(No.106)

中東呼吸器症候群コロナウイルス感染症確定例(181)- サウジアラビア 
平成27年7月3日更新

 2015年6月19日から30日の間に、サウジアラビアの国際保健規則(IHR)担当窓口はWHO(世界保健機関)に対して、6人の中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染確定例を報告しました。
詳細は以下の通りです。

1.リヤド在住の65歳女性は6月15日に発症し6月25日に入院しました。患者は基礎疾患があり6月27日の
検査でMERS-CoV陽性でした。現在ICUに入院し危篤状態です。発症前14日以内の既知の危険因子との
曝露歴について調査中です。

2.リヤド在住の40 歳男性は6月24日に発症し6月26日に入院しました。患者は基礎疾患があり6月27日の
検査でMERS-CoV陽性でした。現在ICUに入院し危篤状態です。発症前14日以内の既知の危険因子との
曝露歴について調査中です。

3.フフーフ市在住の41歳男性は6月19日に発症し6月21日の検査でMERS-CoV陽性でした。患者は、MERS-CoVが集団発生した病院に勤務しMERS-CoV感染患者と確定された職員(DON6月23日更新情報〈関空HP:海外感染症情報2015 No.99〉の1番目の症例)の家族です。患者は基礎疾患があり自宅隔離中でしたが、
症状が悪化し6月23日に入院しました。発症前14日以内の他の既知の危険因子との曝露歴はありません。
現在状態は安定しており陰圧室で隔離されています。

4. フフーフ市で勤務している医療従事者の外国籍の60歳女性は6月14日に発症し翌日入院しました。6月19日の検査でMERS-CoV陽性でした。患者は基礎疾患がありMERS-CoVの集団感染があった病院に勤務していました。現在状態は安定しており陰圧室で隔離されています。この病院に入院していたMERS-CoV感染患者と関わった可能性について調査中です。

5.フフーフ市在住の61歳女性は5月30日に発症し同日MERS-CoVの集団感染している病院に入院しました。患者は基礎疾患があり、6月17日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在ICUに入院し危篤状態です。
入院していたMERS-CoV感染患者と関わった可能性について調査中です。発症前14日以内の他の既知の
危険因子との曝露歴についても調査中です。

6.フフーフ市在住の52歳男性は4月29日から別の疾患で入院加療中に、6月16日に発症しました。MERS-CoVの集団感染があった病院でした。患者は基礎疾患があり6月18日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在、状態は安定しており陰圧室で隔離されています。入院していたMERS-CoV感染患者と関わった可能性について調査中です。家庭内及び医療従事者で接触した人の追跡調査が実施されています。
サウジアラビアのIHR担当窓口はWHOにも6月23日既報(関空HP:海外感染症情報2015 No.99)の3番目の
症例(54歳女性)が死亡したことを報告しています。

WHOには、2012年9月以降全世界で1,363人のMERS-CoV感染確定例が報告されており、うち487人が
関連死しています。

WHO推奨
 現在の状況と入手可能な情報に基づいて、WHOは全ての加盟国に対して重症急性呼吸器感染症(SARI)への監視を継続することと、通常とは異なる呼吸器感染症について再調査するように勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を押さえるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、早い時期に患者をMERS-CoVであると診断することは常にできるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者を治療する
場合には、標準予防策に加えて飛沫予防策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、
あるいは確診症例を治療する場合には、接触予防策および目の防護策を追加すべきです。

 さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行う必要があります。今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考えられます。したがって、これらの人は、ウイルスの
存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという、一般的な衛生手順を厳守すべきです。

 食品衛生の習慣は遵守しなければなりません。ラクダの生乳あるいは尿を飲まないようにし、また、
調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。
WHOは注意深く状況を監視しています。WHOは今回の事例に関して、持続的なヒト-ヒト感染の証拠はないため、韓国への渡航や貿易を制限することを推奨していません。影響を受けた国を往き来する旅行者の間でMERS-CoVの認識を上げることは、公衆衛生事業として良いことです。

 大規模な集会を予定している主催国の公衆衛生当局は、WHOが発行しているMERS-CoVに関しての勧告と
ガイダンスが必ず適切に参照され、これらが関係者全てに確実に周知できるようにしなければなりません。
また、公衆衛生当局は大規模な集会への訪問者が保健システムによって対応できるように最大の収容人数に
備えて計画しなければなりません。

 【出典】
 WHO, Global Alert and Response (GAR).
 Middle East Respiratory Syndrome coronavirus (MERS-CoV) – Saudi Arabia,
 3 July 2015
http://www.who.int/csr/don/03-july-2015-mers-saudi-arabia/en/