(No.188)

  ワクチン由来ポリオウイルスの流行―ラオス人民民主共和国(2)
平成27年11月26日更新



  ラオス人民民主共和国は新たに2人のワクチン由来ポリオ1型(VDPV1)の感染患者を報告し、
総数3人となりました。2015年11月6-8日の間にラオス国際保健規則(IHR)担当窓口はWHO に対して
VDPV1感染診断確定例2人を報告しました。さらに無症候の12人の便から循環している同ウイルスが
分離されているとのことです。すべての接触者はボーリカムサイ県の同じ村に居住しています。

詳細は以下の通りです。

 新たに確定した1人目の患者は15歳男性で、初めに診断確定した患者と同じ村の出身です。
経口ポリオワクチン(OPV)の接種既往はありません。今回の患者から分離されたウイルスとセービン
1型株のヌクレオチド変異が2.6%程度であることと3人の濃厚接触者が循環ポリオ1型ワクチン由来株
(cVDPV1)陽性であることからこの男性もcVDPV1の感染と診断されています。
 2人目の患者は4歳男児で、9月28日に発熱で発症し、翌日に四肢の不全麻痺を発症しています。
10月1日にボーリカムサイ県の病院の集中治療室に入院しましたが便の検体を採取する前、翌日に
亡くなっています。急性弛緩性麻痺(AFP)と言う診断となっていることが10月19日の同病院の
遡及的検討で明らかになっています。患者はOPVの接種を受けておらず、10月20日、21日に家族や
近隣の住人など4人の接触者から便検体が採取されました。11月6日に3人からcVDPV1が検出されました。WHO の診断基準に基づいて同児はcVDPV1感染と診断されました。
 同国のIHRは初発例(既報164)との接触者調査について報告しています。接触者の便検体が収集され、
cVDPV1が6人から分離されています。
ボーリカムサイ県はこのアウトブレイク以前、慢性的にワクチン接種率の低い地域でした。2009年~
2014年におけるOPV3回の乳幼児への接種率は40~66%でした。ラオスでは野生株ポリオの国内発生は
1993年が最終です。

公衆衛生対策

ラオスではcVDPV1感染の1例目が確定されてからアウトブレイク対策がボーリカムサイ県、
サイソンブン県、シェンクワン県の3県で実施されてきました。緊急オペレーションセンターは活動の
調整、ポリオ撲滅計画の起案などを盛んに実施しています。「急性弛緩性麻痺数毎日0報告」を含めた強化
サーベイランスが国中で実施されています。3県では病院や保健所記録の遡及的検討を含めた症例発見
のための活発な活動が行われています。
2015年10月から2016年3月にかけて6回の3価OPV接種実施が行われ、15歳以下の子供860万人が接種を
受ける予定です。この対象年齢決定は患者とその接触者の分布から決定されました。1回目の追加接種
(SIA)は10月にボーリカムサイ県、サイソンブン県、シェンクワン県で終了しました。今回の接種活動
については未接種の子供のいる地域を発見するためのモニターが行われ、未接種地域一掃が計画されて
います。次回の接種実施までこの計画は継続される予定です。本キャンペーンが有効かどうか独自の
モニターも導入されています。
 SIAが奏功することを確実にするためにワクチン接種の障害に対処し、信用を打ち立てるための
情報活動や、活動を実施する集団のトレーニングなどを含めて、緊急リスクコミュニケーションや
社会的動員が実施されています。鍵となるような通知はラジオ放送や広報スピーカーを通じて広められて
おり、追加接種を受けるべき集団にまで届いています。




WHO, Disease Outbreak News.
 Circulating -vaccine-derived poliovirus – Lao People’s Democratic Republic
 26 November 2015
 http://www.who.int/csr/don/26-november-2015-polio/en/