(No.155)

エボラ出血熱の流行状況(58)
2015年9月23日更新

 
 要約

1.9月20日末の週に、エボラウイルス感染症(EVD)確定例が2人報告されました。どちらもギニアからの
報告です。今年の7月末から症例の発生数が1週間に10人未満に留まっています。同時期からウイルスの
感染伝播は地理的にはギニア西部とシエラレオネのいくつかの小さな地域に限られており、感染の流行は
第3段階に移行してきています。影響のあった地域における迅速かつ正確な症例調査や接触者追跡、迅速な
隔離や治療、効果的な介入、これらの改善が症例の発生数を現在の低い水準まで減らすのに重要な役割を
果たしました。EVDにおける省庁間の協力体制の調整が行われ、第3期の取り組みが洗練されれば、症例数をゼロとすることができ、EVDの伝播を継続して終焉できるでしょう。(流行地域からの伝播か、宿主動物からの伝播のどちらかからの)ウイルスの再侵入か生存者のウイルスの再出現を迅速に同定するための強化された監視能力、生存者の福祉を守るための包括的なパッケージの一部としての検査能力やカウンセリング能力の
改善、(ワクチンから迅速診断検査までの)革新的な技術の使用増加が第3期の対策の枠組みの中心です。
したがって今後数週間で増加した重要な点として、これら追加した第3期の対策の監視と評価に配置
されます。

2.ギニアでは連続して確定例がゼロであった14日間の後、9月20日末の週に新たに確定例が2人報告
されました。コナクリのラトマ地区からフォレカリアに移動した後死亡した10歳の女児と、コナクリの
ディキシン自治区でEVD陽性と確定診断された24歳女性です。どちらの症例も8月末にEVDで死亡した
可能性例と疫学的に強い繋がりがありますが、接触者として登録されていませんでした。両確定例から
エボラウイルスの遺伝子配列を調べたところ、ラトマでの感染連鎖の一部であることが示されています。
これは現在(過去21日間)ギニアで活動性のある唯一の感染連鎖です。

3.シエラレオネでは9月20日末の週に新規確定例の報告はありませんでした。先週、ボンバリで16歳の
少女が死後の検査でEVD陽性と診断され、報告された症例から700人以上の接触者が同定されています。少女の感染源の調査はまだ結論が出ていません。しかし、予備調査では生存者が感染源ではないかということが
示されています。

4.現在EVDの影響を受けていない地域でのEVDの再侵入や再出現を迅速に検出することを確実にする
ために、しっかりとした監視方法が不可欠です。9月20日末の週にギニア全体で719検体が稼働中の
検査室8ヶ所で検査されました。収集された検体の地理的な分布の分析ではギニア34県中、21県で、
1週間以上EVDの生死が疑われる患者から如何なる検体も収集されていないことを示しています。
同時期にシエラレオネでは100%(14中14全て)の地区から1887検体が集められ、稼働中の検査室
9ヶ所で検査されました。リベリアでは
全国3ヶ所の稼働している検査室の能力が全ての検体を迅速検査するには充分でないですが、9月20日末の
週に100%(15中、15全て)の地区から1435検体が集められました。3か国での監視は第3期の枠組みに
沿って強化される予定です。

1.広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国

1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて28,295人のEVD患者が発生しており、11,295人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の高い患者
および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。9月20日末の週に、ギニアで新たな
確定例が2人報告されました。

2.診断確定例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人はギニアと
リベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。45歳以上の成人では
ギニアで約5倍、リベリアとシエラレオネで約4倍となっています。
3.9月20日末の週に、医療従事者の新たな感染例は報告されませんでした。流行が始まって以降、
医療従事者の感染者例は流行3か国で合計881人となっており、うち513人が死亡しています。

2.初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国

1.リベリアは、最後の確定患者がEVD検査で陰性が確認されてから42日が経過したため、2015年9月3日に
終息を宣言しました。現在、最後の患者が発生してから64日目になります。リベリアでは全国3ヶ所の稼働
している検査室の能力が全ての検体を迅速検査するには充分でないですが、9月20日末の週に15地区のうち11地区から1435検体が集められました。検体の84%が生存している疑い例から採取された血液検体です。

•2.イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が以前報告されました。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,340

3

2,079

可能性例

453

未報告

453

疑い例

7

未報告

データなし

国別総数

3,800

3

2,532

リベリア

確定例

3,151

-

データなし

可能性例

1,879

-

データなし

疑い例

5,636

-

データなし

国別総数

10,666

-

4,806

リベリア※2

確定例

6

0

2

可能性例

未報告

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

0

2

シエラレオネ

確定例

8,704

6

3,589

可能性例

287

未報告

208

疑い例

4,832

未報告

158

国別総数

13,823

6

3,955

総数

確定例

15,201

9

データなし

可能性例

2,619

未報告

データなし

疑い例

10,475

未報告

データなし

総数

28,295

9

11,295

※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を
遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告
された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると
考えられています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,594

1,741

532

1,899

860

(29)

(32)

(11)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2,060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,823

5,118

1,992

5,636

2,140

(169)

(176)

(82)

(218)

(290)

※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§ リベリアのデータは2015年5月9日までのものです。


【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 23 September 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-23-september-2015