(No.117)

エボラ出血熱の流行状況 48
平成27年7月15日更新

 

 2015年7月15日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。


要約
・7月12日までの1週間に合計30人(ギニア13人、リベリア3人、シエラレオネ14人)のEVD確定例が報告
されました。前週と合計人数は同じでしたが感染伝播の発生地に変化がありました。直近の数ヶ月間で
初めて、ほとんどの報告例がギニアの首都コナクリとシエラレオネの首都フリータウンからでした。
 コナクリからの報告例9人とフリータウンからの報告例10人全員が、これまでの症例との接触者として
登録されていたか、既知の感染伝播の連鎖との疫学的な関連がありました。7月12日までの1週間に報告
された30人のうち1人は感染源が不明です。しかし、30人中7人(23%)がEVD陽性と判明したのは
死亡後の検査でしか判っていません。これは症例調査の改善が進んでいるにもかかわらず、感染早期に
接触者の症状を見つけ、感染伝播を最小限に抑えることを目的とした感染連鎖や接触者追跡が、
いくつかの地域ではまだ課題であることを示しています。

・ギニアではコナクリとフォレカリア県やフリア県で症例が報告されています。ボケ県の北部は1ヶ月以上
感染伝播の発生地となっていましたが、ここ11日間は報告例がありませんでした。コナクリから9人が報告され、うち7人はラトマ地区での感染伝播の連鎖が関連していました。フォレカリア県から報告された3人のうち1人は医療従事者でした。医療従事者の曝露源は調査中です。ギニアで残った症例はフリア県からの1人でした。フリア県は40日間以上報告例がありませんでした。この症例は経過観察をし損ねたボケ県からの接触者でした。

・7月12日までの1週間にリベリアから3人の新規症例が報告され、6月29日から合計6人となっています。
リベリアは3月20日から新規症例の報告はなく、7月12日までの1週間に報告された3人全員が前週に報告
された3人と同じ感染連鎖に関連した登録済みの接触者でした。7月12日の週に報告された症例の1人は
モンロビア近隣のモントセラド郡の隔離下にある家で発症し、エボラ治療センターへ搬送されました。
感染源は調査中です。感染伝播の最も考えられる原因がリベリアでの生存者からのウイルスの再出現に
よる可能性が高いと、ウイルスのゲノム配列の予備解析で強く示しています。

・シエラレオネではフリータウン、カンビア、ポート・ロコから14人が報告されました。フリータウン
での10人のうち、8人は数週間で感染伝播の発生源となった、市内のマガジン・ワーフの家で隔離
されていました。残り2人は市内の他の地区からの報告でしたが、マガジン・ワーフの感染連鎖と
関連していました。今週、カンビアの2つの首長支配地域から報告がありました(先週は4地域から)。
北西部の首長支配地域であるサムから症例が2人報告され、うち1人は地域内で死亡しました。
首長支配地域のトンコ・リンバから症例が1人報告されました。
ポート・ロコからは首長支配地域であるマランから症例が1人報告されました。

・7月12日現在、ギニアで6県、リベリアで2郡、シエラレオネの3地区で健康監視中の接触者は
3,552人です。
 7月12日までの1週間に、ギニアのフォレカリアから新たに医療従事者1人の感染が報告されました。流行の発生以来、ギニア、リベリア、シエラレオネから876人の医療従事者の感染が報告されており、509人が
死亡しています。


1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国

・ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて27,642人のEVD患者が発生しており、11,261人が死亡(多くの患者の検査結果不明ですが、可能性の高い患者および疑い患者の死亡者を含む)しています(表1)。

・7月12日までの1週間に、ギニアでは13人、リベリアで3人、シエラレオネでは14人の新たな確定例が報告されました。
・診断確定例と可能性例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは約4倍感染しやすく、シエラレオネでは約3倍感染しやすくなっています。

・7月12日の週に、ギニアのフォレカリアで1人の医療従事者の感染が報告されました。医療従事者の
感染者数は流行3か国で合計876人となっており、うち509人が死亡しています。


2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国

・リベリアでは、42日間連続でEVD患者の新規発生がなかったことを受けて、2015年5月19日にエボラ
出血熱流行の終息を宣言しました。リベリアは3ヶ月間の高度な監視期間に入りました。その間、EVD
感染の可能性がある患者からおよそ血液検体30本とスワブが毎日採取され検査されています。6月29日に
高度な監視体制により、リベリアのマージビ郡で患者が発見され、今年3月20日以来初めての患者
となります。患者は17歳の男性で6月21日に発症し6月28日に死亡しています。検査でEVD陽性でした。
7月12日の週に報告された症例の1人はモンロビア近隣のモントセラド郡の隔離下にある家で発症し、
エボラ治療センターへ搬送されました。感染源については調査中です。感染伝播の最も考えられる原因が
リベリアでの生存者からのウイルスの再出現による可能性が高いと、ウイルスのゲノム配列の予備解析で
強く示しています。

・マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の6か国において、広範囲に及ぶ
深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。

・5月12日、WHOはイタリアにおけるEVD確定例の報告を受けました。患者は医療従事者で、2015年
6月9日に検査で陰性が確認され、翌日退院しました。現在、19人の接触者全員が21日間の健康監視を
終了しています。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,300

43

2,056

可能性例

450

未報告

450

疑い例

10

未報告

データなし

国別総数

3,760

43

2,506

リベリア

確定例

3,151

-

データなし

可能性例

1,879

-

データなし

疑い例

5,636

-

データなし

国別総数

10,666

-

4,806

リベリア※

確定例

6

6

2

可能性例

1

1

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

7

7

2

シエラレオネ

確定例

8,688

31

3,581

可能性例

287

未報告

208

疑い例

4,234

未報告

158

国別総数

13,209

31

3,947

総数

確定例

15,145

80

データなし

可能性例

2,617

1

データなし

疑い例

9,880

未報告

データなし

総数

27,642

1

11,261

・表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※リベリアでは2015年5月9日に流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を
遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。現在、2015年5月9日以降に
報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると
考えられています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,574

1,716

516

1,874

855

(29)

(32)

(11)

(40)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2,060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,792

5,081

1,978

5,592

2,129

(168)

(175)

(82)

(215)

(288)


・表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§データは5月9日までのものです。


【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 15 July 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-15-july-2015