(No.106)

黄熱の流行状況
平成28年5月12日更新

  2016年5月12日、世界保健機関(WHO)は黄熱の流行状況を更新しました。

要約
・黄熱(YF)の流行は2015年12月末にアンゴラで報告され、2016年1月20日にダカールのパスツール
 研究所で確認されました。その後YF患者数の急激な増加が認められています。
・5月11日時点で2,267人の疑い例と293人の死亡例がアンゴラから報告されており、うち696人が診断
 確定しています。ルアンダ州、ウアンボ州、ベンゲラ州においてワクチン接種キャンペーンを行ったにも
 かかわらず、いくつかの地域において未だウイルスが蔓延しています。
・アンゴラから輸出されたYF確定例が3か国から報告されており、内訳はコンゴ民主共和国(DRC)から
 39人、ケニアから2人、中国から11人です。これらの症例は免疫を持たない(ワクチン未接種)渡航者を
 介してYFが世界的に拡大する危険性の高さを強調しています。
・2016年3月22日にDRCの保健省はアンゴラでの流行に関連したYF患者をWHOに報告し、4月23日に同国の
 政府は正式にYFの流行を宣言しました。5月11日時点でDRCにおいて疑い例3人、診断確定例41人、内訳は
 コンゴ中央州とキンシャサにおいてアンゴラからの輸入例が39人、キンシャサのヌジリとコンゴ中央州の
 マタディにおいて国内発生例が2人報告されています。キンシャサとコンゴ中央州の両地域において
 少なくとも10例の分類できない症例があり、現地で感染した可能性について現在調査中です。
・2016年4月9日、ウガンダのマサカ県においてYF患者をWHOに報告しました。5月11日時点で3県
 (マサカ県、ルクンギリ県、カランガラ県)から51人のYF疑い例と7人の診断確定例が報告されています。
 遺伝子配列を分析した結果、これらの集団感染例はアンゴラのものと疫学的な繋がりはありませんでした。
・アンゴラとDRCにおける同ウイルスは主に主要都市に集中しています。ウガンダを含むこれら3か国に
 おいて、他の州への感染拡大や地域内の感染伝播のリスクについて深刻な懸念が残っています。また、
 特にYFの感染リスクが低いと分類されている周辺国(ナミビアやザンビア)では国民や渡航者、外国人
 労働者がYFワクチンを接種しておらず、潜在的な感染拡大のリスクも高いです。

リスク評価
・以下の理由でアンゴラにおける流行は未だに高い懸念が残っています。
・700万人以上がワクチン接種を実施したにも関わらず、ルアンダでは限局的な流行が持続しています。
・限局的な流行はルアンダを含む7つの人口の多い州で報告されています。
・新たな州や県へアウトブレイクが拡大し続けています
・近隣諸国への流行拡大の危険性が高く、既に中国、DRC、ケニアでアンゴラ由来の感染が確認されて
 います。国境地域は実質的に往来が自由であり社会活動や経済活動も活発であり、さらなる感染伝播は
 排除できません。ウイルス血症にある患者の渡航により、特に媒介蚊とYFウイルスに感受性のあるヒトが
 充分に存在する国々での地域流行を確立する危険性が高まります。
・感染症発生動向調査が不十分であるため、新たに症例が出現している中心なのか地域なのかを見分けかね
 ます。ガンビダ州のように到達するのが難しい地域にまで感染伝播が続いている疑いが強いです。
・4月に行った現地調査においてDRCは地域流行の危険性が高いという結果が出ています。利用できる
 ワクチンには限りがあること、キンシャサには大きなアンゴラ人のコミュニティがあること、アンゴラと
 DRC間の往来が脱国境化していること、媒介蚊であるヤブカが存在し活動していることを考慮すると、
 状況は特に注意して監視する必要があります。
・アンゴラとDRCにおける同ウイルスは主に主要都市に集中しています。ウガンダを含むこれら3か国に
 おいて、他の州への感染拡大や地域内の感染伝播のリスクについて深刻な懸念が残っています。また、
 特にYFの感染リスクが低いと分類されている周辺国(ナミビアやザンビア)では国民や渡航者、外国人
 労働者がYFワクチンを接種しておらず、潜在的な感染拡大のリスクも高いです。

感染への対策
・予防接種キャンペーンが最初はルアンダ州で2月の初めに、続いてベンゲラ州とウアンボ州で4月半ばに
 開始されました。(図2)
・5月10日時点で11.7万回分のワクチンがアンゴラに向けて出荷されました。
・DRCとウガンダはGAVI Alliance(ワクチンと予防接種のための世界同盟)の適応国であるため、
 これらの国にはGAVI Alliance によって予防接種キャンペーンが行われる予定です。
・コンゴ中央州やキンシャサ州ヌジリの保健ゾーンなど7つの保健ゾーンを対象として緊急予防接種
 キャンペーンを実施するために5月中旬までに220万本のワクチンおよびその付属品がDRCに到着する
 予定です。
・70万本のYFワクチンがウガンダに到着し、5月19日から予防接種キャンペーンを開始する予定です。
・ナミビアは渡航者や難民を対象としたYFワクチン45万回分のワクチン(1バイアル10回分)を要求して
 います。
・黄熱に対する国際メディアの注目度はまだ最小限に留まっています。しかしアンゴラは国内で感染制御
 対策を実施するために関係する情報を発信し公開してきました。この他にも報道では、渡航時における
 ワクチン接種の確認やこの病気の拡散防止に焦点を当ててきました。
・現在のYFのアウトブレイクに対するQ&AがWHOのウェブサイトに記載されています
 (http://www.who.int/features/qa/yellow-fever/en/)
・WHOは流行に関する質問に共同歩調で対処するために情報の発信や情報源に関して国連を通して
 リーダーシップをもって情報伝達の指示を与えました。

図1 2016年5月11日時点のアンゴラとDRCにおける黄熱の患者分布


図2 2016年5月11日時点のアンゴラにおける予防接種の実施区域


【出典】
WHO, Situation Report
-ZIKA VIRUS DISEASE, YELLOW FEVER, EBOLA VIRUS DISEASE- 12 MAY 2016
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/206312/1/yellowsitrep_12May2016_eng.pdf?ua=1