(No.132)

エボラ出血熱の流行状況(53)
平成27年8月19日更新

 2015年8月19日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

 要約
・8月16日までの1週間に合計3人のEVD確定例がギニアから報告されました。
今回の流行が始まって以来初めてシエラレオネからの報告がない1週間となりました。確定患者発生総数は
3週連続で週に3人となりました。さらに監視中の接触者は8月9日の時点の1,600人から、8月16日には
ギニアの3県とシエラレオネの3郡を合わせて800人と半減しました。シエラレオネのトンコリリでは接触者600人に対する21日間の監視が8月14日にほとんど終了しました。しかしながら疾患伝播の重大な危険性は残っています。両国をあわせて多くの監視中の接触者が残っていることに加え、過去6週間の間にギニアの
首都コナクリでは45人が追跡不能になっています。シエラレオネの首都フリータウンでは数名、発症の
可能性の高い接触者が追跡不能になっています。

・今回報告されたギニアの3人については登録されていた接触者であり、エボラ出血熱治療センターで加療
されています。2人はコナクリのマタム地区からの報告で、既報51で報告された患者のうちの1人と接触した親戚です。残りの1人はフォレカリアのムサヤ郡からの報告で、前週に同郡から報告された患者のうち1人との接触者として登録された親戚でした。前週の患者の感染源については現在も調査中です。
ギニアのコナクリ、コヤ、フォレカリアの西部3県では現在も796人が監視中ですが前週は4県で927人が
監視中でした。キンディア県での全ての接触者は21日間の監視期間を終了しています。

・8月16日までの1週間、リベリアからの新規患者発生はありませんでした。同国での接触者は全て21日間の監視期間を終了しています。最後の2人の患者も7月23日に2回目の検査が陰性であったために退院となっています。

・シエラレオネでは8月16日までの1週間は今回の流行が起こってから初めて新規患者発生報告のない週でした。トンコリリ、西部都市地区、西部地方地区の3ヶ所では72人の接触者が現在も監視中であり、
全員西部都市地区との感染連鎖があります。トンコリリでの最近の接触者集団は全員8月23日に21日間の監視を終了する予定です。

・両国共に3週間連続して医療従事者の感染はありませんでした。今回の西アフリカ3か国での流行の
はじめから医療従事者の感染者数は880人であり、内512人が死亡しています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,332

6

2,072

可能性例

452

未報告

452

疑い例

2

未報告

データなし

国別総数

3,786

6

2,524

リベリア

確定例

3,151

-

データなし

可能性例

1,879

-

データなし

疑い例

5,636

-

データなし

国別総数

10,666

-

4,806

リベリア※

確定例

6

0

2

可能性例

0

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

0

2

シエラレオネ

確定例

8,697

3

3,586

可能性例

287

未報告

208

疑い例

4,510

未報告

158

国別総数

13,494

3

3,952

総数

確定例

15,186

9

データなし

可能性例

2,618

未報告

データなし

疑い例

10,148

未報告

データなし

総数

27,952

13

11,284

・ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると考えられています。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
・8月16日までにギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて
27,952人のEVD患者が発生しており、11,284人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています。
8月16日までの1週間に、ギニアでは3人の新たな確定例が報告されました。

・診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。

・8月16 日までの1週間に、新たな医療従事者の感染は報告されませんでした。今回の流行でギニア、
リベリア、シエラレオネで880人の医療従事者の感染し、うち512人が死亡したと報告されています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,591

1,736

529

1,897

857

(29)

(32)

(11)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(131)

シエラレオネ

4,792

5,081

1,978

5,592

2,129

(168)

(175)

(82)

(216)

(288)

・ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§データは2015年5月9日までのものです。

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
・リベリアでは、42日間連続で新たなEVD確定例が発生しなかったことを受けて、2015年5月9日に
EVD流行の終息が宣言されました。リベリアは3ヶ月間の高警戒期間に入り、その期間に、EVD感染が疑われる患者から80 検体の血液検体と口腔スワブが毎日採取され、EVDの検査が実施されていました。
高警戒期間中の6月29日にマージビ郡でEVD陽性例の死亡例が発見され、3月20日以降で初めての確定例となりました。患者は17歳の男性で、6月21日に発症して6月28日に死亡し同日にEVD陽性が検出されました。
7月12日末の週に最初の確定例の接触者5人からEVD陽性が確認されました。6月29日以降に6人の確定例が
報告され、うち2人は死亡、残り4人は治療を受け既に退院しています。最後の患者は7月23日に2回目の
検査の結果もEVD陰性であり退院しました。全ての接触者が現在、経過観察を終了しています。

・イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が以前に報告されています。

【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report - 19August 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-19-august-2015