(No.139)

ウクライナにおける循環ワクチン株によるポリオの発生
平成27年9月1日更新

 ウクライナで2015年6月30日と7月1日に1人ずつ循環ワクチン株由来Ⅰ型ポリオ(cVDPV1)の患者発生が確認されました。2例ともルーマニア、ハンガリースロバキア、ポーランドと接するウクライナの南西部
ザカルパッチャ州からの報告です。2人は麻痺発症時4歳の小児と10ヶ月の乳児です。ウクライナはワクチンの接種率が不十分であり、 これまでもcVDPV発生のリスクの高い地域でした。昨年ポリオやその他のワクチンで予防できる疾患に対する小児へのワクチン接種率は50%にしか達していません。

公衆衛生対策
 現在この緊急性を要する感染症発生に対する対策が国の保健衛生専門部署で議論されています。今年5月の世界保健総会で採用された世界標準のアウトブレイク対策によればアウトブレイク確認後2週間以内に
5歳未満の200万人の小児に対して適切な経口ポリオワクチンを最小限3回大規模に追加接種することと
国家的な保健衛生上の緊急事態であることを公式に宣言することが要求されています。

WHOによるリスク評価
 ワクチン由来株のポリオウイルスが循環することはまれですが免疫獲得率の悪い集団において起こりうることであることはよく知られています。その様な事態の早急な収拾には強化された対策が必要です。
ワクチン接種率の地域差やサーベイランスの欠如がおこればそのワクチン株が国内に拡がる可能性が高いと思われます。cVDPV株の感染が発生するということはワクチン接種率を高い値に維持しておく事が重要であることを物語っています。WHOは今回のウクライナの事例により国際的な拡がりをみせるリスクについては
低いと評価していますが同州が他の4国と接している事には注意しておかなければならないとしています。
またWHOは国際的に認められた基準に一致したアウトブレイク対策を完全に実施することが必要であると
強調しており、今後も疫学的な状況の評価やアウトブレイク対策の実施状況を評価していく予定です。

WHOによる勧告
 ポリオの発生した国や地域への渡航や接触が頻繁である全ての国は新たにウイルスの侵入があった際にすぐに発見し早急な対策ができるように急性弛緩性麻痺患者の調査を強化しておかなければなりません。
またあらたなウイルスの侵入の被害が最小限に抑えられるように地域単位での免疫獲得率を高い割合で維持しておく必要があります。WHOはポリオ発生国への全ての渡航者は十分なワクチン接種の実施をしておくことを推奨しています。発生地域の住人、4週間以上滞在した人は経口ポリオワクチンあるいは不活化ワクチンを4週から12ヶ月以内に追加接種するよう勧めています。

【出典】
 WHO Disease outbreak news
 Circulating vaccine-derived poliovirus – Ukraine
 1 September 2015
 http://www.who.int/csr/don/01-september-2015-polio/en/