(No.175)

エボラ出血熱の流行状況(64)
平成27年11月4日更新

 2015年11月4日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。

要約

1.11月1日末の週に、ギニアから新たに1人のEVD確定例が報告されました。患者は前週に
フォレカリア県で報告された25歳の妊婦が産んだ新生児です。児はコナクリのエボラ治療センターで
治療を受けています。母親は出産後に死亡しています。前週に他2人の子供も確定例として報告され、
治療を受けています。21日間の追跡調査期間の2週目に突入していたフォレカリア県では、前週の
確定例3例によって多数のハイリスク接触者が追加されました。11月1日末の週、ギニアの監視対象者は
382人(前週364人)に増加し、うち141人がハイリスク接触者です。また、登録されているにも
かかわらず追跡されていない短期的リスクのある人も存在しています。

2.患者発生数は14週連続して5人以下となっています。この間にウイルスの感染伝播は地理的に
ギニア西部とシエラレオネの僅かな狭い地域に絞られてきており、流行形態は確実に第3期へ移行
しています。第3期の対策はEVDに対する政府官庁間の協力体制の調整が図られ、患者発生数のゼロへ
向けて、EVD の収束を維持することを現行の対策に加えています。(活動性のある感染伝播をもつ地域や
ウイルスを保有した動物宿主からの)ウイルスの再侵入や生存者からのウイルス再出現を早期に発見する
ことに対し、さらに強化された対応能力、生存者の快適な生活を守る包括パッケージの一部としての検査や
カウンセリングの対応能力が、第3期の対策における枠組みの中心となります。

3.11月1日末の週に、ギニアから新たに確定例1例が報告されました。患者はフォレカリア県下に
おけるラトマ系統の10番目の症例です。フォレカリア県カリアの支庁であるコンダヤ村の同じ家族や
親戚内からの4番目の発生です。ギニアでは11月1日時点で382人の接触者(コナクリで43人、
フォレカリア県で339人)が経過観察中です。141人のハイリスク接触者(コナクリ7人、フォレカリア県
134人)生じました。過去42日間で、フォレカリア県の接触者1人が追跡できていません。

4.シエラレオネのボンバリとカンビアでは、この地域で最近まで活動性のあった2つの感染連鎖に
関連する接触者全員が21日の観察期間を終えました。また、治療を受けた最後の患者が9月25日に2回目の
連続検査の結果、陰性が確認されています。さらなる患者が報告されなければ、この国では11月7日に
EVD感染流行の終息が宣言される予定です。

5.現状では感染の影響を受けていない地域におけるエボラ出血熱の再侵入や再出現を早期に確実に
発見するために、厳重な調査活動への取り組みが重要です。ギニアでは、11月1日末の週に615検体が
稼働している9ヶ所の検査室で新たに繰り返し検査されました。同期間にリベリアでは、新たに1,162
検体が集められ、国内で稼働している4ヶ所の検査室で検査されました。シエラレオネでは新たに
1,437検体が集められ、稼働している9ヶ所の研検査室で検査されました。

広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国

1.流行開始から11月1日までに、ギニア、リベリア、シエラレオネにおいて、確定例、可能性例、
疑い例を合わせて28,571人のEVD患者が発生しており、11,299人が死亡(多くの患者の検査結果は
不明ですが、この総計には可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者を含みます)して
います(表1)。11月1日末の週に、ギニアで新たな確定例が1人報告されました。

2.確定患者の合計は男女で近いものとなっています(表2)。患者発生数を15歳未満の小児と比較
したとき、15~44歳の成人ではギニアとリベリアで約4倍、シエラレオネでは約3倍感染しやすい傾向が
あります。45歳以上の成人ではギニアで約5倍、リベリアとシエラレオネで約4倍となっています。

3.11月1日末の週に新たな医療従事者の感染は報告されていません。ギニア、リベリア、シエラレオネ
から881人の医療従事者の感染が報告されています。このうち、513人が死亡しています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数

国名

症例定義

症例数

21日以内の

症例数

死亡者数

ギニア

確定例

3,351

7

2,083

可能性例

453

未報告

453

疑い例

6

未報告

データなし

国別総数

3,810

7

2,536

リベリア

確定例

3,151

-

データなし

可能性例

1,879

-

データなし

疑い例

5,636

-

データなし

国別総数

10,666

-

4,806

リベリア※2

確定例

6

0

2

可能性例

未報告

未報告

データなし

疑い例

データなし

未報告

データなし

国別総数

6

0

2

シエラレオネ

確定例

8,704

0

3,589

可能性例

287

未報告

208

疑い例

5,098

未報告

158

国別総数

14,089

0

3,955

総数

確定例

15,211

7

データなし

 

可能性例

2,619

未報告

データなし

疑い例

10,740

未報告

データなし

国別総数

28,571

7

11,299


※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2リベリアは2015年5月9日にEVD流行の終息が宣言されました。継続されている調査と患者と死亡者を
遡って行う確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。2015年5月9日以降に報告された
患者数と死亡者数は、5月9日に終息が宣言されたものとは独立した集団発生を構成していると
考えられています。

表2. ギニア、リベリア、シエラレオネの確定例と可能性例における性別・年齢別症例数

国名

症例数

性別*(人口10万対)

年齢別♯(人口10万対)

男性

女性

0-14

15-44

45歳以上

ギニア

1,599

1,747

537

1,904

861

(29)

(32)

(12)

(41)

(55)

リベリア§

1,911

1,838

561

2,060

703

(96)

(93)

(33)

(121)

(132)

シエラレオネ

4,823

5,118

1,992

5,636

2,140

(169)

(176)

(82)

(218)

(290)


※ 表2のデータの人口数値は、国連経済社会局に基づいています。これらの数値は、再分類、再集計、
検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
* 性別データがないものは除きます。
♯ 年齢データがないものは除きます。
§ リベリアのデータは2015年5月9日までのものです。

2. 初期の症例が発生した国、あるいは局所的な感染伝播が発生した国

1.リベリアは2015年9月3日に同国で最後の診断確定患者の治療が終了し、ウイルスが陰性になったことが
確認されてから42日が経過したために終息を宣言が出されました。現在、最終患者が発生してから113日目
になります。EVD検査で2回目の連続した陰性が確認されてから59日目になります。同国は90日の強化監視期間の2/3に突入しています。国内15地区すべてから11月1日末の週に、1,162検体が集められ、
4ヶ所の検査室で検査されました。

2.イタリア、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、英国、アメリカ合衆国の7か国において、
広範囲に及ぶ深刻な感染伝播が発生している国からの輸入例が報告されています。2014年12月29日に
報告された英国における既報患者が、回復した後の2015年10月6日に、EVDに関連した後期の
合併症を発症して入院しました。10月13日の時点で、総計62人の濃厚接触者が監視のために英国内で
同定されており、26人がrVSV-ZEBOVワクチンを接種しています。

【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 4 November 2015
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-4-november-2015