(No.3)

エボラ出血熱の流行状況(73)
平成28年1月6日更新

 2016年1月6日、WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱(EVD)の流行状況を更新しました。
要約
・1月3日末までの週に、新たにEVD確定例は報告されていません。最後の感染者において
連続する2回の検査で陰性であった日から42日が経過したことをうけて、12月29日、WHOは
ギニアにおけるEVD流行のヒト-ヒト感染が終息したことを宣言しました。ギニアは現在、90日間の
サーベイランス強化期間に入っています。これで、ギニア、リベリア、シエラレオネでは、
西アフリカに起因したヒト-ヒト感染の防止に成功したことになります。
・リベリアにおいては、これ以上の感染者の発生がなければ、最後の2人の感染者が連続する2回の検査で
陰性であった日の42日後(2016年1月14日)に、最後の集団感染に関連したヒト-ヒト感染の終息が
宣言されることになります。シエラレオネで最初に発生したヒト-ヒト感染は、既に2015年11月7日に
終息宣言が出されています。現在、同国では90日間のサーベイランス強化期間に入っており、
2016年2月5日に終了する予定です。
・リベリアにおける最後の集団感染例は感染の既往があるヒトからの再感染でした。このような再感染の
可能性は大変低いですが、これによる更なる感染拡大の危険性が存在するということで、エボラウイルス
RNAの存在を確認するための適切な体液の検査を含めた、生存者に対する包括的な取り組みがより重要に
なってきます。リベリアおよびシエラレオネ政府はWHOやアメリカ疾病予防管理センター(CDC)などの
協力を得て、男性の生存者に対して自主的な精液のスクリーニング検査を行うと共に、感染の危険性と
濃厚接触者を守るために必要な予防策に対する理解を助けるためのカウンセリングプログラムを
実行しています。リベリアとシエラレオネでは、2016年1月3日までに405人の男性生存者が精液の
スクリーニング検査を受けました。リベリアとシエラレオネにおいて、2016年1月に完了することに
なっている生存者ケアのための包括的な政策方針に伴い、生存者のための医療サービスのネットワークを
拡大中です。これまでの所、約3,000人の生存者が基本的なケアサービスを受けています。
・残存するEVDの危険性に効果的に対処するために、ギニアとリベリアとシエラレオネは、医療従事者や
民間の協力者が、いかなる場合でもEVDに関連していると疑われる患者や死亡者を発見した場合に、
関連当局に対して報告することが可能となるサーベイランスシステムを構築しています。
1月3日末までの週で、ギニアの34県のうち33県から645の警報が報告され、その警報の大部分(639)を
占めたのはコミュニティーでの死亡例の報告でした。同時期に、ギニアで稼働している9つの検査施設に
おいて、34県のうち16県から採取された新規及び再検査をあわせた計282検体(生存者から18検体、
コミュニティーでの死亡者から264検体)が検査されました。リベリアでは、15州全てから633の警報が
報告され、その警報の大部分(529)を占めたのは生存者の報告でした。同時期に、同国で稼働している
5つの検査施設において、新規及び再検査をあわせた計588検体(生存者から420検体、
コミュニティーでの死亡者から168検体)の検査が行われました。シエラレオネでは、1月3日を
最終日とする週までに952の警報が報告されました。その警報の大部分(878)を占めたのは
コミュニティーからの死亡例の報告でした。同時期に、同国で稼働している8つの検査施設において、
新規及び再検査をあわせた計976検体(生存者から8検体、コミュニティーでの死亡者から968検体)の
検査が行われました。
・新しい感染確定例を発見した後にRapid Response Team(RRT)を派遣することは、ギニア、リベリア、
シエラレオネにおける国家対策の根本戦略です。それぞれの国は少なくとも1つはRRTを持ち、
1月をとおして、迅速に対応する能力を強化し、継続して行っている問題対応計画を遂行する努力を
行っています。

表1. ギニア、リベリア、シエラレオネにおけるEVD症例数と死亡者数
国名 症例定義 症例数 21日以内の
症例数
死亡者数
ギニア 確定例 3,351 0 2,083
可能性例 453 未報告 453
疑い例 0 未報告 データなし
国別総数 3,804 0 2,536
リベリア 確定例 3,151 - データなし
可能性例 1,879 - データなし
疑い例 5,636 - データなし
国別総数 10,666 - 4,806
リベリア※2 確定例 9 0 3
可能性例 未報告 未報告 データなし
疑い例 データなし 未報告 データなし
国別総数 9 0 3
シエラレオネ※3 確定例 8,704 0 3,589
可能性例 287 未報告 208
疑い例 5,131 未報告 158
国別総数 14,122 0 3,955
総数 確定例 15,215 0 データなし
可能性例 2,619 未報告 データなし
疑い例 10,767 未報告 データなし
総数 28,601 0 11,300

※ 表1のデータは、各国の保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は、再分類、
再集計、検査結果の利用状況によって変更される場合があります。
※2 現在行われているサーベイランスや、発症者、死亡者の再調査により、これらの数字は改訂される
可能性があります。
※3 シエラレオネは2015年11月7日にEVD流行の終息が宣言されており、現在は90日の高警戒期間に
入っています。
※4 ギニアは2015年12月29日にEVD流行の終息が宣言されており、現在は90日の高警戒期間に
入っています。

【出典】
WHO, Ebola
Ebola Situation Report – 6 January 2016
http://apps.who.int/ebola/current-situation/ebola-situation-report-6-january-2016