の
  感染源から継続的に発生していることから、まだ感染連鎖ごとの発見と除去が直面しているという
  課題が特記すべき事項です。
 ・ ギニアでは、6月7日までの1週間に西部5県から合計16人が報告されました。患者の半分が
  シエラレオネと国境を接するフォレカリア県の南西部で報告されています。ギニアビサウ共和国と
  国境を接するギニア北西部のボケ県から4週連続で1人報告されています。首都コナクリでは2人、
  ドゥブレカ県の沿岸地域で2人、シエラレオネのボンバリと国境を接するキンディア県の内陸部で
  3人報告されています。コナクリやキンディアでは過去40日間以上報告がありません。
 ・ ギニアでは16人中5人が未知の感染源から生じており、うち3人がキンディアから報告されています。
  これらの症例の発生源をたどる調査が現在進行中です。さらにキンディアの1人を含めたギニアで3人が
  死後の検査で同定されました。6月7日時点で、ギニア8県で1,693人の接触者が健康監視されています。
 ・ シエラレオネでは6月7日までの1週間で2地区から合計15人の新規確定例が報告されています。
  前週と同様に、多くの患者(7人)は、首都フリータウンの北部に位置するポート・ロコの人口密集
  地区であるカッフブロムの首長支配地域から報告されました。しかし、同地区のブレーカッセマの首長
  支配地域からも3人報告されています。カッフブロムの首長支配地域と繋がりがあるより、むしろ
  カンビアの隣接地区と繋がりがあると考えられています。2週前の第1例が報告されて以後、6月7日
  までの1週間でカンビアの2つの首長支配地域から5人が報告されています。
 ・ シエラレオネの首都フリータウンを含む西部地域都市地区では2014年8月以来、初めて新規報告例が
  ありませんでした。しかし6月7日時点で、西部地域都市地区で195人、カンビアとポートロコを含む
  3つの地区で合計392人の接触者の経過観察がまだ行われています。
 ・ ギニアとシエラレオネでは流行地域を効率よく減少させるため、接触者追跡の技術と調査チームの
  能力を増大させる努力をしています。ギニアでは6月7日までの1週間で、安全でない埋葬が19件
  報告されています。シエラレオネでは安全でない埋葬は数週間1件も報告されていませんが、
  カンビアでの最近の症例の調査では、まだいくつかの地域で行われていることが明らかになりました。
  報告された症例や死亡例、検出された感染連鎖を予防するため、いかなる懸念も理解し、対処する
  ためには地域社会とのコミュニケーションの改善が不可欠です。
 ・ 5月12日にイタリアで報告された確定例の接触者全員が、現在21日間の経過観察を終えています。
 ・ ギニアでは4月6日に、シエラレオネでは5月14日に最後の医療従事者の感染が報告されました。
  流行の発生以来、ギニア、リベリア、シエラレオネから869人の医療従事者の感染が報告されています。
  うち、507人が死亡しています。

1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
 ・ ギニア、リベリア、シエラレオネでは、EVD患者(確定患者、可能性の高い患者、疑い患者を含む)が
  合計27,237人、うち死亡者は11,158人となりました(多くの患者の結果は不明ですが、この総計には
  可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者を含みます)。6月7日までの7日間に報告
  された新たな確定患者数は、ギニアで16人、シエラレオネで15人でした。リベリアでは5月9日に
  流行の終息が宣言されました。(表1)
 ・ 確定患者と可能性の高い患者の数はおよそ男女同数となっています。患者発生数を15歳未満の小児と
  比較したとき、15歳から44歳までの成人では約3倍から4倍感染しやすく、45歳以上の成人では子ども
  よりも4倍から5倍感染しやすいようです。(表2)
 ・ ギニア、リベリア、シエラレオネから869人の医療従事者の感染が報告されています。このうち、
  507人が亡くなっています。

表1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定

3,239

38

2,018

可能性

419

未報告

419

疑い

12

未報告

データなし

国別総数

3,670

38

2,437

リベリア*

確定

3,151

0

データなし

可能性

1,879

未報告

データなし

疑い

5,636

未報告

データなし

国別総数

10,666

0

4,806

シエラレオネ

確定

8,635

30

3,549

可能性

287

未報告

208

疑い

3,979

未報告

158

国別総数

12,901

30

3,915

総数

確定

15,025

68

データなし

可能性

2,585

未報告

データなし

疑い

9,627

未報告

データなし

総数

27,237

68

11,158

※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
 再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
* 最後の確定例が埋葬されて42日が経過した後に、リベリアの流行は終息が宣言されました。現在、3か
 月の高警戒期間に入っています。

表2.ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,557

1,677

505

1,846

838

(29)

(31)

(11)

(40)

(54)

リベリア

1,911

1,838

561

2,060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,648

4,953

1,912

5,459

2,061

(163)

(171)

(79)

(211)

(279)

※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。

2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
 ・ マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ
  深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
 ・ 5月12日、WHOはイタリアにおけるEVD確定例の報告を受けました。患者はボランティア活動を
  行っていた医療従事者で、5月7日にシエラレオネからイタリアに帰国しました。5月10日に発症して、
  5月11日にサルデーニャ島のサッサリ病院の感染症病棟に搬送されました。5月12日に臨床検体が
  EVD陽性と確認され、患者はローマの国立感染症研究所へ隔離移送されました。現在、合計19人の
  接触者が21日間の健康監視を終えました。
 ・ 5月9日、リベリアにおけるEVD流行は終息が宣言されました。過去に広範囲に及ぶ深刻な感染
  伝播が発生しましたが、新たな確定例を認めず、最後の確定例を3月28日に埋葬して42日以上が
  経過しました。現在、3か月間の高警戒期間に入っています。6月7日までの1週間に、1日平均25検体が
  検査されました。ギニア、シエラレオネの両国の80%以上と比較して、リベリアでは60%以上の検体が
  遺体から収集されております。全検体の半分以上(55%)が首都モンロビアを含む、モンセラード郡から
  収集されています。

【出典】
 WHO, Ebola
 Ebola Situation Report - 10 June 2015
 http://apps.who.int/ebola/en/current-situation/ebola-situation-report-10-june-2015