(No.189)

  イラクにおけるコレラ
2015年11月26日

  世界保健機関(WHO)は、検査でコレラ感染が確認された新たな感染例についてイラクの
国際保健規則(IHR)担当窓口より報告を受けました。

11月22日現在、2人の死亡者を含む計2,810人のO1コレラ菌イナバ型確定例がバグダッド
中央公衆衛生研究所により報告されています。これらの感染例は次の17の県から報告されています。
バグダッド県 (940例)、バビロン県 (675例)、カーディシーヤ県 (442例), ムサンナー県 (287例)、
カルバラ県 (157例)、バスラ県 (102例)、ワーシト県 (68例)、ナジャフ県 (46例)、ジカール県 (20例)、
ミーサーン県(21例)、ドホーク県 (16例)、キルクーク県 (19例)、エルビル県(10例)、
ディヤーラ県(3例)、サラーハッディーン県 (2例)、スレイマーニーヤ県 (1例)、ニナワ県 (1例)。

公衆衛生上の取り組み

WHOとユニセフ(UNICEF)の協力を受けて、イラク政府は経口コレラワクチンキャンペーンの
第一ラウンドを終えました。11月の第2週に終了したこのキャンペーンにより、13県、62のキャンプに
渡る229,000人の難民および国内避難民(対象集団の93%)へのワクチン投与を行いました。参加者は
非常に多く、ワクチン接種に関する拒絶や騒動はありませんでした。ワクチンキャンペーン第2ラウンドは、
12月の最初の週に開始予定で、推奨される投与計画を完了し、対象集団の臨床的な防御力は最大化
されます。また、コレラやその他の下痢性疾患に対する防御を最大限に発揮するために、
経口コレラワクチン接種は、浄水の供給、下水や衛生状態の改善を含めた包括的で統合されたパッケージと
合わせて行うべきでしょう。

 12月2日にアルバイーン巡礼がカルバラ県で行われ、計1,000万人の巡礼者が参加予定です。
バーレーン、イラン、ヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、アラブ首長国連合の国際保健規則
(IHR)担当窓口は、イラクからの輸入コレラ感染例の早期発見と感染管理のために予防対策を
取っています。この対策は以下の通りです。

・公衆衛生上の予防対策と対応計画の実行
・ 全ての保健施設と入国地点おける感染監視の強化
・ 検査施設における十分な消耗品や検査キットの供給と確実な稼働
・ コレラに対する水質検査の強化
・ 入国地点における食品監視の強化
・ コレラ感染例の診断と治療対応に関する医療従事者の訓練
・ 全ての保健施設、特にコレラ疑い例の受け入れを指定されている施設における、感染防御策を含む
 感染症対策の厳密な遵守
・ イラクへの旅行者や国民に対する病気の啓発活動の実行

10月16日から17日の間、WHO東地中海地域事務所はイラクとその近隣国を対象とした小区域会合を
開催しました。また、11月17日から19日にかけて、もう一つのコレラ地域評議会がヨルダンの
アンマン市で開催され、その他の利害関係国と地域内の全てのコレラ浸淫国が参加しました。この2つの
会合により、検査による確認を含む感染監視の強化、症例管理と感染対策、飲料水衛生の改善と
衛生習慣の徹底、入国地点における体制強化、リスクコミュニケーションが推奨されました。

WHOからのアドバイス

WHOは、いかなるコレラ流行国に対する、いかなる旅行や貿易の制限を推奨しません。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
 Cholera – Iraq,
 26 November 2015
http://www.who.int/csr/don/26-november-2015-iraq-cholera/en/