(No.125)

中東呼吸器症候群コロナウイルス感染確定例(192)-サウジアラビア
平成27年7月29日更新

 
 2015年7月16日から25日の間にサウジアラビアの国際保健規則(IHR)担当窓口はWHO (世界保健機関)に対して、新たに死亡者1人を含む8人の中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の感染者を報告
しました。詳細は以下の通りです。

1.リヤド市在住の30歳男性は7月22日に発症し同日入院しました。患者には基礎疾患はなく7月24日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在患者の状態は安定しており陰圧室で隔離中です。下記7例目のMERS-CoV確定
患者との接触歴があります。発症前14日以内の他の既知の危険因子との曝露歴は調査中です。

2.リヤド市在住の外国籍の28歳男性は7月22日に発症し翌日入院しました。患者に基礎疾患はなく7月24日の
検査でMERS-CoV陽性でした。現在患者の状態は安定し陰圧室に入院中です。下記7例目のMERS-CoV確定
患者との接触歴がありますが、ラクダの生乳や肉の喫食歴はありません。発症前14日以内の他の既知の
危険因子との曝露歴は調査中です。

3.リヤド市在住の外国籍の54歳男性は、自身の基礎疾患とは関連のない病気で7月20日より入院し同日発症しました。7月22日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在患者は危篤状態でICU(集中治療室)に入院中です。同じ病院に入院加療中のMERS-CoV確定患者(下記5例目-7月24日更新情報の2例目)や医療従事者との
疫学的関連の可能性について調査中です。

4.リヤド市在住の52歳女性は7月17日に発症し同日入院しました。患者には基礎疾患があり7月21日の検査でMERS-CoV陽性で22日に死亡しました。患者は下記5例目患者の家族でした。

5.リヤド市在住の56歳男性は7月13日に発症し7月15日に入院しました。患者には基礎疾患があり7月19日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在患者は危篤状態でICUに入院中です。患者は頻繁にラクダと接触
しており生乳も飲んでいます。

6.ラニア(Raniah)市在住の60歳女性は7月12日に発症し7月19日に入院しました。患者は基礎疾患があり
7月21日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在患者の状態は安定し陰圧室に隔離されています。患者はラクダ農場がいくつかある地域に住んでいますがラクダとの接触歴やラクダの生乳の喫飲歴はありません。発症前14日以内の他の既知の危険因子との曝露歴は調査中です。

7.リヤド市在住の外国籍の32歳男性は7月15日に発症し7月19日に入院しました。患者に基礎疾患はなく
7月20日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在患者は危篤状態ICUに入院中です。発症前14日以内の他の
既知の危険因子との曝露歴は調査中です。

8.フフーフ市在住の93歳男性は7月12日に発症し同日入院しました。患者は基礎疾患があり7月21日の検査でMERS-CoV陽性でした。現在患者の状態は安定し陰圧室に隔離されています。患者はラクダ農場を所有していますがラクダとの接触歴はなくラクダの生乳を飲んだことはありません。発症前14日以内の他の既知の
危険因子との曝露歴は調査中です。家庭内及び医療従事者で接触した人の追跡調査が実施されています。
サウジアラビアのIHR担当窓口はWHOにも7月24日更新情報(関空HP:海外感染症情報2015 No.123)の
4番目の患者(76歳男性)と6月23日更新情報(関空HP:海外感染症情報2015 No.99)の2番目の患者(69歳
女性)が死亡したことを報告しています。
WHOには、2012年9月以降全世界で1,382人のMERS-CoV感染確定例が報告されており、うち493人が
関連死しています。


(以下網掛け部は7月24日更新分と同文)
WHO推奨
 現在の状況と入手可能な情報に基づいて、WHOは全ての加盟国に対して重症急性呼吸器感染症(SARI)への監視を継続することと、通常とは異なる呼吸器感染症について再調査するように勧めています。
 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を押さえるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、早い時期に患者をMERS-CoVであると診断することは常にできるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に
対して常に一貫した標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者を治療する場合には、標準予防策に加えて飛沫予防策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある
症例、あるいは確診症例を治療する場合には、接触予防策および目の防護策を追加すべきです。
 さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行う必要が
あります。今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全の
ある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考えられます。したがって、これらの人は、
ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づく
こと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを
行い、病気の動物との接触を避けるという、一般的な衛生手順を厳守すべきです。
 食品衛生の習慣は遵守しなければなりません。ラクダの生乳あるいは尿を飲まないようにし、また、
調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。
 WHOは注意深く状況を監視しています。WHOは今回の事例に関して、持続的なヒト-ヒト感染の証拠は
ないため、韓国への渡航や貿易を制限することを推奨していません。影響を受けた国を往き来する旅行者の
間でMERS-CoVの認識を上げることは、公衆衛生事業として良いことです。
 大規模な集会を予定している主催国の公衆衛生当局は、WHOが発行しているMERS-CoVに関しての勧告とガイダンスが必ず適切に参照され、これらが関係者全てに確実に周知できるようにしなければなりません。
また、公衆衛生当局は大規模な集会への訪問者が保健システムによって対応できるように最大の収容人数に
備えて計画しなければなりません。



[出典]
 WHO, Global Alert and Response (GAR).
 Middle East Respiratory Syndrome coronavirus (MERS-CoV) – Saudi Arabia,
 29 July 2015

http://www.who.int/csr/don/29-july-2015-mers-saudi-arabia/en/