(No.149)

エボラ出血熱の流行状況(57)
平成27年9月16日更新

 2015年9月16日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約
1.9月13日末の週に、EVD確定例が5人(全員がシエラレオネから)報告されました。ギニアは、12か月以上の中で、初めてEVD確定例の報告がありませんでした。シエラレオネは、1人を除く全員がカンビアの感染
連鎖に関連して登録された接触者でした。新たに確認された患者は、5か月以上患者が報告されていなかったボンバリ(シエラレオネ中央部)から報告されました。患者は16歳の女子で、エボラ治療センターに入院する前の数日間に、生活地域で激しい症状を呈していました。この患者に関係して、さらに高い感染伝播のリスクがあると推測されており、これまでに600人以上の接触者が確認されています。さらなる感染伝播のリスクを最小限にして、感染源を確認するために、緊急対策チームが派遣されています。ギニアとシエラレオネで健康監視下に置かれていた接触者の総数は、9月6日時点の1,300人から9月13日時点で1,800人に増加しました。これらのほとんどは、シエラレオネのボンバリとカンビアの接触者です。このうち約60人がハイリスク
接触者と考えられています。
2.9月13日末の週に、ギニアからはEVD確定例の報告がなく、連続12日を記録しました。最後の確定例は、9月1日に首都コナクリのラトマ地区から報告されました。しかし、コナクリとドゥブレカ県の近郊には、200人以上の接触者が健康監視下にあります。コナクリの接触者のほとんどは21日の監視期間の半分を終え、ドゥブレカ県の接触者は9月16日に監視期間が終了します。過去42日間に合計23人の接触者が追跡できなくなっており、少なくとも、そのうちの1人はハイリスク接触者と考えられています。さらなる患者が
報告された場合はすぐに派遣できるように、緊急対策チームが警戒体制を維持して準備しています。
3.9月13日末の週に、シエラレオネからは、5人新たな確定例が報告されました。このうちの4人は、
トンコリンバ首長支配地区セラカフタ村のいくつかの家を中心とした、カンビアの感染連鎖に関連した
ハイリスクの接触者でした。集団感染において、4人全員が最初の患者の近親者でした。最初の患者は、
8月30日末の週に生活地域で死亡が確認された60歳代の女性です。接触者のほとんどは、接触機会よりも
地理的な近接度で定義されているため、リスクは低いと考えられていますが、840人以上の接触者が
感染連鎖に関連して同定されています。カンビアの感染連鎖に関連して、約40人のハイリスク接触者が
同定されています。そのうちの1人とは連絡が取れなくなっており、捜索が行われています。また、ボンバリ地方のボンバリセボラ首長支配地区から、9月13日に確定例が報告されました。患者は16歳の女子で、
エボラ治療センターに入院した直後に死亡しましたが、その数日前から生活地域で症状を呈していました。
現在、感染源の調査が行われています。ボンバリでは、5か月以上患者は報告されていませんでした。
患者調査と接触者追跡を実施するために、緊急対策チームが派遣されています。現在、この地域の
住民約800人のうち600人以上が接触者として同定されており、そのうち18人はハイリスク接触者と
考えられています。1人のハイリスク接触者は、まだ追跡できていません。

広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国
4.ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて28,220人のEVD患者が発生しており、11,291人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者
および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。9月13日末の週に、シエラレオネで
新たな確定例が5人報告されました。
5.診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。
6.9月13日末の週に、医療従事者の新たな感染例は報告されませんでした。流行が始まって以降、
医療従事者の感染者例は流行3か国で合計881人となっており、うち513人が死亡しています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,338

3

2,078

可能性例

452

未報告

452

疑い例

2

未報告

データなし

国別総数

3,792

3

2,530

リベリア

確定例

3,151

-

データなし

可能性例

1,879

-

データなし

疑い例

5,636

-

データなし

国別総数

10,666

-

4,806

リベリア※2

確定例

6

0

2

可能性例

未報告

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

0

2

シエラレオネ

確定例

8,704

7

3,587

可能性例

287

未報告

208

疑い例

4,765

未報告

158

国別総数

13,756

7

3,953

総数

確定例

15,199

10

データなし

可能性例

2,618

未報告

データなし

疑い例

10,403

未報告

データなし

総数

28,220

10

11,291


※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告
された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると
考えられています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,594

1,739

531

1,898

860

(29)

(32)

(11)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,823

5,118

1,992

5,636

2,140

(169)

(176)

(82)

(218)

(290)


※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§ リベリアのデータは2015年5月9日までのものです。

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国
7.リベリアは、最後の確定患者がEVD検査で陰性が確認されてから42日が経過したため、2015年9月3日に
終息を宣言しました。現在、最後の患者が発生してから64日目になります。同国は90日の監視強化期間に入っています。検体処理の所要時間が早くなり、検査の処理能力が向上しています。
8.イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。


【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 16 September 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-16-september-2015