(No.126)

エボラ出血熱の流行状況(51)
平成27年8月5日更新

 
2015年8月5日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約
1.8月2日末の週に合計2人のEVD確定例(ギニア1人、シエラレオネ1人)が報告されました。これは2014年3月以来最も報告数の少ない週で、3週連続で症例数が減少しています。この減少は対策の全ての要素を
改善し続けた成果であり、特に接触者追跡と症例調査の能力の強化は、数か月前に比べ確実により良く
理解され制御されています。まだ、短期的、中期的な感染伝播や症例数の増加のリスクがあるので、
この先数か月間はこれらの対策が維持し続けることが重要です。ギニアの5県とシエラレオネの4地域で
おおよそ2,000人の接触者がまだ健康監視中で、全力で努力しているにもかかわらず両国に追跡できず
経過観察できなかった接触者が少数います。ギニアとシエラレオネでの最近のハイリスク感染伝播の
例は、今後さらに症例が出現する可能性がとても高いです。
2.継続的な課題を示すと、ギニアからの報告例1例は経過観察できなかった接触者であり、さらなる
高リスクの接触者を多く発生させる可能性があります。患者は28歳女性で、首都コナクリのラトマ地区
で数週間以上前に何例かの症例を発生させた既知の感染伝播と関係があります。経過観察し損ねた後、
コナクリから南に下り、フォレカリアを抜けてシエラレオネのカンビアに入りました。報告によると、
フォレカリア経由でラトマへ戻る前に信仰療法を行う人のもとを訪ねました。ギニアとシエラレオネの
全ての接触者を確認し追跡するために、集中的に努力が傾けられているところです。ギニアでは
西部5県で1,080人の接触者が健康監視下にあり、その大半(>90%)はコナクリとフォレカリアにいる
接触者です。
3.ギニアでの" Ebola ça suffit!"包囲ワクチン接種試験の途中分析では、治験中のrVSV-ZEBOVエボラ
ワクチンがEVDに曝露された人々に予防効果を示しました。この治験はギニアで確定患者の周りにいる
人々全てがすぐにワクチンが接種できるよう継続する予定です。以前は患者が確定した後、すぐに
ワクチンが接種されるか、21日後に接種されるかランダムに割り当てられていました。
4.8月2日末の週にリベリアでは新たな患者報告はありませんでした。全ての接触者が現在、21日間の
経過観察を終了しました。最後の患者は7月23日に2回目の検査の結果もEVD陰性であり、退院しました。
5.シエラレオネでは今週、先週トンコリリで報告された患者の600人以上の接触者の中の1人が発症したと報告されました。新たな患者は最初の患者を看病していた家族です。最初の患者との接触の特徴から、
40人以上の接触者が感染するリスクが高いと考えられ、さらなる患者が出現する可能性が高いです。
最初の患者はトンコリリ行く前にフリータウンで感染したと考えられており、感染源について
現在調査中です。811人の接触者が現在経過観察中で、そのほとんどがトンコリリにいます。
8月2日末の週にギニア、ラトマから報告された患者と関連する全ての接触者の同定が集中的に
行われていますが、カンビアでの既知の感染伝播と関係する接触者全てが21日間の経過観察を終了
しました。
6.ここ3週間、どの流行国からも医療従事者の感染の報告がありませんでした。
流行が始まって以降、ギニア、リベリア、シエラレオネから880人の医療従事者の感染が報告されており、
うち512人が死亡しています。


1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
1.8月2日までにギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて
27,862人のEVD患者が発生しており、11,281人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。8月2日末の週に、
ギニアでは1人、シエラレオネでも1人の新たな確定例が報告されました。
2.診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。
3.8月2日末の週に、新たな医療従事者の感染は報告されませんでした。ギニア、リベリア、シエラレオネで880人の医療従事者の感染し、うち512人が死亡したと報告されています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,327

27

2,070

可能性例

452

未報告

452

疑い例

5

未報告

データなし

国別総数

3,784

27

2,522

リベリア※

確定例

3,151

0

データなし

可能性例

1,879

未報告

データなし

疑い例

5,636

未報告

データなし

国別総数

10,666

0

4,806

リベリア※2

確定例

6

0

2

可能性例

0

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

0

2

シエラレオネ

確定例

8,695

7

3,585

可能性例

287

未報告

208

疑い例

4,424

未報告

158

国別総数

13,406

7

3,951

総数

確定例

15,179

34

データなし

可能性例

2,618

未報告

データなし

疑い例

10,065

未報告

データなし

総数

27,862

34

11,281

※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると考えられて
います。

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,588

1,734

528

1,892

857

(29)

(32)

(11)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2,060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,792

5,081

1,978

5,592

2,129

(168)

(175)

(82)

(216)

(288)

※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§データは2015年5月9日までのものです。


2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
1.リベリアでは、42日間連続で新たなEVD確定例が発生しなかったことを受けて、2015年5月9日に
EVD流行の終息が宣言されました。リベリアは3ヶ月間の高警戒期間に入り、その期間に、EVD感染が
疑われる患者から、約55検体の血液検体と口腔スワブが毎日採取され、EVDの検査が実施されて
いました。高警戒期間中の6月29日にマージビ郡でEVD陽性例の死亡例が発見され、3月20日以降で
初めての確定例となりました。患者は17歳の男性で、6月21日に発症して6月28日に死亡し同日に
EVD陽性が検出されました。7月12日末の週に最初の確定例の接触者5人からEVD陽性が確認されました。 6月29日以降に6人の確定例が報告され、うち2人は死亡、残り4人は治療を受け既に退院しています。最後の患者は7月23日に2回目の検査の結果もEVD陰性であり退院しました。全ての接触者が現在、経過観察を終了しています。
2.イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が以前、報告されました。

【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 5 August 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-5-august-2015