エボラ出血熱の流行状況(49)
2015年7月22日更新
2015年7月22日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。
要約
・7月19日末の週に、合計26人のEVD確定例(ギニア22人、シエラレオネ4人)が報告されました。リベリア
からの新たな患者の報告はありませんでした。全症例の半数以上が、ギニアの首都コナクリとシエラレオネの首都フリータウンから2週連続で報告されています。対照的に、最近の感染伝播が激しかったギニアのボケやシエラレオネのカンビアなどの地域からは、それぞれ18日間と9日間、新たな確定例は報告されていません。
2人の患者を除いて、ギニアの首都コナクリから報告された13人を含めた患者全員が、これまでの患者との接触で登録された中から発生しており、最近の数週間にみられる接触者の追跡と患者調査の改善傾向が続いていることが示されています。これは、流行が始まって以降、接触者の中から発生する患者の割合が最も 高い
状況です。しかし、フリータウンから報告された2人の患者のうちの1人は感染源が不明で、さらなる
感染経路が存在する高い危険性があると示唆されています。加えて、ギニアから報告された2人は、
コミュニティ内での死後の検査において、EVD陽性であることが確認されました。
・ギニアでは、コナクリ、コヤ県、フォレカリア県から患者が報告されました。コナクリから13人の患者が報告されており、全員が2つの感染伝播に関連した接触者として登録されていました。このうち2人は
医療従事者でした。コナクリに隣接するコヤ県では、マネアから2人の患者が報告されました。4月以降に
コヤで報告された最初の患者です。この2人は、フォレカリア県のベンティにおける感染連鎖に関連して登録された接触者でした。フォレカリア県から報告された7人の患者のうち6人は、ベンティの同じ感染連鎖に
関連して登録された接触者でした。フォレカリア県から報告された残りの患者1人は、アラソーヤから報告
されており、感染源は不明です。
・リベリアでは、7月19日末の週に新たな患者は報告されませんでした。6月29日以降に6人の確定例が報告され、うち2人は死亡、2人は退院、残り2人はエボラ治療センターで観察下にあります。7月21日の時点で、今回の感染連鎖に関連した接触者56人が健康監視されています。18人の接触者が21日間の健康監視を終了
しており、新たな確定例が発生しなければ、8月2日に全員の健康監視が終了する予定です。
・シエラレオネでは、フリータウンとポート・ロコから4人の患者が確認されました。フリータウンから報告された患者2人のうち1人は、EVD陽性が検出された医療従事者で、自発的に隔離施設に滞在していました。
もう1人は、前週に8人の患者が報告された市内のマガジン・ワーフ近郊の地域医療施設の外で、症状(嘔吐と下痢)が進行した状態で発見されました。しかし、この患者は、マガジン・ワーフの感染連鎖のどの患者とも接触が登録されていませんでした。この患者は固定された住所を持たず、発見前にどの程度の期間を感染力のある状態で過ごしたのか不明であるという事実により、接触者の追跡が複雑になっています。シエラレオネで報告された残りの患者2人は、ポート・ロコの首長支配地域のマランパから報告されました。この2人は、
6月中旬に出産時に死亡したEVD陽性の母親に繋がる感染連鎖に関連して登録された接触者です。
・イタリアは、同国における最初かつ唯一のEVD患者がEVD陰性の確認後に退院して以降、42日が経過しており、その間に新たな患者が確認されなかったため、7月20日に終息が宣言されました。
・7月19日末の週に、ギニアから新たに医療従事者2人の感染が、シエラレオネから1人の感染が報告
されました。流行が始まって以降、ギニア、リベリア、シエラレオネから879人の医療従事者の感染が
報告されており、うち510人が死亡しています。
1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
・ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて27,705人のEVD患者が発生しており、11,269人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。7月19日末の週に、ギニアでは22人、
シエラレオネでは4人の新たな確定例が報告されました。
・診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。
・7月19日末の週に、3人の医療従事者の感染(ギニアで2人、シエラレオネで1人)が報告されました。流行が始まって以降、医療従事者の感染者数は流行3か国で合計879人となっており、うち510人が
死亡しています。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
・表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると考えられて
います。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数
・ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§データは2015年5月9日までのものです。
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
・リベリアでは、42日間連続で新たなEVD確定例が発生しなかったことを受けて、2015年5月9日に
EVD流行の終息が宣言されました。リベリアは3ヶ月間の高警戒期間に入り、その期間に、EVD感染が
疑われる患者から、約30検体の血液検体と口腔スワブが毎日採取され、EVDの検査が実施されていました。
高警戒期間中の6月29日にマージビ郡でEVD陽性例が発見され、3月20日以降で初めての確定例と
なりました。患者は17歳の男性で、6月21日に発症して6月28日に死亡し、同日にEVD陽性が検出
されました。7月12日末の週に、最初の確定例の接触者5人からEVD陽性が確認されました。
6月29日以降に6人の確定例が報告され、うち2人は死亡、2人は退院、残り2人はエボラ治療
センターで観察下にあります。7月21日の時点で、今回の感染連鎖に関連した接触者56人が健康監視
されています。18人の接触者が21日間の健康監視を終了しており、新たな確定例が発生しなければ、
8月2日に全員の健康監視が終了する予定です。感染の起源は調査中です。最も高い可能性として、
リベリアの生存者に由来したウイルスではなく、ギニアやシエラレオネからの輸入による再出現
であることが、ウイルスのゲノム配列の予備解析で示唆されています。
・イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
・イタリアにおける確定例については、EVD陰性の確認後に退院して以降、42日が経過しており、その間に新たな患者が確認されなかったため、7月20日に終息が宣言されました。
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 22 July 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-22-july-2015
要約
・7月19日末の週に、合計26人のEVD確定例(ギニア22人、シエラレオネ4人)が報告されました。リベリア
からの新たな患者の報告はありませんでした。全症例の半数以上が、ギニアの首都コナクリとシエラレオネの首都フリータウンから2週連続で報告されています。対照的に、最近の感染伝播が激しかったギニアのボケやシエラレオネのカンビアなどの地域からは、それぞれ18日間と9日間、新たな確定例は報告されていません。
2人の患者を除いて、ギニアの首都コナクリから報告された13人を含めた患者全員が、これまでの患者との接触で登録された中から発生しており、最近の数週間にみられる接触者の追跡と患者調査の改善傾向が続いていることが示されています。これは、流行が始まって以降、接触者の中から発生する患者の割合が最も 高い
状況です。しかし、フリータウンから報告された2人の患者のうちの1人は感染源が不明で、さらなる
感染経路が存在する高い危険性があると示唆されています。加えて、ギニアから報告された2人は、
コミュニティ内での死後の検査において、EVD陽性であることが確認されました。
・ギニアでは、コナクリ、コヤ県、フォレカリア県から患者が報告されました。コナクリから13人の患者が報告されており、全員が2つの感染伝播に関連した接触者として登録されていました。このうち2人は
医療従事者でした。コナクリに隣接するコヤ県では、マネアから2人の患者が報告されました。4月以降に
コヤで報告された最初の患者です。この2人は、フォレカリア県のベンティにおける感染連鎖に関連して登録された接触者でした。フォレカリア県から報告された7人の患者のうち6人は、ベンティの同じ感染連鎖に
関連して登録された接触者でした。フォレカリア県から報告された残りの患者1人は、アラソーヤから報告
されており、感染源は不明です。
・リベリアでは、7月19日末の週に新たな患者は報告されませんでした。6月29日以降に6人の確定例が報告され、うち2人は死亡、2人は退院、残り2人はエボラ治療センターで観察下にあります。7月21日の時点で、今回の感染連鎖に関連した接触者56人が健康監視されています。18人の接触者が21日間の健康監視を終了
しており、新たな確定例が発生しなければ、8月2日に全員の健康監視が終了する予定です。
・シエラレオネでは、フリータウンとポート・ロコから4人の患者が確認されました。フリータウンから報告された患者2人のうち1人は、EVD陽性が検出された医療従事者で、自発的に隔離施設に滞在していました。
もう1人は、前週に8人の患者が報告された市内のマガジン・ワーフ近郊の地域医療施設の外で、症状(嘔吐と下痢)が進行した状態で発見されました。しかし、この患者は、マガジン・ワーフの感染連鎖のどの患者とも接触が登録されていませんでした。この患者は固定された住所を持たず、発見前にどの程度の期間を感染力のある状態で過ごしたのか不明であるという事実により、接触者の追跡が複雑になっています。シエラレオネで報告された残りの患者2人は、ポート・ロコの首長支配地域のマランパから報告されました。この2人は、
6月中旬に出産時に死亡したEVD陽性の母親に繋がる感染連鎖に関連して登録された接触者です。
・イタリアは、同国における最初かつ唯一のEVD患者がEVD陰性の確認後に退院して以降、42日が経過しており、その間に新たな患者が確認されなかったため、7月20日に終息が宣言されました。
・7月19日末の週に、ギニアから新たに医療従事者2人の感染が、シエラレオネから1人の感染が報告
されました。流行が始まって以降、ギニア、リベリア、シエラレオネから879人の医療従事者の感染が
報告されており、うち510人が死亡しています。
1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
・ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて27,705人のEVD患者が発生しており、11,269人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。7月19日末の週に、ギニアでは22人、
シエラレオネでは4人の新たな確定例が報告されました。
・診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。
・7月19日末の週に、3人の医療従事者の感染(ギニアで2人、シエラレオネで1人)が報告されました。流行が始まって以降、医療従事者の感染者数は流行3か国で合計879人となっており、うち510人が
死亡しています。
表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 |
症例定義 |
症例数 |
21日以内の 症例数 |
死亡者数 |
ギニア |
確定例 |
3,322 |
53 |
2,062 |
可能性例 |
450 |
未報告 |
450 |
|
疑い例 |
11 |
未報告 |
データなし |
|
国別総数 |
3,783 |
53 |
2,512 |
|
リベリア |
確定例 |
3,151 |
0 |
データなし |
可能性例 |
1,879 |
未報告 |
データなし |
|
疑い例 |
5,636 |
未報告 |
データなし |
|
国別総数 |
10,666 |
0 |
4,806 |
|
リベリア※ |
確定例 |
6 |
6 |
2 |
可能性例 |
0 |
未報告 |
データなし |
|
疑い例 |
データなし |
未報告 |
データなし |
|
国別総数 |
6 |
6 |
2 |
|
シエラレオネ |
確定例 |
8,692 |
27 |
3,583 |
可能性例 |
287 |
未報告 |
208 |
|
疑い例 |
4,271 |
未報告 |
158 |
|
国別総数 |
13,250 |
27 |
3,949 |
|
総数 |
確定例 |
15,171 |
86 |
データなし |
可能性例 |
2,616 |
未報告 |
データなし |
|
疑い例 |
9,918 |
未報告 |
データなし |
|
総数 |
27,705 |
86 |
11,269 |
・表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると考えられて
います。
表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数
国名 |
症例数 |
||||
性別* (人口10万対) |
年齢別♯ (人口10万対) |
||||
男性 |
女性 |
0-14歳 |
15-44歳 |
45歳以上 |
|
ギニア |
1,587 |
1,730 |
526 |
1,889 |
857 |
(29) |
(32) |
(11) |
(41) |
(55) |
|
リベリア§ |
1,911 |
1,838 |
561 |
2,060 |
703 |
(96) |
(93) |
(33) |
(121) |
(132) |
|
シエラレオネ |
4,792 |
5,081 |
1,978 |
5,592 |
2,129 |
(167) |
(175) |
(82) |
(216) |
(288) |
・ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§データは2015年5月9日までのものです。
2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
・リベリアでは、42日間連続で新たなEVD確定例が発生しなかったことを受けて、2015年5月9日に
EVD流行の終息が宣言されました。リベリアは3ヶ月間の高警戒期間に入り、その期間に、EVD感染が
疑われる患者から、約30検体の血液検体と口腔スワブが毎日採取され、EVDの検査が実施されていました。
高警戒期間中の6月29日にマージビ郡でEVD陽性例が発見され、3月20日以降で初めての確定例と
なりました。患者は17歳の男性で、6月21日に発症して6月28日に死亡し、同日にEVD陽性が検出
されました。7月12日末の週に、最初の確定例の接触者5人からEVD陽性が確認されました。
6月29日以降に6人の確定例が報告され、うち2人は死亡、2人は退院、残り2人はエボラ治療
センターで観察下にあります。7月21日の時点で、今回の感染連鎖に関連した接触者56人が健康監視
されています。18人の接触者が21日間の健康監視を終了しており、新たな確定例が発生しなければ、
8月2日に全員の健康監視が終了する予定です。感染の起源は調査中です。最も高い可能性として、
リベリアの生存者に由来したウイルスではなく、ギニアやシエラレオネからの輸入による再出現
であることが、ウイルスのゲノム配列の予備解析で示唆されています。
・イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。
・イタリアにおける確定例については、EVD陰性の確認後に退院して以降、42日が経過しており、その間に新たな患者が確認されなかったため、7月20日に終息が宣言されました。
【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 22 July 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-22-july-2015