(No.164)

ワクチン由来ポリオウイルスの流行―ラオス人民民主共和国
平成27年10月12日更新

 10月8日ラオス人民民主共和国(PDR)の国際保健規則(IHR)担当窓口はWHO(世界保健機関)に対して、
ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)の1型ポリオウイルス診断確定例を報告しました。

詳細は以下の通りです。

 ラオスPDRは9月7日に循環型ワクチン由来1型ポリオウイルス(cVDPV1)を1例診断確定しました。
患者は8歳の子供で9月11日に死亡しました。
ウイルスの遺伝子分析が10月6日に行われ、2年以上前から地域で循環しているワクチン由来のウイルスで
あることがわかりました。患児はボリカムサイ県ボリカン郡在住でした。この地域は予防接種率が慢性的に
低い地域でした。3回の経口ポリオワクチン(OPV)で2009年から2014年までの間40%から66%の
カバー率、2015年は44%のカバー率と報告されています。
 ラオスで過去、ポリオの野生株が流行したのは1993年と報告されています。

公衆衛生対策
 この流行に対し、世界ポリオ撲滅推進計画標準作業手順に沿って、包括的な流行への対応活動が行われて
います。保健省、世界保健機関、UNICEF、米国疾病予防管理センター(CDC)のラオス支所、これらの
協力チームが10月7日にさらなる評価のために同県を訪れました。影響のあった村で行った短期調査では
OPVの接種率が低いことを示していました。患児の家族周囲の調査活動は現在進行中です。便検体を家族や
地域の健康な子供から集めています。
 国や県単位の緊急オペレーションセンター(EOCs)は流行に対する活動を調整するために稼働して
います。ボリカムサイ県と隣接する県で大規模の補助的なOPV接種キャンペーンが実施中です。現在進行中
の調査が終了した時点で新たなキャンペーンの必要性について検討されます。

WHOによる危険因子評価
 ワクチン株由来のポリオの循環はまれな事ですが、その株から変異したポリオウイルスの循環はよく報告
されています。それらはしばしば免疫が不完全な集団から発生します。
 野生株、ワクチン由来株ともになくすことがポリオの根絶には必要であり、循環ワクチン株はリスクが
あるためにポリオのない世界を継続的に維持するためには経口ポリオワクチン使用は中止されなければ
なりません。経口ポリオワクチンはⅡ型を含んだものから段階的に中止予定です。まずは3価経口ワクチン
から2016年4月には2価ワクチンに変更される予定です。それにより循環ワクチン由来ポリオウイルスを
大方(循環ワクチン由来ポリオウイルスの90%はⅡ型である)減らすことができ、経口ワクチンの中止と
共に循環ワクチン由来ポリオウイルスの発生することのない不活化ポリオワクチン(IPV)への変更への
段階を設定します。相対的に同地域は渡航が限られていること、計画的な免疫獲得対策がなされている
ことによりWHOは同国から循環ワクチン由来ポリオウイルスが国際的に拡がる危険性は低いと評価して
います。

WHOによる勧告
ポリオの発生した国や地域への渡航や接触が頻繁である全ての国は新たにウイルスの侵入があった際に
すぐに発見し早急な対策ができるように急性弛緩性麻痺患者の調査を強化しておかなければなりません。
また あらたなウイルスの侵入の被害が最小限に抑えられるように地域単位での免疫獲得率を高い割合で
維持しておく必要があります。WHOはポリオ発生国への全ての渡航者は十分なワクチン接種の実施をして
おくことを推奨しています。発生地域の住人、4週間以上滞在した人は経口ポリオワクチンあるいは不活化
ワクチンを4週から12ヶ月以内に追加接種するよう勧めています。


【出典】
 WHO, Disease Outbreak News.
 Circulating vaccine-derived poliovirus – Lao People’s Democratic Republic
 12 October 2015
 http://www.who.int/csr/don/12-october-2015-polio/en/