(No.101)

エボラ出血熱の流行状況45 
平成27年6月24日更新

2015年6月24日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約
・ 6月21日末の週に、ギニアとシエラレオネから計20人のEVD確定例が報告されました(前週24人)。

5月末以降は患者数が20人から27人の間で推移していますが、感染源不明の患者やコミュニティ内の死後の検査で確認される患者が発生し続けています。ギニアでは、患者12人が前週と同じ4県(ボケ、コナクリ、デュブレカ、フォレカリア)から報告されました。シエラレオネでは、患者8人が3地区(カンビア、ポート・ロコ、フリータウン)から報告されました。フリータウンでは、患者が2週間以上発生していませんでしたが、患者が新たに報告されました。

 ・ 過去3週間、ギニアでは同じ4県から患者が報告されていますが、県内における感染伝播が活発な地域は
変わっており、いくつかの地域では拡大しています。

 ・ ギニアビサウの国境近傍のボケ県では、主な流行地域が沿岸地域のカミサールから中心街に近いボケの
中心部に移りました。特に懸念されているのは、ボケから報告された患者2人が医療従事者であったことです。

 ・ コナクリから報告された患者1人はマタム地域から発生して、感染源は不明でした。2週間以上前に
コナクリから報告された患者3人が、ハイリスクかつ未追跡の接触者を多数発生させたと示唆されています。

 ・数か月にわたって患者が発生しているフォレカリア県では、複数の感染伝播の鎖が3地域にまたがって
おり、最も複雑な状態であり続けています。フォレカリア県から報告された5人の患者のうち3人は、感染源不明、もしくは感染伝播の鎖からの発生でした。そして、これらの3人の患者のうち 2人は、3月中旬以降は確定患者が報告されていなかったベンティから報告されました。ベンティの患者2人と県下の隣接地域の患者と関連している可能性があるもう1人の患者は、コミュニティ内の死後の検査で確認されました。

 ・ギニアと比較して、シエラレオネの感染伝播は、カンビアとポート・ロコのいくつかの首長支配地域での
集団発生で、過去3週間は地理的に限定されています。しかし、3月初旬以降で初めて、ポート・ロコにあるマランパの首長支配地域から患者2人が報告されました。患者は、出産時に死亡した母親と新たに生まれた
子供で、多くのハイリスク接触者が確認されています。首都フリータウンを含む1地区で発生した患者2人は、患者が2週間以上発生していない状況で報告されました。この2人の患者はともに、市街の人口密集地域であるマガジン・ワーフ地区で発生しました。1人の患者は以前の患者との疫学的な関連がありますが、2人とも多数のハイリスク接触者と関連があります。

 ・ギニアから報告された12人の患者のうち6人、シエラレオネから報告された8人の患者のうち4人だけが、以前の患者との接触者で登録されていました。20人の患者のうち4人は、コミュニティ内の死後の検査で確認されました。ギニア4県では2,003人の接触者、シエラレオネ3地区では1,023人の接触者が健康監視されています。

 ・ギニアでは、医療従事者の感染は2か月以上ありませんでしたが、ボケから医療従事者2人の新たな感染が報告されました。シエラレオネでは、5月14 日以降で初めて医療従事者1人の新たな感染が報告されました。流行が始まって以来、ギニア、リベリア、シエラレオネから医療従事者872人の感染が報告され ており、
うち507人が死亡しています。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
 ・ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて27,443人のEVD患者が発生しており、11,207人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者
および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。6月21日までの7日間に、ギニアでは12人、シエラレオネでは8人の新たな確定例が報告されました。リベリアでの流行は5月9日に終息しました。

 ・診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。

 ・医療従事者の感染者数は流行3か国で合計872人となっており、うち507人が死亡しています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の症例数

死亡者数

ギニア

確定

3,257

34

2,030

可能性

443

未報告

443

疑い

18

未報告

データなし

国別総数

3,718

34

2,473

リベリア*

確定

3,151

0

データなし

可能性

1,879

未報告

データなし

疑い

5,636

未報告

データなし

国別総数

10,666

0

4,806

シエラレオネ

確定

8,657

37

3,562

可能性

287

未報告

208

疑い

4,115

未報告

158

国別総数

13,059

37

3,928

総数

確定

15,065

71

データなし

可能性

2,609

未報告

データなし

疑い

9,769

未報告

データなし

総数

27,443

71

11,207

※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
* 最後の確定例が埋葬されて42日が経過した後に、リベリアの流行は終息が宣言されました。現在、3か月の高警戒期間に入っています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*(人口10万対)

年齢別♯(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,563

1,689

508

1,859

840

(29)

(31)

(11)

(40)

(54)

リベリア

1,911

1,838

561

2,060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,768

5,050

1,966

5,561

2,116

(167)

(174)

(81)

(215)

(286)

※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
 ・マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。

 ・5月12日、WHOはイタリアにおけるEVD確定例の報告を受けました。患者はボランティア活動を行っていた医療従事者で、5月7日にシエラレオネからイタリアに帰国しました。5月10日に発症して、5月11日に
サルデーニャ島のサッサリ病院の感染症病棟に搬送されました。5月12日に臨床検体がEVD陽性と確認され、患者はローマの国立感染症研究所へ隔離移送されました。現在、19人の接触者全員が健康監視を終了して
おり、患者は6月9日に検査で陰性が確認されました。

 ・5月9日、リベリアにおけるEVD流行は終息が宣言されました。過去に広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生した国は新たな確定例を認めず、最後の確定例を3月28日に埋葬して42日が経過しました。現在、3か月間の高警戒期間に入っています。6月21日末の週は、1日平均33検体が検査されました。

【出典】
 WHO, Ebola
 Ebola Situation Report - 24 June 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-24-june-2015