(No.111)

リベリアにおけるラッサ熱
2016年5月18日

 2016年1月1日から世界保健機関(WHO)は、リベリアでのラッサ熱の疑い例を少なくとも38人報告を
受けています。

 疑い例は6つの県から報告されています。ボング(17人、うち死亡9人)、ニンバ(14人、うち死亡9人)、
Gbarpolu(4人)、ロファ(1人)、マルギビ(1 人)、モンセラド(1人)です。
 2016年1月1日から4月3日の間に24人の疑い例から検体が採取され、検査を受けました。これらの24人の
検体のうち、7人がラッサ熱陽性であったと報告されました。
検査方法の内訳は以下の通りです;
 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法:2人
 IgM抗体の酵素結合抗体免疫測定法(ELISA):2人
 ELISAを用いたラッサ熱ウイルス抗原:2人
 7人目の検体の検査方法についての情報はわかりません

 確定診断されたラッサ熱患者全員のエボラウイルス検査は陰性でした。リベリアにはラッサ熱をPCR法で
検査できる指定研究所がないため、検体はシエラレオネのケネマに送られ現在検査中です。

公衆衛生上の取り組み
 現在までに、134人の接触者が21日間の経過観察期間を終了しました。合計17人の接触者が追加され
現在監視中です。これらの接触者は全員無症状です。
 症例管理、感染防御や制御、住民参加、健康教育を含むアウトブレイクへの適切な対応施設が、WHOと
パートナー機関の支援で国家当局により設置されました。
 
WHOのリスク評価
 ラッサ熱はリベリアでは風土病であり、ほぼ毎年国内の様々な地域で発生しています。最近の似た事例
からの経験に基づき、更なる症例の報告が予想されます。
 渡航に関連したラッサ熱の症例が過去(関空検疫所海外感染情報既報No78,No93)に時折報告されて
いますが、リベリアからまだ風土病となっていない国へ拡がるリスクは低いと考えられます。WHOは
疫学的状況を監視し最新の利用できる情報に基づいてリスク評価を管理し続けています。

WHOのアドバイス
 ラッサ熱が風土病となっている西アフリカ諸国において、毎年今頃発生する季節的な再燃を考慮すると、
関連するサーベイランスシステムを強化することが奨励されます。
 ラッサ熱疑い患者あるいは確定患者を治療している医療従事者は、患者の血液や体液および衣服やベッド
などの汚染された表面との接触を避けるといった追加の感染管理対策に取り組む必要があります。医療
従事者は、ラッサ熱患者に対して密接に接触する場合(1m以内)は、フェイスシールドあるいは医療用
マスクとゴーグルといった顔面防護具、清潔で未滅菌の長袖ガウンおよび滅菌手袋を装着すべきです。
 検査室における労働者も同様に感染の危険があるため、ラッサ熱検査のために人や動物から採取された
検体は、最大限に生物学的な封じ込めが可能である適切な施設において、熟練したスタッフにより取り
扱われるべきです。
 ラッサ熱の診断は、風土病となっている地域から帰還した発熱患者において考慮すべきです。また、
ラッサ熱を疑う患者に対応した医療従事者は、すぐに地方および国の専門家に連絡を取り、検査を手配
すべきです。
 WHOは、入手可能な最新の情報に基づいて、リベリアに対するいかなる旅行や貿易の制限も推奨して
いません。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
 Lassa Fever – Liberia
 18 May 2016
http://www.who.int/csr/don/18-may-2016-lassa-fever-liberia/en/