(No.166)

エボラ出血熱の流行状況(61)
平成27年10月14日更新

 2015年10月14日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約
1。10月11日末の週には、EVD確定例の報告はありませんでした。2週連続で確定例は2人です。しかし、
ギニアでは登録された接触者150人が健康監視下にあり、このうち118人がハイリスク接触者です。加えて、
259人の接触者とは連絡がとれていない状況が続いています。登録されている接触者と連絡不能の接触者の
両方において、近い将来にさらなる患者が発生するリスクが残っています。シエラレオネでは、国内で最も
感染力のある2つの感染連鎖に関係したハイリスク接触者2人との連絡がとれなくなり、まだ見つかって
いません。また、2014年12月29日に報告された英国における既報患者が、回復した後の2015年10月6日に、EVDに関連した後期の合併症を発症して入院しました。10月13日までに、同国では濃厚接触者62人が
確認され、健康監視されています。

2.患者発生数は、11週連続で5人以下です。この間に、ウイルスの感染伝播は地理的にギニア西部と
シエラレオネの狭い地域に絞られており、流行の第3期に移行しています。EVDに対する政府官庁間の
協力体制の調整が図られて第3期の取り組みが洗練されたものになれば、患者発生数をゼロへ向かわせる
現在の対策をより大きく発展させ、EVD感染伝播の持続的な終了が確保されます。ウイルスの再侵入
(活動性の感染伝播が発生している地域、もしくはウイルスを保有した宿主動物から)や生存者からの
ウイルス再出現を早期に発見するためのより強化された対応能力、生存者の快適な生活を守る包括支援の
一部としての検査やカウンセリングの対応能力、ワクチン接種から迅速診断までの革新的な技術使用の
増加が、第3期の対策における枠組みの中心です。

3.ギニアのフォレカリア県では、合計150人の接触者が健康監視下にあります。このうち118人が
ハイリスク接触者です。接触者の全員が首都コナクリのラトマ地区を中心とした単一の感染連鎖に
関係しています。加えて、同国では、連絡がとれていない接触者は259人で追跡できていません。
これらの連絡のとれない接触者のほとんどが、コナクリとフォレカリアからの接触者です。9月26日と
27日にギニアのフォレカリア県下のカリアの2つの村で報告された直近の患者4人は、ラトマの感染連鎖に
関連した可能性例と接触した未登録者で、コナクリの10歳の少女から感染しました。

4.シエラレオネでは、4週連続で確定例は報告されていません。ボンバリとカンビアでは、この地域で
活動性のある直近の2つの感染連鎖に関連した接触者の全員が、21日間の健康監視を終了しました。また、
治療を受けた最後の患者が、カンビアのエボラ治療センターを9月26日に退院しました。しかし、2人の
ハイリスク接触者(ボンバリとカンビアで1人ずつ)と連絡がとれていません。それぞれの地域で最後の
患者が報告されてから42日間は、これらの連絡がとれない接触者を追跡する努力が続けられます。

5.現在は感染の影響を受けていない地域において、EVDの再侵入や再出現を早期に確実に発見する
ためには、厳重な監視措置が不可欠です。ギニアでは10月4日末の週に、同国で稼働する9つの検査室で、
合計725検体が新たにかつ繰り返し検査されました(これはギニアとリベリアで利用できる最新の週の
データです)。リベリアでは10月4日末の週に、同国で稼働する4つの検査室で、928検体が採取され、
新たにかつ繰り返し検査されました。シエラレオネでは10月11日末の週に、同国で稼働する9つの検査室で、新たに1,654検体が採取されて検査されました。

1. 広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国

1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、疑い例を合わせて28,454人の
EVD患者が発生しており、11,297人が死亡(多くの患者の検査結果は不明ですが、この総計には可能性の
高い患者および疑い患者から報告された死亡者を含みます)しています(表1)。10月11日末の週に新たな
患者は報告されていません。

2.診断確定例と疑い例の男女比はほぼ同じです(表2)。14歳以下の小児と比べると、15~44歳の成人は
ギニアとリベリアでは4倍感染しやすく、シエラレオネでは3倍感染しやすくなっています。45歳以上の
成人はギニアでは5倍感染しやすく、リベリアとシエラレオネでは4倍感染しやすくなっています。

3.10月11日末の週に、医療従事者の新たな感染例は報告されませんでした。流行が始まって以降、
医療従事者の感染者例は流行3か国で合計881人となっており、うち513人が死亡しています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,344

4

2,081

可能性例

453

未報告

453

疑い例

3

未報告

データなし

国別総数

3,800

4

2,534

リベリア

確定例

3,151

-

データなし

可能性例

1,879

-

データなし

疑い例

5,636

-

データなし

国別総数

10,666

-

4,806

リベリア※2

確定例

6

0

2

可能性例

未報告

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

0

2

シエラレオネ

確定例

8,704

0

3,589

可能性例

287

未報告

208

疑い例

4,991

未報告

158

国別総数

13,982

0

3,955

総数

確定例

15,205

4

データなし

可能性例

2,619

未報告

データなし

疑い例

10,630

未報告

データなし

総数

28,454

4

11,297


※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を
遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告
された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると
考えられています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,596

1,743

532

1,902

861

(29)

(32)

(11)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,823

5,118

1,992

5,636

2,140

(169)

(176)

(82)

(218)

(290)


※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§ リベリアのデータは2015年5月9日までのものです。

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国

1.リベリアは、最後の確定患者がEVD検査で陰性が確認されてから42日が経過したため、2015年9月3日に
終息を宣言しました。現在、最後の患者が発生してから64日目になります。同国は90日の監視強化期間に
入っています。10月4日末の週にリベリアの全15郡から928検体が採取され、国内で運用されている
4検査室で検査されました。

2.イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。2014年12月29日に
報告報告された英国における既報患者が、回復した後の2015年10月6日に、EVDに関連した後期の合併症
を発症して入院しました。10月13日の時点で、総計62人の濃厚接触者が健康監視のために英国内で
同定されており、26人がrVSV-ZEBOVワクチンを接種しています。


【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 14 October 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-14-october-2015