(No.173)

エボラ出血熱の流行状況(63)
平成27年10月28日更新

 2015年10月28日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約

1.10月25日末の週に新たに3人のEVD確定例が報告されました。3人ともギニアからの報告です。前週も
3人の報告例でした。3人ともフォレカリア県のカリアの同じ家族から感染した症例で、先週、同地区から
出た症例とつながりのあるハイリスク接触者として登録されていました。現在、ギニアでは364人の
接触者(前週より246人増加)が経過観察下にあり、うち141人がハイリスク接触者です。加えて233人の
接触者が42日間連絡の取れない状態です。そのため、接触の登録者と連絡のとれない接触者の両方の中に、
近い未来にさらなる患者が発生するリスクが残されています。シエラレオネでは6週間続けて確定患者数が
ゼロと報告されており、さらなる確定例が報告されなければ11月7日にEVD感染流行の終息が宣言される
予定です。

2.患者発生数は13週連続して5人以下となっています。この間にウイルスの感染伝播は地理的にギニア
西部とシエラレオネの僅かな狭い地域に絞られてきました。現況は確実に第3期に移行しています。第3期の
対策ではEVDに対する政府官庁間の協力体制の調整が図られ、患者発生数のゼロへ向けて、EVD の収束を
維持することを現行の対策に加えています。(活動性のある感染伝播をもつ地域やウイルスを保有した
動物宿主からの)ウイルスの再侵入や生存者からのウイルス再出現を早期に発見することに対し、
さらに強化された対応能力、生存者の快適な生活を守る包括パッケージの一部としての検査や
カウンセリングの対応能力が、第3期の対策における枠組みの中心となります。

3.10月25日末の週に報告された3人の新規確定例はフォレカリア県カリアの支庁であるコンダヤ村の
同じ家族内や親戚内からの発生です。患者は妊娠7ヶ月の25歳女性と10歳の息子、4歳の娘です。3人とも
現在治療を受けています。3人はフォレカリア県下におけるラトマ系統の7番目、8番目、9番目の症例
です。10歳の少女が何人かの伝統的な祈祷者から治療を受けるためにラトマ地区からフォレカリア県へ
移動し接触者として登録されず、後に病気を発症しEVD陽性が確定し、ラトマ系統を伝染させています。
ギニアでは10月25日時点で364人の接触者(コナクリで43人、フォレカリア県で321人)が経過観察中
です。3人の新規確定例によりコンダヤ村で55人のハイリスク接触者が生じました。

4.シエラレオネのボンバリとカンビアでは、この地域で最近まで活動性のあった2つの感染連鎖に
関連する接触者全員が21日の観察期間を終えました。また、治療を受けた最後の患者が9月25日に2回目の
連続検査の結果、陰性が確認されています。さらなる患者が報告されなければ、この国では11月7日に
EVD感染流行の終息が宣言される予定です。

5.現状では感染の影響を受けていない地域におけるエボラ出血熱の再侵入や再出現を早期に確実に発見するために、厳重な調査活動への取り組みが重要です。ギニアでは、10月25日末の週に合計644検体が稼働している9ヶ所の検査室で新たに繰り返し検査されました。リベリアでは、同期間に新たに1,038検体が
集められ、国内で稼働している4ヶ所の検査室で検査されました。シエラレオネでは新たに1,389検体が
集められ(4週連続の減少)、稼働している9か所の検査室で検査されました。

広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国

1.流行が始まって以降、10月18日までに、ギニア、リベリア、シエラレオネではエボラ出血熱患者
(確定患者、可能性の高い患者、疑い患者を含む)が合計28,539人、うち死亡者が11,298人となりました
(多くの患者の転帰は不明ですが、この総計には可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者が
含まれます)。10月25日末の週に、新たに患者3人が報告され、3人ともギニアからです。

2.確定患者の合計は男女で近いものとなっています。患者発生数を15歳未満の小児と比較したとき、
15歳から44歳までの成人ではギニアとリベリアで約4倍、シエラレオネでは約3倍感染しやすい傾向が
あります。45歳以上の成人ではギニアで約5倍、リベリアとシエラレオネで約4倍となっています。

3.10月25日末の週に新たな医療従事者の感染は報告されていません。ギニア、リベリア、シエラレオネ
から881人の医療従事者の感染が報告されています。このうち、513人が死亡しています。

初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国

1.リベリアは2015年9月3日に同国で最後の診断確定患者の治療が終了し、ウイルスが陰性になった
ことが確認されてから42日が経過したために終息宣言が出されました。現在最終患者が発症してから
106日になります。現在リベリアは現在90日間の強化監視期間に入っています。国内の15の地区
すべてから10月25日末の週に1,038検体が集められ、4ヶ所の検査室で検査されました。

2.イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、米国の7か国において、広範囲に及ぶ
深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。2014年12月29日に報告された英国に
おける既報患者が、回復した後の2015年10月6日に、EVDに関連した後期の合併症を発症して入院
しました。10月13日の時点で、総計62人の濃厚接触者が健康監視のために英国内で同定されており、
26人がrVSV-ZEBOVワクチンを接種しています。


表1.ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,350

6

2,082

可能性例

453

未報告

453

疑い例

3

未報告

データなし

国別総数

3,806

6

2,535

リベリア

確定例

3,151

-

データなし

可能性例

1,879

-

データなし

疑い例

5,636

-

データなし

国別総数

10,666

-

4,806

リベリア※2

確定例

6

0

2

可能性例

未報告

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

0

2

シエラレオネ

確定例

8,704

0

3,589

可能性例

287

未報告

208

疑い例

5,070

未報告

158

国別総数

14,061

0

3,955

総数

確定例

15,211

6

データなし

可能性例

2,619

未報告

データなし

疑い例

10,709

未報告

データなし

総数

28,539

6

11,298


※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年9月3日にEVD流行の終息が宣言されました。現在90日間の監視強化期間にはいって
います。2015年5月9日以降に報告された患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立
した集団発生を構成していると考えられています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*

(人口10万対)

年齢別♯

(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,598

1,744

534

1,903

861

(29)

(32)

(11)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,823

5,118

1,992

5,636

2,140

(169)

(176)

(82)

(218)

(290)


※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§ リベリアのデータは2015年5月9日までのものです。


【出典】
 WHO, Ebola
 Ebola Situation Report – 28 October 2015
 http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-28-october-2015